3 / 14
3 出資者アーロン
しおりを挟む
「レーオーくん! あっそびっましょっ」
「アーロン……久しぶり……」
旧知の仲のアーロン。口の利き方からしてわかるこの軽薄な男はうちの娼館の出資者だ。こいつは元平民だった。今は違う。一代で事業を起こして成功しやがった素晴らしい男だ。反吐が出る。
「うお、どうしたの。いつもそうだけど、今日はいつにも増して色っぽいじゃん」
「…その話はあとで。おーい、ちょっと出てくるから店番よろしくねー」
はーい、と言う仲間の声を聞いて上着を羽織った。アーロンが肩に腕を回してくる。いつもなら手の甲をつねったり振りほどいているところだが、今日はそれどころじゃない。リカルドがやった何かのせいで、身体が熱くて仕方ないのだ。
行くところはいつも似たり寄ったり。うちの内装の質より上をゆく、クラシカルかつ煌びやかな高級宿泊施設。高いアーチ状の天井には燻し金の金具と白熱球を材料に、大きな月と周りに散らばる星を模した芸術作品。それが見て驚けとばかりに堂々と飾られている。うわあ。今日も凄いなあ。
月に一度はこういうところに連れて行かれる。そして美味しい食事とお酒を頂き、部屋で美味しく頂かれるのだ。
──────
「えっ…!? レオ、どうした、マジで? 今日なんかあったのか? あっ…!! おいっ…!!」
「はぁ、…ん、…ん、はぁっ、んっ…」
「ああダメだ、もたない、お前ほんとっ…はぁ、魔性だよ、…畜生、何がどうしてこうなったんだよ!」
「それは後でって言った、アーロン早く、早く挿れて、ねぇ早く、あ!!んん~~~~!!」
「おま、ずぶ濡れじゃねえか、キッツいな、吸い付いてくる、なんでこんな…!! マジかよ…!!」
もうダメだった。待ち切れなかった。廊下に響くかも、と考える理性はどこかに消えた。ガクガクと揺らされ突かれまくり、性欲を発散させてもらいながら、あいつあの後どうしたんだろうと頭の片隅で考えた。
ひとりで処理したのか。それとも誰かを誘ったか。あの容姿であの面白い経歴を持つ新人。無償でも誰かしら相手をするだろう。ああ背中が痛い。でもとにかく気持ちいい。
「アーロン、そこ気持ちいい、もっと突いて、おねがい、もっとして、もっと、んっ……!!」
「……っ、はぁ、お前も、もっと名前呼んでくれよ、レオ、可愛いよお前、愛してる、なあ結婚してくれよ、レオ!」
「あ、またイク、イクっ…………!!、はっ、アーロン悪いな、僕は結婚しないっ…!! あっ!! やだ、あっ!!」
「てめぇ…!! ふざけたこと、言いやがって、抱くのやめるぞこの野郎、コレが欲しいくせして、ムカつくな……!!」
うつ伏せにひっくり返され腰を持たれてまた貫かれた後、両手を後ろに引っ張られた。パンパンと打ちつけられ何度もしつこく奥まで抉られ、目の前に星がちらついた。ここまで乱れたのは何年ぶりかわからない。
それにしても危なかった。ノリで承諾するところだった。アーロンはいつも高ぶると、結婚しようだのなんだのと言ってくる。付き合ってたときはそんなこと、一言も言わなかったじゃないか。野心家らしくやりたい放題やってきて、浮気なんか一度や二度ではなかった。馬鹿だなあ、もう遅いって。
「お前はよー。娼館の主だろうが。もうちょっとサービスしろよな」
「したじゃないか。即尺に即入れ。良かっただろ」
「まあ正直最高でしたよ。それは認める。でも求婚を毎回断られるとこっちもやるせないんだよー」
「だって間違ってオッケーして本気にされると困るもん。早く可愛い奥さん見つけて子供産んでもらえよ」
でかい声で『お前よか可愛い奴なんていねーよー!』と叫ぶ浮気の前科複数犯をほっといて目を閉じた。終わったらすぐ戻るつもりだったがどうせ部屋は取ってある。こいつは忙しいから朝はさっさと出て行くし、のんびり朝食を食べて帰ろう。そう思って意識を手放した。愛していようがなかろうが、運動して入浴したあとの人肌は心地良い。
──────
「…おかえりなさいませ」
「ああ、おはようリカルドくん。昨日はちゃんと眠れた?」
店に戻ったらリカルドが掃除をしていた。この子も従業員といえど、男の子の方はこういう仕事は回されないはずなんだけど。何かやらかして誰かに指示でもされたのだろうか、やる気のない様子で適当に箒を掃いている。
「どした。なんかあった?」
「別に何もな…ないです。昨日はどこに行かれてたんですか」
「うちの出資者のお誘いでね。ちょっとお出かけ」
「…ちょっとで一泊するんですか」
扉を開けてくれたと思ったら、一緒についてきてしまった。掃除はもういいのかい。
「レオさん。…そいつと寝たんですか。男の匂いが混ざりまくってます」
「何だよもう、さっきから。朝は機嫌悪い派なの? 匂いって何なの、お風呂入ってきたのに」
──あ、しまった。もう言っちゃったようなもんだ。店主が好き勝手遊んでるなんて思われてしまうのはまずい。士気に関わる。
「君が思ってるようなもんじゃないよ。店主直々の出張サービスだよ。この店で一番お高いのは僕だから、あはは」
「じゃあお金払えばシてもらえるんですか」
「出資者になってくれたらね。できる?」
僕はリカルドの目の前で手を広げ、一、十、と指を折っていった。折るたびに可愛い顔が曇ってゆく。
記憶を失う前の君もアーロンと同じ野心家だったのかな。ちょっとでも欲しいと思ったものにはすぐ手を出す男だったのか。それとも失った後、世話になった人がそういう性格だったのか。
昨日の情事のだるさと、『慕う』を凄い早さで通り越し、あっという間に執着に変えてきた男の華のある顔を見て、思わず少しため息が出た。
────────────────────
私はお嬢さんより可愛い人はいないと思っておりますよ?
こっち見なくていいから書くのに集中せい、と思われたお嬢さんはお気に入り登録お願いしまーす!
「アーロン……久しぶり……」
旧知の仲のアーロン。口の利き方からしてわかるこの軽薄な男はうちの娼館の出資者だ。こいつは元平民だった。今は違う。一代で事業を起こして成功しやがった素晴らしい男だ。反吐が出る。
「うお、どうしたの。いつもそうだけど、今日はいつにも増して色っぽいじゃん」
「…その話はあとで。おーい、ちょっと出てくるから店番よろしくねー」
はーい、と言う仲間の声を聞いて上着を羽織った。アーロンが肩に腕を回してくる。いつもなら手の甲をつねったり振りほどいているところだが、今日はそれどころじゃない。リカルドがやった何かのせいで、身体が熱くて仕方ないのだ。
行くところはいつも似たり寄ったり。うちの内装の質より上をゆく、クラシカルかつ煌びやかな高級宿泊施設。高いアーチ状の天井には燻し金の金具と白熱球を材料に、大きな月と周りに散らばる星を模した芸術作品。それが見て驚けとばかりに堂々と飾られている。うわあ。今日も凄いなあ。
月に一度はこういうところに連れて行かれる。そして美味しい食事とお酒を頂き、部屋で美味しく頂かれるのだ。
──────
「えっ…!? レオ、どうした、マジで? 今日なんかあったのか? あっ…!! おいっ…!!」
「はぁ、…ん、…ん、はぁっ、んっ…」
「ああダメだ、もたない、お前ほんとっ…はぁ、魔性だよ、…畜生、何がどうしてこうなったんだよ!」
「それは後でって言った、アーロン早く、早く挿れて、ねぇ早く、あ!!んん~~~~!!」
「おま、ずぶ濡れじゃねえか、キッツいな、吸い付いてくる、なんでこんな…!! マジかよ…!!」
もうダメだった。待ち切れなかった。廊下に響くかも、と考える理性はどこかに消えた。ガクガクと揺らされ突かれまくり、性欲を発散させてもらいながら、あいつあの後どうしたんだろうと頭の片隅で考えた。
ひとりで処理したのか。それとも誰かを誘ったか。あの容姿であの面白い経歴を持つ新人。無償でも誰かしら相手をするだろう。ああ背中が痛い。でもとにかく気持ちいい。
「アーロン、そこ気持ちいい、もっと突いて、おねがい、もっとして、もっと、んっ……!!」
「……っ、はぁ、お前も、もっと名前呼んでくれよ、レオ、可愛いよお前、愛してる、なあ結婚してくれよ、レオ!」
「あ、またイク、イクっ…………!!、はっ、アーロン悪いな、僕は結婚しないっ…!! あっ!! やだ、あっ!!」
「てめぇ…!! ふざけたこと、言いやがって、抱くのやめるぞこの野郎、コレが欲しいくせして、ムカつくな……!!」
うつ伏せにひっくり返され腰を持たれてまた貫かれた後、両手を後ろに引っ張られた。パンパンと打ちつけられ何度もしつこく奥まで抉られ、目の前に星がちらついた。ここまで乱れたのは何年ぶりかわからない。
それにしても危なかった。ノリで承諾するところだった。アーロンはいつも高ぶると、結婚しようだのなんだのと言ってくる。付き合ってたときはそんなこと、一言も言わなかったじゃないか。野心家らしくやりたい放題やってきて、浮気なんか一度や二度ではなかった。馬鹿だなあ、もう遅いって。
「お前はよー。娼館の主だろうが。もうちょっとサービスしろよな」
「したじゃないか。即尺に即入れ。良かっただろ」
「まあ正直最高でしたよ。それは認める。でも求婚を毎回断られるとこっちもやるせないんだよー」
「だって間違ってオッケーして本気にされると困るもん。早く可愛い奥さん見つけて子供産んでもらえよ」
でかい声で『お前よか可愛い奴なんていねーよー!』と叫ぶ浮気の前科複数犯をほっといて目を閉じた。終わったらすぐ戻るつもりだったがどうせ部屋は取ってある。こいつは忙しいから朝はさっさと出て行くし、のんびり朝食を食べて帰ろう。そう思って意識を手放した。愛していようがなかろうが、運動して入浴したあとの人肌は心地良い。
──────
「…おかえりなさいませ」
「ああ、おはようリカルドくん。昨日はちゃんと眠れた?」
店に戻ったらリカルドが掃除をしていた。この子も従業員といえど、男の子の方はこういう仕事は回されないはずなんだけど。何かやらかして誰かに指示でもされたのだろうか、やる気のない様子で適当に箒を掃いている。
「どした。なんかあった?」
「別に何もな…ないです。昨日はどこに行かれてたんですか」
「うちの出資者のお誘いでね。ちょっとお出かけ」
「…ちょっとで一泊するんですか」
扉を開けてくれたと思ったら、一緒についてきてしまった。掃除はもういいのかい。
「レオさん。…そいつと寝たんですか。男の匂いが混ざりまくってます」
「何だよもう、さっきから。朝は機嫌悪い派なの? 匂いって何なの、お風呂入ってきたのに」
──あ、しまった。もう言っちゃったようなもんだ。店主が好き勝手遊んでるなんて思われてしまうのはまずい。士気に関わる。
「君が思ってるようなもんじゃないよ。店主直々の出張サービスだよ。この店で一番お高いのは僕だから、あはは」
「じゃあお金払えばシてもらえるんですか」
「出資者になってくれたらね。できる?」
僕はリカルドの目の前で手を広げ、一、十、と指を折っていった。折るたびに可愛い顔が曇ってゆく。
記憶を失う前の君もアーロンと同じ野心家だったのかな。ちょっとでも欲しいと思ったものにはすぐ手を出す男だったのか。それとも失った後、世話になった人がそういう性格だったのか。
昨日の情事のだるさと、『慕う』を凄い早さで通り越し、あっという間に執着に変えてきた男の華のある顔を見て、思わず少しため息が出た。
────────────────────
私はお嬢さんより可愛い人はいないと思っておりますよ?
こっち見なくていいから書くのに集中せい、と思われたお嬢さんはお気に入り登録お願いしまーす!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
253
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる