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4話 仮初めの記憶(Bパート)
ルート 3
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「は――い! みんな掴んだ? はずれを引いた人はここで留守番だからね!」
信人ママが差し出したくじを一斉に引き抜く4人。そして、ペアが決定する。
「まずは高梨さんと信人のペアから出発ね。5分遅れて私と神坂さんも出発するから」
完全に信人ママの仕切りで会が進行していた。
「ということだから、みゆきは留守番よろしくね――」
「私は遥に運転させないために来ただけだから別にそれでいいわ」
信人ママと李依ママは微妙な空気で淡々と会話を消化する。
「結局、私は李依とはペアになれないのね」
不満げな表情を隠しきれていないすみれ。
――結局?
李依も信人もその言葉に引っかかった。
「それから、これを忘れないでね」
ここから先にはもう外灯はないようだ。信人ママはリュックから懐中電灯を取り出し、信人に手渡した。
「それじゃ、高梨さんと信人から出発!!」
李依と信人は早く二人になりたかった。信人ママが出発の合図を出すや否や、そそくさとハイキングコースへと消えていった。
「すみれ、何だか、様子がおかしかったわよね?」
「そう思って、一応、聞いてみたんだけど……」
「あなた、また使ったの!? それで、どうだった?」
信人が能力を使うことには否定的なくせに、回答を急かす李依。
――まあ、李依のお母さんが留守番なら今度は大丈夫でしょ……
「どういう意味よ?」
なぜか、信人に軽くキレ気味な李依。
「さぁ――」
受け流す信人。
「でも、私も変な感覚なのよね。デジャブというか……サイコロをもう一度振り直しているような……」
「サイコロじゃなくて、くじ引きでしょ?」
「たとえ話よ!」
李依のことを茶化してはみたものの、その実、信人も李依と同じような違和感に襲われていた。ずっと昔にもこんなことがあったような気がしてならなかった。
「そういえば、あなた前におかしなこと言ってたわよね」
「んっ?」
「君のお父さんが飛行機事故に見舞われたのは君のせいじゃないって」
不思議と急な話題転換だとは思わなかった。
「そんなこと言ったけ?」
「でも、私のお父さんは交通事故で亡くなったのよ。確かにお父さんが乗るはずだった飛行機は事故で墜落した。テレビのニュースで絶望したことを覚えているわ。けど、その飛行機にはなぜか乗らずに、お父さんは交通事故で亡くなったのよ。絶望、安堵、絶望、お母さんと私は、その日神様を呪ったわ」
沈黙する信人。
「なんであんなこと言ったの?」
「なんでって……そりゃ――、君の心の声で、君の記憶を辿っただけさ」
信人は頭で考えずに即答した。
「だからそれが違うって言ってるのよ!」
「あれ? あの時、僕、飛行機事故って言ったっけ?」
記憶が混濁しているようである。
「言ったわよ!」
「じゃあ、この記憶は何だ!? 誰の記憶だ!?」
僕には昏睡状態よりも以前の記憶が全く存在していなかった。世界5分前仮説ですら偽の記憶を植えつけられた状態で始まるというのに。初期装備ゼロからのスタートである。それは、人の心の声から寄せ集めた仮初めの記憶。後付けの記憶のはずだった。誰がこんな記憶を僕に植え付けた。それとも、この記憶こそが世界5分前仮説が僕に用意した記憶だとでもいうのだろうか。
信人ママが差し出したくじを一斉に引き抜く4人。そして、ペアが決定する。
「まずは高梨さんと信人のペアから出発ね。5分遅れて私と神坂さんも出発するから」
完全に信人ママの仕切りで会が進行していた。
「ということだから、みゆきは留守番よろしくね――」
「私は遥に運転させないために来ただけだから別にそれでいいわ」
信人ママと李依ママは微妙な空気で淡々と会話を消化する。
「結局、私は李依とはペアになれないのね」
不満げな表情を隠しきれていないすみれ。
――結局?
李依も信人もその言葉に引っかかった。
「それから、これを忘れないでね」
ここから先にはもう外灯はないようだ。信人ママはリュックから懐中電灯を取り出し、信人に手渡した。
「それじゃ、高梨さんと信人から出発!!」
李依と信人は早く二人になりたかった。信人ママが出発の合図を出すや否や、そそくさとハイキングコースへと消えていった。
「すみれ、何だか、様子がおかしかったわよね?」
「そう思って、一応、聞いてみたんだけど……」
「あなた、また使ったの!? それで、どうだった?」
信人が能力を使うことには否定的なくせに、回答を急かす李依。
――まあ、李依のお母さんが留守番なら今度は大丈夫でしょ……
「どういう意味よ?」
なぜか、信人に軽くキレ気味な李依。
「さぁ――」
受け流す信人。
「でも、私も変な感覚なのよね。デジャブというか……サイコロをもう一度振り直しているような……」
「サイコロじゃなくて、くじ引きでしょ?」
「たとえ話よ!」
李依のことを茶化してはみたものの、その実、信人も李依と同じような違和感に襲われていた。ずっと昔にもこんなことがあったような気がしてならなかった。
「そういえば、あなた前におかしなこと言ってたわよね」
「んっ?」
「君のお父さんが飛行機事故に見舞われたのは君のせいじゃないって」
不思議と急な話題転換だとは思わなかった。
「そんなこと言ったけ?」
「でも、私のお父さんは交通事故で亡くなったのよ。確かにお父さんが乗るはずだった飛行機は事故で墜落した。テレビのニュースで絶望したことを覚えているわ。けど、その飛行機にはなぜか乗らずに、お父さんは交通事故で亡くなったのよ。絶望、安堵、絶望、お母さんと私は、その日神様を呪ったわ」
沈黙する信人。
「なんであんなこと言ったの?」
「なんでって……そりゃ――、君の心の声で、君の記憶を辿っただけさ」
信人は頭で考えずに即答した。
「だからそれが違うって言ってるのよ!」
「あれ? あの時、僕、飛行機事故って言ったっけ?」
記憶が混濁しているようである。
「言ったわよ!」
「じゃあ、この記憶は何だ!? 誰の記憶だ!?」
僕には昏睡状態よりも以前の記憶が全く存在していなかった。世界5分前仮説ですら偽の記憶を植えつけられた状態で始まるというのに。初期装備ゼロからのスタートである。それは、人の心の声から寄せ集めた仮初めの記憶。後付けの記憶のはずだった。誰がこんな記憶を僕に植え付けた。それとも、この記憶こそが世界5分前仮説が僕に用意した記憶だとでもいうのだろうか。
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