【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚

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おっさん、村へ行く

取材

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「それじゃあ取材……といきたいところだが、今日はもう暗い。俺も寝たいし明日の朝にまた来てくれないか」

 そう言われてこの日はお開きになり、ジオとルーエは村長が用意した離れで夜を過ごすことになった。
 翌朝、八時をすぎた頃。
 離れのドアがなんども勢いよく揺らされる。
 ジオが寝ぼけ眼をこすりながら扉を開けると、そこには興奮した顔のエドガーが立っていた。

「遅い!」
「ま、まだ八時ですよ……?」

 狼狽えるジオなどお構いなしにエドガーは言葉を続ける。

「俺は昨日、お前たちが帰った後すぐに寝たからな。もう力に溢れているし、待ちきれなくなって迎えに来てやったんだ」
「あ、ありがとう……ございます?」
「礼には及ばないぞ。さぁ、早速お前の力を見せてくれ」
「力……ですか?」

 疑問符を浮かべているジオ。
 エドガーはやれやれと肩をすくめる。

「書の守護者という異名は伊達じゃないんだろう? だったらその強さを見せてほしいんだ。俺は実際に目で見たり経験したことを書きたくてな、だから今まで規格外の強さをもつ登場人物はいなかったんだが……期待していいんだろう?」
「もちろんだ。ジオはこの世界で並ぶものはいない最強の男だからな。お前の想像を遥かに上回る強さだ」
「ほう! それは楽しみだ! ちょうど俺が今朝のうちに近くのギルドに話を通して受注した依頼がある。早速これをこなしに行くとしようか!」

 流れるように話が進み、ジオは嫌々ながらついていくことになった。


「さて、ここらへんじゃないか?」

 フォックスデンから少し離れた山岳地帯に一行はいた。

「こんな場所での依頼って……何をするんですか?」

 不安げなジオを落ち着けるように、エドガーは背中を叩いてやる。

「なに、ホワイトウルフを10頭ほど狩るだけだ。近頃、人を襲い出したみたいでな、少し数を減らしたいんだと」
「ホワイトウルフか。Bランクの冒険者が一人で狩れるかどうかという強さらしいな」
「え、結構強くない?」

 自らの強さを自覚していないジオは依頼に向かうことに難色を示していたが、彼の実力を知るルーエと、話を聞いてその強さを感心したエドガーは構わずホワイトウルフを探し始める。

「あぁ、そうだ。これを持ってきているんだよ」

 エドガーは担いでいた布の袋から生肉を取り出して辺りに放り投げる。

「餌と血の匂いに釣られてホワイトウルフが集まってくるという算段か」
「匂い消しのポーションも持ってきているし、これを飲んで身を隠せば奴らは現れるだろうな」

 これ以上の抵抗は無駄だと諦めたのか、先ほどからルーエにアイコンタクトを送っていたジオもポーションを受け取って飲む。
 そうして待つこと二十分。
 大きな岩陰に隠れるジオたちは、複数の足音に気がついた。

「……おい、来たようだぜ」

 ジオが大岩からかすかに顔を出して確認すると、そこにはホワイトウルフの群れの姿が。
 全長は約2~3メートル程で、筋肉質な体格をしており、頭部には鋭い牙が生えていた。
 そして、ホワイトウルフという名前の通り真っ白な毛で身体が覆われているが、その毛は剣のように鋭い。
 犬のように触れるのは危険だということだ。
 ざっと見て十五匹はいる大所帯。

「そら、お前の力を見せてくれよ。俺はここで穴が開くほど見ているからさ」
「……私一人に戦えと? あの群れと?」
「そうだが……何か問題が?」

 問題は大いにあると言いたげな顔だったが、無言でこちらを見続けるエドガーに根負けしたのか、ジオは「わかりましたよ」と言って岩陰から出た。

「――――!」

 ジオが少し足音を立てただけで、ホワイトウルフの群れは一斉にその方向に反応する。 
 そして、目の横にある、夜間に獲物を捉えるために使う赤い発光体によって威嚇していた。

「……いや、怖っ……」

 十五匹のホワイトウルフの群れが、一匹残らずジオに向かって走り出した。
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