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おっさん、パーティに行く
パイ
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広場に到着すると、すでにそこには音楽が漂っていた。
騎士団のように統率の取れた様子で美しい旋律が奏でられ、それが生ぬるい空気に乗って耳に届く。
「盛り上がっていますね」
かなり広いスペースに簡易的な飲食店が立ち並んでいて、一つ一つ見ていくと、新鮮なフルーツやス刺激的な匂いの料理、ビールやワインなどが売られていた。
食べ物の匂いにつられて、また楽器の演奏に癒されながらしばし歩き回る。
広場の中心部には木の長い椅子が多数設置されていて、ここで購入した飲食物を楽しんだり、目を瞑って音の流れに身を任せることができるようだ。
「とりあえず何か買わないとね。シャーロットは気になるものはあった?」
「私は……お酒は飲まないので食べ物がいいですね。少々刺激が強いものの方が……」
そう言って彼女が立ち止まったのは……。
「なにこれ?」
「パイですね」
パイと言われたが、中身の色がどう見ても食べ物とは思えない。
「……この茶色いのを食べるの?」
「なんだぁおっさん! こいつを見るのは初めてかい?」
「田舎から出てきたもので、恥ずかしながら……」
屋台に立ってる男性が声をかけてきた。
彼も俺に負けず劣らずのおっさんなはずだが、とにかく勢いがある。
「うちのパイは刺激的な味付けが特徴でね! 鶏肉やら野菜やらを数種類のスパイスで味付けしてるんだよ!」
「スパイス?」
「それも知らねえのか! と言っても俺もよく知らないんだが……他の国から輸入してる香辛料だな! 俺が生まれるよりも前の時代にはこれが金と取引されてたってんだから、時代ってやつは素晴らしいな!」
数種類のスパイスとやらを使って食材に味を付けているのか。
それによって素材本来の味が消えてしまう気がするが、実際のところどうなのだろう。
「これを食べてみようか」
「そうですね。二切れお願いします」
「あいよぉ!」
おっさんが綺麗に切り分けられたパイを掬い、平たい木の皿に入れて渡してくれた。
「それじゃあお代を……」
「いえ、私が払いますよ」
「ううん。仕立て屋では情けないところを見せちゃったから、今回は俺が払うよ」
「……ありがとうございます」
ようやくケンフォードの貨幣の見た目と価値を覚えたところだ。
代金を渡し、俺たちは椅子に座ることにした。
「さて、それじゃあ食べてみるか……」
目の前のパイに神経を集中させる。
かなり攻撃的な匂いがする料理だ。
自分で料理を作るときには最低限の味付けだけで済ませるし、山を出てからそれなりに飲食の経験もしたが、だとしても衝撃的。
「カレー風味というらしいですよ。私も初めて口にしたときに驚きました」
「そ、そうだよね。食べてみるよ」
フォークで食べやすくパイを分け、恐る恐る口に運ぶ。
「――んんっ!?」
なんと表現すれば良いのかわからない。
甘さと辛さが混ざりあうだけでなく、程よい苦味が口の中に広がる。
屋台の男性が言っていた通り、複数の香辛料……味付けを組み合わせているのだろう。
だが、味は喧嘩することなく、むしろ広場の音楽のように互いを引き立て合っている。
「こんなに美味しいものがあるのか……」
正直言って毎日食べたいくらいだ。
素材本来の味は薄いかもしれないが、そんなのどうでも良くなるくらいのインパクトに心が揺らされた。
「喜んでもらえて何よりです」
「あぁ、また来よう……!」
「はい!」
ぺろりとパイを平らげ、皿を店に返しにいく。
「おうおっさん! うちのはどうだった?」
「最高でした! 絶対また来ます!」
「ファンになっちまったってわけか! おうまた来い!」
おっさんも嬉しそうにしている。
「……って、よく見りゃあお嬢ちゃん、騎士団長様じゃねぇか。……なるほどなぁ、こういうのが好みなんだな」
「なっ、どういう意味ですか!?」
最近のシャーロットはよく耳が赤くなるな。
「どういう意味も何もねぇよ! せっかくの休みだし、彼氏と刺激的な夜を過ごしてくれよなぁ!」
「かっ、かれっ……」
のぼせたように真っ赤になってしまったシャーロット。
彼女の熱さは頭部のみならず、魔力の渦になって体外に放出される。
「わ、悪かったの団長様! 熱くてかなわねぇからやめてくれ!」
「かれっ……」
それからシャーロットが落ち着きを取り戻すまでに数分の時間がかかってしまった。
騎士団のように統率の取れた様子で美しい旋律が奏でられ、それが生ぬるい空気に乗って耳に届く。
「盛り上がっていますね」
かなり広いスペースに簡易的な飲食店が立ち並んでいて、一つ一つ見ていくと、新鮮なフルーツやス刺激的な匂いの料理、ビールやワインなどが売られていた。
食べ物の匂いにつられて、また楽器の演奏に癒されながらしばし歩き回る。
広場の中心部には木の長い椅子が多数設置されていて、ここで購入した飲食物を楽しんだり、目を瞑って音の流れに身を任せることができるようだ。
「とりあえず何か買わないとね。シャーロットは気になるものはあった?」
「私は……お酒は飲まないので食べ物がいいですね。少々刺激が強いものの方が……」
そう言って彼女が立ち止まったのは……。
「なにこれ?」
「パイですね」
パイと言われたが、中身の色がどう見ても食べ物とは思えない。
「……この茶色いのを食べるの?」
「なんだぁおっさん! こいつを見るのは初めてかい?」
「田舎から出てきたもので、恥ずかしながら……」
屋台に立ってる男性が声をかけてきた。
彼も俺に負けず劣らずのおっさんなはずだが、とにかく勢いがある。
「うちのパイは刺激的な味付けが特徴でね! 鶏肉やら野菜やらを数種類のスパイスで味付けしてるんだよ!」
「スパイス?」
「それも知らねえのか! と言っても俺もよく知らないんだが……他の国から輸入してる香辛料だな! 俺が生まれるよりも前の時代にはこれが金と取引されてたってんだから、時代ってやつは素晴らしいな!」
数種類のスパイスとやらを使って食材に味を付けているのか。
それによって素材本来の味が消えてしまう気がするが、実際のところどうなのだろう。
「これを食べてみようか」
「そうですね。二切れお願いします」
「あいよぉ!」
おっさんが綺麗に切り分けられたパイを掬い、平たい木の皿に入れて渡してくれた。
「それじゃあお代を……」
「いえ、私が払いますよ」
「ううん。仕立て屋では情けないところを見せちゃったから、今回は俺が払うよ」
「……ありがとうございます」
ようやくケンフォードの貨幣の見た目と価値を覚えたところだ。
代金を渡し、俺たちは椅子に座ることにした。
「さて、それじゃあ食べてみるか……」
目の前のパイに神経を集中させる。
かなり攻撃的な匂いがする料理だ。
自分で料理を作るときには最低限の味付けだけで済ませるし、山を出てからそれなりに飲食の経験もしたが、だとしても衝撃的。
「カレー風味というらしいですよ。私も初めて口にしたときに驚きました」
「そ、そうだよね。食べてみるよ」
フォークで食べやすくパイを分け、恐る恐る口に運ぶ。
「――んんっ!?」
なんと表現すれば良いのかわからない。
甘さと辛さが混ざりあうだけでなく、程よい苦味が口の中に広がる。
屋台の男性が言っていた通り、複数の香辛料……味付けを組み合わせているのだろう。
だが、味は喧嘩することなく、むしろ広場の音楽のように互いを引き立て合っている。
「こんなに美味しいものがあるのか……」
正直言って毎日食べたいくらいだ。
素材本来の味は薄いかもしれないが、そんなのどうでも良くなるくらいのインパクトに心が揺らされた。
「喜んでもらえて何よりです」
「あぁ、また来よう……!」
「はい!」
ぺろりとパイを平らげ、皿を店に返しにいく。
「おうおっさん! うちのはどうだった?」
「最高でした! 絶対また来ます!」
「ファンになっちまったってわけか! おうまた来い!」
おっさんも嬉しそうにしている。
「……って、よく見りゃあお嬢ちゃん、騎士団長様じゃねぇか。……なるほどなぁ、こういうのが好みなんだな」
「なっ、どういう意味ですか!?」
最近のシャーロットはよく耳が赤くなるな。
「どういう意味も何もねぇよ! せっかくの休みだし、彼氏と刺激的な夜を過ごしてくれよなぁ!」
「かっ、かれっ……」
のぼせたように真っ赤になってしまったシャーロット。
彼女の熱さは頭部のみならず、魔力の渦になって体外に放出される。
「わ、悪かったの団長様! 熱くてかなわねぇからやめてくれ!」
「かれっ……」
それからシャーロットが落ち着きを取り戻すまでに数分の時間がかかってしまった。
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