【R18 完結】淫魔王の性奴隷ーペットー

藤崎 和

文字の大きさ
上 下
12 / 50
彰、過去を忘れて淫らに堕ちる。

2 思い出のショートケーキ

しおりを挟む
 
 アルカシスは、彰を抱き抱えられたまま食堂へ到着すると、白いテーブルクロスが敷かれた長テーブルのうちの一つの椅子に彰を座らせた。
 彼の真意が分からず、困惑した表情で彰は見上げた。

「今日はね、私の部下達に美しくなった君の披露目会を開いて欲しいと要望されたんだ。覚えているかい?君が私の性奴隷ペットになると宣誓したあの日に、姉さんと証人になってくれた者達だよ」
「あの人たち、ですか?」

 それを聞き、彰は思い出した。
 自分がアルカシスの性奴隷ペットになると宣誓した時に祝福の言葉を叫んだ者達だ。しばらくはアルカシスやエリザベータ以外会う事がなかったからか、それは遠い昔のように感じられた。

「そう。彼等は私の忠実な部下達だ。私が人間からいずれ性奴隷ペットを見つけて来ると見越していてね。あの日は楽しみで姉さんと参列していたんだよ」

 宣誓後、目の前の彼に激しく抱かれた事を思い出した彰は恥ずかしくて全身を真っ赤に染めた。
 テーブルに座らせて、アルカシスがこれから何をしようとしているのか、彰には検討がつかなかった。
 アルカシスは一度彰から離れると銀色の盆に彩り豊かなケーキを一切れずつ分けた物を彰に見せた。
 それに彰は怪訝な顔色で尋ねた。

「ケーキ、ですか?」
「そう。ショウはケーキは好きかな?クリームと苺が乗ったショートケーキはお勧めだよ」

 アルカシスは、彰に見えるように盆を近づけた。盆にはショートケーキの他にチョコレートケーキ、苺のタルト、モンブラン、チーズケーキにティラミス、抹茶の粉がかかっている抹茶ケーキもある。
 彰は、差し出された盆とアルカシスを見比べた。
 怪しい。自分を性奴隷ペットと言って主従関係を作った男が、なぜ彰にケーキを差し出したのか。
 躊躇う様子の彰に、アルカシスはおや?と尋ねた。

「ショウはケーキが好きじゃなかった?どれもなかなか美味しかったから、ショウにも食べてもらおうと思って取り寄せたのに」
「え、俺のため?」

 何だが面食らう。本当に自分のために持って来てくれたのか。
 彰自身、ケーキは好きだった。祖母が存命だった頃、彼女はよくショートケーキを彰のために買ってくれた事が今では懐かしい。それを思い出すと、彰は無性にショートケーキが食べたくなった。

「ショートケーキ・・・お願いします」
「フフフ。はい、どうぞ」

 アルカシスはショートケーキを小皿に移すと、小さなフォークと紅茶を添えて彰の目の前に出した。クリームが乗った部分からフォークで掬うと彰は一口口に入れた。
 甘くて美味しい。祖母が買ってくれた記憶が蘇って涙が出そうになった。彼女が亡くなって以来、全くショートケーキを食べていなかったからだ。

「どうした?ショウ」
「え?」
「泣いている」

 アルカシスに指摘され彰はツーっと涙を零した。それを皮切りに、次から次へと涙が止まらなくなる。
 どうして、泣いているんだ、俺。

「あれ・・・どうして・・・っ」

 涙は止まらない。どんどん溢れて来る。アルカシスは彰の背中を優しく摩りながら尋ねた。

「どうした?急に泣いて」
「実は・・・、っ」

 彰は、人間界にいた頃の自らの境遇をアルカシスに話した。

 昔から家族に疎まれ、友達もおらず虐められていた事。
 でも唯一、祖母だけが自分の味方でいてくれて、彼女がよくショートケーキを買ってくれた事。
 その祖母も5年前に亡くなった事。
 亡くなった後は誰も自分を気にかけてくれる人はおらず、家族に勘当されて5年間一人で生きてきた事。
 その間、会社でも邪険にされて誰も味方がいなかった事。

 祖母が亡くなって以来、こうやって誰かに自らの境遇を話したのは、アルカシスが始めてだった。アルカシスは黙って彰の背中を摩りながら彼の話を聞いていた。彰が一通り話し終えると、彼は優しい表情を彰に向けながら言った。

「ショウは、寂しかったんだね」
「あっ・・・」

 アルカシスは、ショートケーキを食べている彰を抱きしめた。そして、彰の耳元で囁いた。

「寂しかったんだね」
「うん・・・うん、寂しかった」
「辛かったね」
「うん・・・うん、辛かった」

 アルカシスの言葉に反復して応えるとさらに涙が溢れてくる。
 なんだろう。彼は自分をペットだと縛るのに、なぜか彼には自分の境遇を話せてしまう。彼が受け入れてくれるなんて保証も無いのに、なぜか彼に話すと安心できてしまう。
 アルカシスの仕立てのいい白いスーツが彰の涙で滲んでいく。しかし彼は構う事なく、彰を抱きしめ続けた。彼の甘いムスクの香りが、彰の鼻腔を刺激して、全身の力を徐々に抜けていくのを感じ、彰はそのまま彼に委ねるように保たれかかる。

「ねぇ、ショウ。君と私は奴隷と主だ。過去君に何があったとしても、今君は私の奴隷。私の奴隷に堕ちた君には、私からの愛と、快適な暮らしをこれからも提供するよ」
「あ、愛を?」

 愛?アルカシスからの、愛?

「勿論。君は私の性奴隷ペットだ。それだけでも私には君に愛を注ぐ理由になる。そして・・・」

 アルカシスは彰の耳朶をペロリと舐めた。

「ーー楽しい、快楽もね」
「え?」

 彰から離れたアルカシスの瞳が鋭く光る。彼の剣呑な緋色の瞳を見て、彰はゾクリと背筋を震わせた。

 嫌な予感がする。

 そう感じた彰は、彼から離れようとするが、それよりも早くアルカシスは彰の腕を掴んだ。

「逃がす気はないよ、ショウ。君が私に過去の境遇を話すなんて驚いたが、ならば尚の事私の性奴隷ペットとして、快楽だけを求めて淫らに善がる雌犬に変えてあげる」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...