【完結】君が消えた仮想世界と僕が願った並行世界

１３話 仮想世界の並行世界へ

石ころ

――界人が飛行機に乗らず交通事故にも遭わなかった並行世界――


　築４０年の木造アパート。間取りは二人で暮らすには少し手狭だが、一人で暮らすには広めの１ＬＤＫといったところである。家具も少ないそんな殺風景な部屋のリビングの傍らで遥は突然泣き出した。玄関のドアを力強く開け放ち、鍵もかけずに裸足のまま外へと飛び出す。アパートの前の通りを走り抜け、迷うことなく近所の小川へと下りる。そして、無数に転がる河原の石ころの中から、一つの石を探し当てた。

「界人、お帰りなさい」

――そうか、石ころになっても私は終わらないんだな……

「そうよ、朽ち果てることがないんだから、ある意味、私より長生きかもね」

　遥はその石ころを生涯その身から手離すことはなかった。