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6話 主観と俯瞰(Aパート)
主観 ´
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「信人、遅刻するわよ――」
心配そうな母親の声で目を覚ます信人。寝起きはいつも良い方なのだが、今日は、寝不足のせいか頭痛が酷く、ベッドから抜け出せないでいた。
――昨日、僕、肝試しで倒れたんだよな……
信人は自分の記憶に自信が持てなくなっていた。能力を使って他人から盗んだ記憶とリアルの記憶との区別が曖昧になってきている。これから登校して、もし李依と神坂さんが昨日のことを忘れていたのなら、肝試しは全て夢だったのだと納得できてしまうくらいに。
「信人、朝ごはん食べる時間なくなるわよ――」
「ママ、ごめん、食欲ないから、今日はいらない」
めまいで視界が暗転と明転を繰り返すほどに体調は芳しくなかったが、無理やり制服に着替え、ふらつきながらも、家を出た。
「信人、大丈夫? 辛かったら早退するのよ! ママ、迎えに行くから」
「はい、はい、ママ、大丈夫だから。いってきま――す」
「昨日のことなんだけど、すみれ、あなた何かした?」
能力解除によるクラスメート達の感情過剰補正に振り回された怒涛の一日を終え、ようやく李依がすみれに質問をぶつけた。
「実は、どうしても李依と肝試しがしたくて、信人君と交換を使ったんだけど……うまくいかなくって……」
昨日のことが夢ではなかったのだと胸を撫で下ろす信人。しかし、すみれの回答には納得がいかない。
「僕はアンフェアが使えなくなったんだけど……」
「アンフェア?」
何のことだか全く分からないといった表情を浮かべ、一瞬、沈黙するすみれ。
「あ――アンフェアね、あの、心の声が聞こえるっていうあれね」
「あの能力名がアンフェアだって話、すみれの前でしたっけ?」
李依のツッコミに明らかに動揺するすみれ。
「すみれ、あなた、まさか?」
「やっぱり、そうか。昨日の交換は失敗したんじゃなくて、能力が入れ替わってたってことか」
「入れ替わってる!? ってことは、信人は交換が使えるってこと!?」
思わぬ展開に興味津々な李依。
「これは便利だね」
気が付くと李依の視界には李依の姿があった。
「てか、もう使ってるし!!」
「あっ、今、これはエッチなことに使えるって思ったでしょ?」
観念したのか、能力をひけらかす、すみれ。
「はっ!?」
「だって、信人君の心の声、聞こえちゃいましたけど……」
「信人! あなたすみれとは違うんだから、分かってる!? あんたがそれやったら犯罪だからね!!」
「ちょっと待った!!」
何の根拠もないのだが不意に身の危険を感じ、自然と声を上げる信人。しかし、どちらの方向から危険が迫っているのか分からない。
「そうだね、ほんと、万死に値するね」
すみれは徐に護身用のナイフを取り出し、信人の心臓に突き立てた。
心配そうな母親の声で目を覚ます信人。寝起きはいつも良い方なのだが、今日は、寝不足のせいか頭痛が酷く、ベッドから抜け出せないでいた。
――昨日、僕、肝試しで倒れたんだよな……
信人は自分の記憶に自信が持てなくなっていた。能力を使って他人から盗んだ記憶とリアルの記憶との区別が曖昧になってきている。これから登校して、もし李依と神坂さんが昨日のことを忘れていたのなら、肝試しは全て夢だったのだと納得できてしまうくらいに。
「信人、朝ごはん食べる時間なくなるわよ――」
「ママ、ごめん、食欲ないから、今日はいらない」
めまいで視界が暗転と明転を繰り返すほどに体調は芳しくなかったが、無理やり制服に着替え、ふらつきながらも、家を出た。
「信人、大丈夫? 辛かったら早退するのよ! ママ、迎えに行くから」
「はい、はい、ママ、大丈夫だから。いってきま――す」
「昨日のことなんだけど、すみれ、あなた何かした?」
能力解除によるクラスメート達の感情過剰補正に振り回された怒涛の一日を終え、ようやく李依がすみれに質問をぶつけた。
「実は、どうしても李依と肝試しがしたくて、信人君と交換を使ったんだけど……うまくいかなくって……」
昨日のことが夢ではなかったのだと胸を撫で下ろす信人。しかし、すみれの回答には納得がいかない。
「僕はアンフェアが使えなくなったんだけど……」
「アンフェア?」
何のことだか全く分からないといった表情を浮かべ、一瞬、沈黙するすみれ。
「あ――アンフェアね、あの、心の声が聞こえるっていうあれね」
「あの能力名がアンフェアだって話、すみれの前でしたっけ?」
李依のツッコミに明らかに動揺するすみれ。
「すみれ、あなた、まさか?」
「やっぱり、そうか。昨日の交換は失敗したんじゃなくて、能力が入れ替わってたってことか」
「入れ替わってる!? ってことは、信人は交換が使えるってこと!?」
思わぬ展開に興味津々な李依。
「これは便利だね」
気が付くと李依の視界には李依の姿があった。
「てか、もう使ってるし!!」
「あっ、今、これはエッチなことに使えるって思ったでしょ?」
観念したのか、能力をひけらかす、すみれ。
「はっ!?」
「だって、信人君の心の声、聞こえちゃいましたけど……」
「信人! あなたすみれとは違うんだから、分かってる!? あんたがそれやったら犯罪だからね!!」
「ちょっと待った!!」
何の根拠もないのだが不意に身の危険を感じ、自然と声を上げる信人。しかし、どちらの方向から危険が迫っているのか分からない。
「そうだね、ほんと、万死に値するね」
すみれは徐に護身用のナイフを取り出し、信人の心臓に突き立てた。
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