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2.掲示板って
しおりを挟むぼくが小説を投稿していた掲示板は、今はもうない。ブログやSNSがなかった当時、交流も含め、何かを投稿するのに電子掲示板が用いられていた。
ぼくが利用していた掲示板には、二次小説のカテゴリーがあった。
その中に男同士(BL = Boys Love)を扱うものがあり、
それは、いわゆる“腐女子”だとか“やおい”とくくられる女性のための板と、
ぼくたち、ゲイによる板は徹底的に棲み分けされていた。
同じ対象を扱っていたりもしたけど。
ぼくが投稿していたのはゲイ板で、
そこに自分でスレッドを立ち上げ、小説を投稿する。
そして、一部の読んでくれたひとがコメントを残す。
ここで一応、掲示板という形態における小説サイトの構造を説明しておこうと思う。
いわゆる有名どころの掲示板を思い浮かべてもらうと想像しやすい。
二次小説のカテゴリーの中に、ゲイ板、やおい板があり、
そこにそれぞれ、わかりやすいよう、取り扱っているキャラクターの名をつけてスレッドが立てられる。
そのスレッドに書き手は小説を投稿していくのだが、
投稿番号が振られるコメントに収まる文字数は限られているので、
ひとつのコメント欄に、ひとつの、もしくは複数の段落からなるひとまとまりの文章を投稿(書き込みという)していく。
そうやってひとつの作品が複数のコメント欄に分けられる。また、小説を一度に完結まで投稿することも可能だが、
大抵、その日の更新、というように、できた分ごとに投稿するのが一般的だ。
そうやって、ひとつの作品の投稿が日をまたいで行われるため、
読み手は、ひとつの作品が完結するのを待たずして、つど、コメントを投稿することができる。
つまり、ひとつのスレッド内に、小説とコメントが同列に存在することになる。
なんとなく、想像できただろうか?
こうやって板という形で所属が別れているのだが、興味深いことに、
やおい板という、(自称)女性集団と、ぼくらのいたゲイ板という、(自称)ゲイ集団では、コメントにおいて大きな違いがあった。
概してやおい板は書き手に送るコメント数(=人数)が多く、コメント文自体も長い。文体も特徴的。
例えばこんな:
〇〇様、初カキコ(カキコ:書き込みすること)です!
書き手様の素敵な発想にしびれて思わず飛び込んでしまいました!
あまりの天才っぷりによだれを垂らして読ませていただきました。
応援してます!頑張ってください!
みたいなね。まぁ、文章量としてはこの3倍くらいは軽くあるわけ。
で、それに対して、書き手さんも特徴的に返す。
△△さん、天才なんて言ってもらって恐縮です。
本当に彼らって素敵ですよね。昨日もテレビを見て興奮&鼻血モノでしたよ。
的な。
一方、ゲイ板は男性集団なので、野郎臭が大事。
お~〇〇~おもしろかったぜ~今回も大いに利用させてもらった。
な感じに対し、
あっ、△△さん、ご無沙汰してます。苦戦してますががんばりますね。
とか~?
まぁね、そんな風だったよ。質も量もね。
そもそもわざわざコメントする輩が少ない。
とにかくゲイ板は、どこにでも存在する荒しの他に、すぐに魔女狩り(女と見破って糾弾すること)してくる人種もいるので、
話が女性的にならないように神経を遣ったものだ。
もちろん、ここで意を酌んでいただきたいのは、あくまでゲイ専用の場所であったため、彼らがリラックスして集い、楽しむためには、そうでない人たちが土足で踏み入ってくることに神経質と思われても仕方がない程に過敏になるひともいたということだ。
今でこそ、LGBTがちまたで話題として取り上げられるようになったが、あの頃はそんな時代ではなかった。
ただ、
ぼくが書いていた小説はさほど雄汁の多いもので溢れてはいなかったため、
よく攻撃を受け、何度も倒されたものだ。
ブログなどと違って、来訪者数を表示する機能はないことから、
コメント数という氷山の一角でしか書き手は自分の作品に対しての評価がわからない状況に置かれ、
話自体の存続やストーリーの方向性の検討をそこに頼らざるを得ない性質があった。
逆に言えば、話の途中でコメントをもらうことで、書き手は手応えを得たり、ストーリーを要望に添うように変更することが可能になる。出版という形を取る商業誌とはそこが違う。
やおい(女性)板では読み手からのコメントの多さ=人気の高さ と単純に認識されていただろうが、
ゲイ板では、基本的にコメント数が少ないので、
実際読んでくれてるひとはどのくらいいるのか、気に入ってもらえているのか、判断ができないことが多かった。
コメントがないから、と書き手が意気消沈してやめてしまうのを防ぐために、
女性が男のそぶりをして(ネナベという)、書き手を持ち上げたりというのはぼくのスレッドではよくやられていたと思うが、
ちらちら身ばれ(男ではないと見破られること)してバッシングを受けるということが起こりえた。
この世のどこでもそうであるように、気に入ってはいても声はあげないこと(コメントをしないという意味。ロム専門)が一般的で、逆に叩く声のほうが大きいので、
我々提供側はいつでも、ごく一部かもしれない側の評価に著しく左右されがちなのである。
だからこそ、ぼくは何度もやめようとしたし、その都度、ぼくが書き続けられるよう、
まるで編集者のようにぼくのポテンシャルを維持しよう、気持ちよくノって書けるよう、
読み手のひとたちがコメントを寄越してくれたのである。
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