アオノコイ ~ゲイおじさんのネット恋愛~

Kotetsu Saita

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12.幸せのカタチ

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ぼくは日々の生活の中で、うれしいこと、悲しいこと、
素敵な景色に出会えた刹那せつな
ユイ~~~
と心の中で思う。

昔はそれを互いに伝えていた。
写真のやりとりもあった。こんな景色だったんだよ、て。

ぼくたちはそうやって日々のかけらを共有し、
実際に触れ合うこともなく、
代わりに書き込んだ文字で心の触れあいをしていた。

これがぼくたちの幸せのカタチ。


 
今、もうぼくたちはネット上ですらつながっていないけれど、

ぼくは気が向いたときにユイのことを妄想する。



 疲れてベッドに横たわれば、ユイがぼくを呼び寄せる。

  -アオ、おいで?

 ぼくは喜んでベッドに座ってるユイの元へ行く。

 ユイはぼくの髪や身体を撫でる。


ぼくはそんなことを妄想しながら眠りにつく。


それがぼくの今の幸せのカタチ。




そう。
ぼくが入院したのをきっかけに、ユイと連絡が途絶えた。退院してからも長い間、ぼくはただ日々を生きるということに精一杯でユイのことなんか思い出しもしなかった。
それで、回復していき、日々妄想する余裕が生まれると、

あ、ユイ

と思うのだ。

もうその頃には、何年も経っていたのだけれど。


ぼくは大事な宝物をしまっているポケットに手をつっこむように、ユイを再び呼び出すようになった。
ただしもう、ぼくの心の中だけで。

もう、今これからユイに連絡を取ることはきっとない。
言葉や画像という実体のユイが不要になった訳じゃない。
寂しくない訳じゃない。
あの頃からもう何年もが過ぎ、お互いもう40をとうに過ぎている。
ユイはどんなおじさんになっただろう?
今でもぼくを思い出すことはある?
仕事中に、食事中に、晩酌中に、布団の中で、あの公園を散歩するときに。



ねぇ、ユイ

今の季節だとくしゃみが出るんでしょう?

そんな風にユイのことを思う日もたまにはある。


ユイ、ねぇ、ユイ

今夜もぼくは彼を呼ぶ。心の中でそっと。

これがぼくの幸せのカタチ。


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