24 / 154
おっさんと3人の冒険者
ダンジョン
しおりを挟む
彼らの話を聞いていくと、3人で「ビギニング」というパーティを組んでいるそうだ。
キャスは例外で、冒険者のほとんどは数人でパーティを組んで冒険を行うものらしい。
個人的には自分でパーティ名を決めて良いというのが魅力的に感じた。
俺がつけるなら、そうだな……。
「…………oh・sun」
「よく分からんが絶対にナシ」
速攻で否定されてしまった。
太陽に驚いていると思わせつつ「おっさん」というアイデンティティが入っている良いパーティ名だと思ったんだけどなぁ。
「そのパーティにしか入れないのだとしたら、どんなに危険でも個人で冒険者やると思うぞ。誰もが」
「えぇ……」
そこまで言われるのか……。
パーティ名の反応は芳しくなかったが、俺たちの道中は至って安全だった。
途中で二体のオークと出くわしたが、3人は苦戦しながらも撃破していた。
経験は多くはないのだろうが、命を落とすような危険は犯さない戦い方に好感を覚える。
さらに平原を進んでいくと、唐突に地下へと続く坂のような穴が目に入る。
「ここが今回の目的地、平原のダンジョンです」
「ダンジョン?」
初めて聞く単語だったのでおうむ返ししてしまう。
「説明してやろう。ダンジョンとは、ダンジョンコア……? とかいうアイテムが周囲の地形を巻き込んで生成する地下迷宮なんだよ」
「何それ怖い」
地下の迷宮とか、一歩間違えたら戻って来れなくなりそうだ。
「確かに危険極まりないダンジョンも存在するが、おそらくここは初級も初級のものだろう。ほとんど魔力を感じないからな」
「そうです。ここは駆け出し冒険者が経験を積むために訪れることが推奨されている、比較的安全なダンジョンです」
ビギンがハキハキと補足してくれる。
「今回はこのダンジョンの最下層、第五層へ到達する事が目的になります!」
「五層まで行くのはどのくらいかかるんですか? お恥ずかしながら私はダンジョンに入った事がなくて」
「これまでにも何度か探索した事があるのですが、3層までは到達できました」
半分ほど探索が済んでいると考えて良いようだ。
「私もここまで低レベルなダンジョンには入った事がないぞ。おい、一層を攻略するのに大体どのくらいの時間をかけている?」
「えっと、休憩を抜いて大体5時間くらいです!」
「遅い! この程度10分で十分だろう! ジオもそう思……使い物にならんな!」
10分で十分……こんなにサクサクとジョークが出てくるなんて、やはりルーエには才能があるようだ。
「……過労死……死ぬ……」
ネンテンが何か言っているが、声が小さすぎて聞こえない。
「と、とりあえずいきましょうか。三層までの地図はあるので、まずはそこまで」
ビギニングの面々に案内されてダンジョンへと突入した。
地下へと続く穴という見た目に威圧感を覚えたが、中は思ったよりも明るかった。
というか、一定間隔に松明が配置されていて、かなり人の手が入っているのがわかる。
「あぁ、僕たちみたいな右も左も分からない冒険者が命を落とさないよう、周辺の街や国が力を入れて整備してくれたんです」
きょろきょろ見回している俺に、ビギンが親切にも教えてくれた。
魔物を根絶するのではなく、若者の成長の場に利用する。
なんとも自分勝手な理論と言えなくもないが、合理的だ。
「三層までは地図があるって言ってましたけど、地図はどこかで売られているんですか?」
「いえ、ダンジョンの地図は貴重なもので、販売してはいけないことになっているんです。だから冒険者は自らの足でダンジョンを探索して地図を作るんです」
「い、一応先輩がお下がりをくれることもあります……そんな幸運そうそうないですけど……死ななくて済む可能性が……上がります」
山での最初の一年を思い出す。
自分が今どこにいるのかわからず、空腹で倒れそうになりながら彷徨った記憶がある。
自分の居場所を把握するというのは山でもダンジョンでも重要なことなのだ。
「地図を記すのは誰が?」
「それは……僕です……。死にたくないから頑張って描きます……」
過剰な心配が正確な地図を記すのに一役買っているのだろう。
適材適所というやつだ。
「私は索敵魔術を使ったりしています。魔物が角で待ち伏せしている可能性がありますから」
「そうやって安全な冒険を心がけているわけですね」
ルーエのように、のちに復活できるわけでもなく、人生は一度きりだ。
冒険者は危険に満ちた職業ではあるが、それは命を繋ぐためにできることを全てやった上で踏み込むものなのだと感心する。
キャスは例外で、冒険者のほとんどは数人でパーティを組んで冒険を行うものらしい。
個人的には自分でパーティ名を決めて良いというのが魅力的に感じた。
俺がつけるなら、そうだな……。
「…………oh・sun」
「よく分からんが絶対にナシ」
速攻で否定されてしまった。
太陽に驚いていると思わせつつ「おっさん」というアイデンティティが入っている良いパーティ名だと思ったんだけどなぁ。
「そのパーティにしか入れないのだとしたら、どんなに危険でも個人で冒険者やると思うぞ。誰もが」
「えぇ……」
そこまで言われるのか……。
パーティ名の反応は芳しくなかったが、俺たちの道中は至って安全だった。
途中で二体のオークと出くわしたが、3人は苦戦しながらも撃破していた。
経験は多くはないのだろうが、命を落とすような危険は犯さない戦い方に好感を覚える。
さらに平原を進んでいくと、唐突に地下へと続く坂のような穴が目に入る。
「ここが今回の目的地、平原のダンジョンです」
「ダンジョン?」
初めて聞く単語だったのでおうむ返ししてしまう。
「説明してやろう。ダンジョンとは、ダンジョンコア……? とかいうアイテムが周囲の地形を巻き込んで生成する地下迷宮なんだよ」
「何それ怖い」
地下の迷宮とか、一歩間違えたら戻って来れなくなりそうだ。
「確かに危険極まりないダンジョンも存在するが、おそらくここは初級も初級のものだろう。ほとんど魔力を感じないからな」
「そうです。ここは駆け出し冒険者が経験を積むために訪れることが推奨されている、比較的安全なダンジョンです」
ビギンがハキハキと補足してくれる。
「今回はこのダンジョンの最下層、第五層へ到達する事が目的になります!」
「五層まで行くのはどのくらいかかるんですか? お恥ずかしながら私はダンジョンに入った事がなくて」
「これまでにも何度か探索した事があるのですが、3層までは到達できました」
半分ほど探索が済んでいると考えて良いようだ。
「私もここまで低レベルなダンジョンには入った事がないぞ。おい、一層を攻略するのに大体どのくらいの時間をかけている?」
「えっと、休憩を抜いて大体5時間くらいです!」
「遅い! この程度10分で十分だろう! ジオもそう思……使い物にならんな!」
10分で十分……こんなにサクサクとジョークが出てくるなんて、やはりルーエには才能があるようだ。
「……過労死……死ぬ……」
ネンテンが何か言っているが、声が小さすぎて聞こえない。
「と、とりあえずいきましょうか。三層までの地図はあるので、まずはそこまで」
ビギニングの面々に案内されてダンジョンへと突入した。
地下へと続く穴という見た目に威圧感を覚えたが、中は思ったよりも明るかった。
というか、一定間隔に松明が配置されていて、かなり人の手が入っているのがわかる。
「あぁ、僕たちみたいな右も左も分からない冒険者が命を落とさないよう、周辺の街や国が力を入れて整備してくれたんです」
きょろきょろ見回している俺に、ビギンが親切にも教えてくれた。
魔物を根絶するのではなく、若者の成長の場に利用する。
なんとも自分勝手な理論と言えなくもないが、合理的だ。
「三層までは地図があるって言ってましたけど、地図はどこかで売られているんですか?」
「いえ、ダンジョンの地図は貴重なもので、販売してはいけないことになっているんです。だから冒険者は自らの足でダンジョンを探索して地図を作るんです」
「い、一応先輩がお下がりをくれることもあります……そんな幸運そうそうないですけど……死ななくて済む可能性が……上がります」
山での最初の一年を思い出す。
自分が今どこにいるのかわからず、空腹で倒れそうになりながら彷徨った記憶がある。
自分の居場所を把握するというのは山でもダンジョンでも重要なことなのだ。
「地図を記すのは誰が?」
「それは……僕です……。死にたくないから頑張って描きます……」
過剰な心配が正確な地図を記すのに一役買っているのだろう。
適材適所というやつだ。
「私は索敵魔術を使ったりしています。魔物が角で待ち伏せしている可能性がありますから」
「そうやって安全な冒険を心がけているわけですね」
ルーエのように、のちに復活できるわけでもなく、人生は一度きりだ。
冒険者は危険に満ちた職業ではあるが、それは命を繋ぐためにできることを全てやった上で踏み込むものなのだと感心する。
34
お気に入りに追加
966
あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる