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3章 違える二人に女神は近づく。

1話 アルカシスが『愛している』と言わないわけ

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「スゲーホテルだな。お前ら二人共今ここに住んでいるのか?」
「アルカシス様から言われたんだ。ここなら大学も二、三駅で直ぐだし不審者も手を出し辛いだろうって」
「まぁ、確かに手は出し辛いな・・・」

 彰は淫魔界の東国淫魔王デーヴィットと食事した定食屋を後にし、自分とアルカシスが滞在しているホテルに彼を案内した。都心の中心地に建つこのホテルは駅の改札口を出て目と鼻の先にある高級な三つ星ホテルでドアマンが常時待機している。
 現在二人は最上階のスイートルームを借りて生活しており、出入り口を入ってすぐのエントランスやフロントには上品なスーツで固めた男女のスタッフが滞在している観光客とやり取りしている。彰と共にホテルに入ったデーヴィットはエントランスでスタッフとやり取りしている客達の中に、どこか他の客達とは違う雰囲気を纏った者達がスタッフに写真を見せて話している姿を見つける。

「(筋者の奴らか・・・。きな臭いホテルだな)」

 おそらくこのホテルの幹部クラスの人間が彼等と何らかの繋がりを持っているのだろう。

 デーヴィットが視線を彼等に向けている間、彰はフロントのスタッフからルームキーを受け取るとデーヴィットを呼んでエレベーターを指差した。

「こっちだよデーヴィットさん」
「おぉ、今行く」

 デーヴィットと共にエレベーターに乗った彰は最上階のボタンを押すとグッと持ち上げられた感覚を感じながらエレベーターが動いた。

「景色いいじゃん、このホテル」
「俺もこの景色を初めに見た時は感動したよ。こういうところに泊まるって滅多にないから」

 高層ビルの明かりが点在する都心の景色を眺めながらデーヴィットは言った。

「アルカシスのやつ、ジャパニーズマフィアと繋がりがあるって話だったがまだその関係が続いているのか」
「アルカシス様が?マフィアって、半グレ?ヤクザ?」

 デーヴィットの話に彰は目を丸くして驚いた。
 初耳だ。アルカシスにそんな裏社会の人間と繋がりがあったなんて。

 逆にデーヴィットは彰に聞き返した。

「知らなかったのか?淫魔王は何かしら人間界の有力者と繋がりがあるんだ。俺達淫魔にとってみれば公安だろうが、民間だろうが、裏社会だろうが貴重な情報源だからな」
「何のために?」
「人間界の動向を知るためさ。俺達淫魔は簡単に言うと人間を支配する側だ。政治、経済、教育、治安、医療・・・人間達の生活を営むありとあらゆる出来事に俺達は関与している。俺達淫魔は人間の生命エネルギーを食糧としている。そこに直結する出来事には当然関心を向けている。言ってしまえば、人間の世界は俺達に都合良く回ってもらっているというわけだ。特に俺やアルカシスは王という立場上、人間を支配する親玉だからな。必ず知っておかないといけないんだ」

 特に淫魔王は特定の人間を側に置くを定義している。それは人間以上に長く生きる自分達一族の長が生命エネルギーを得る人間を取っ替え引っ替えすることでその魔力に変化があってはならないからだ。

「そういえば、淫魔王ってどうしてなることができるの?親から受け継がれるの?」

 彰にそう聞かれたデーヴィットは彰の純粋さに小さく溜息をついた。

「そうだな・・・別に人間みたく世襲制ってわけじゃない。単純に他の淫魔よりも魔力が飛び抜けていたから王になった。それだけだ。俺はガキの頃にその素質を見出されてな。カラマーゾフ王の下でしばらく修行して東国の淫魔王に即位したんだ。アルカシスとは、修行時代からの付き合いだ」
「じゃあ、アルカシス様の事情を知ったのはその頃から?」
「まぁ、ほとんどは俺が即位した後だな。俺はアルカシスが大変な時期を知っている。その時期を考えたら、今のアイツの状況は安定した方だ。パートナーもいるしな」

 ポン・・・と、エレベーターが最上階に到着したことを知らせる。エレベーターを降りた彰は部屋の扉にカードキーをかざし扉を開けてデーヴィットを誘う。

「入って。ここ凄いんだ」
「お邪魔・・・って、おおぉ・・・!スゲーとこだな、さすが最上階。俺が取った安宿より豪華じゃねぇか」

 入って直ぐの広いフロアに案内されたデーヴィットは、シックな調度品で揃えられた部屋に感嘆の声を上げた。
 応接用に揃えられた白いソファと透明なガラスのテーブル、大型の薄型テレビ、事務用の現代風でシャープなデスク、世界中のワインが揃えられた大きなチェスト、都心の景色が一望できるカーテン付きの大きな窓、その奥の部屋にはキングサイズのベットにシャワールームが設ている。

 しかし肝心のアルカシスの姿がない。デーヴィットは彰に尋ねた。

「アルカシスは戻っていないのか?」
「今日は遅くなるって。もうすぐ帰ると思うから適当に寛いでて。今お茶を淹れて来る」
「悪いな、気を使わせて」

白いソファにデーヴィットは彰に促されるままに座った。
 彼の向かい側に大学のテキストを入れた通学用の鞄を置いた彰は、ワインが入った大きいチェストからホテルのロゴが入った二人分のティーパックと白いカップを取り出すと、ポットを押して湯を注いだ。二人分のカップに湯を注ぐとその内の一つをデーヴィットに差し出した。

「デーヴィットさん、緑茶どう?俺、ワインは駄目だけどここのお茶が凄く美味しくて」
「おぉ、ジャパニーズティーか。じゃあ、頂こうか」

 彰からカップを受け取ったデーヴィットは揺蕩う湯気からほのかに香る茶の匂いを感じながら一口口に付けた。渋い苦味は感じるが、割とあっさりした茶の味に表情が綻ぶ。

「淹れたての茶って美味いなぁ。こりゃアメリカの高級ホテルでもこの味は無理だな」
「アメリカ?」
「俺は今アメリカのミネソタ州でパートナーのリザと暮らしている。普段は淫魔界むこうの事は全て部下に任せていて、有事の際にちょこっと顔出すくらいだ。まぁ、全て部下がやってくれているから俺の出番はないがな」
「淫魔王って、ずっと淫魔界に居なくていいんだ」
「まぁパートナーとの関係による。リザはむこうでソーシャルワーカーをしていてな。結構大変な仕事だから生活がままならなくて、俺は主夫やりながらアイツの仕事をサポートしてる」
「凄いなぁデーヴィットさんのパートナーって・・・。そういえば、デーヴィットさんはどうしてアルカシス様に会いに来たの?」
「あぁ、お前にはまだ言ってなかったな」

 淹れた緑茶のティーパックを抜いて皿に置いたデーヴィットは淹れたてを一口飲むと言った。

「俺がアルカシスに会いに来たのはむこうで合法的に売られているヤクの元締めを見つけるためだ。数年前から一部のセレブ達を出回っていたが、ここ最近一般の市場にまで出回り、原因不明の死亡事案が発生していてな。もう見過ごすことができなくて捜査に入ったが手遅れだった。売人捕まえて吐かせてもめぼしい情報が掴めず被害の拡大に頭を抱えていたのをアルカシスに頼み込んで日本の裏社会から情報を仕入れてもらったわけ」
「どうして日本から時期を?」
「捕まえた売人が日本のパスポートを持っていたからだ。就労ビザも取得していて、どうやら仕事の片手間に運び屋をやっていたことが分かった」

 デーヴィットから事情を聞いたアルカシスは日本だけでなく自らの支配する全域を調査した。まだ政府からの公式発表は出ていないが日本含めアジア地域やロシア地域でも同じように既に市場に出回り、多くの患者が常用していることが分かった。また、内服していた者の中に死者が出ていたことも確認された。これを受けアルカシスは人間界に部下を派遣し出所を探すことにした。今回デーヴィットに渡された情報はアメリカと取引のある情報屋の人間から入手したものだったという。

 泥々しい話に彰はブルッと身の毛がよだつと、身体を震わせながら言った。

「こえぇ・・・。普通の人の情報でも探せばあるってことでしょう?」
「もちろん。それが裏ってもんだ」

 デーヴィットは飲み終えたカップを彰に差し出した。

「悪りぃショウ。ティーのお代わりくれね?もう一杯飲みたくなっちまった」
「あぁ、ちょっと待ってて」

 カップを受け取った彰はチェストに行くと緑茶のティーパックを入れポットから湯を注ぐ。それを見ていたデーヴィットは彼の飲みかけのカップにポトッと小さいタブレットを一つ入れた。湯を注いだ彰は皿を交換してデーヴィットに渡す。

「はい、どうぞ。新しいやつを淹れてきたよ」
「サンキュウな」

 入っていた茶菓子もデーヴィットに差し出した彰は飲みかけの自身のカップに口を付けた。彰が茶を飲んだところをチラッと一瞥したデーヴィットは個装された菓子の袋を開けながら彼に尋ねた。

「ショウは、アルカシスとどこで出会ったんだ?」
「え?」
「出会いだよ、出会い。俺もアイツのダチだからな。俺より百年経ってパートナーを得たと聞いた時、どういう風の吹き回しかと驚いたもんだ。お前さんを見てどこで出会ったのか知りたくてな」

 彰は口をつぐんだ。デーヴィットに話すべきか悩んだからだ。急に喋らなくなった彰にデーヴィットはおかしくて笑みを浮かべた。

「なんだ?俺には言えないのか?」
「いや、そうじゃなくて・・・。出会いというか・・・最初は俺、アルカシス様が怖かったんだ。突然攫って、性奴隷ペットになれって言われて・・・」

 彰は、アルカシスとの出会いから現在に至るまでに何があったのかデーヴィットに話した。

 もともとしがない会社員として自宅と会社を往復するだけの生活をしていたこと。
 だが十年前の年の瀬、残業帰りの駅のロータリーでアルカシスと出会ったこと。
 そのまま彼に淫魔界へ連れて来られ強引に性奴隷ペット契約を結ばされたこと。
 以降、彼のペットとして囲われているうちに彼に好意を持ったこと。
 だがアルカシスの部下として潜伏していた邪神ロキ、トールに利用され自らアルカシスを手にかけたこと。
 トールの暗示が解かれた時、自分の気持ちをルシフェルに叱咤され自ら伴侶パートナーになりたいと知ったこと。
 ルシフェルを証人としてアルカシスと伴侶になったこと。

 話を聞いたデーヴィットはうーむ・・・と苦虫を噛み潰したように顔を歪ませながら言った。

「そういうことだったか。まぁ俺ら淫魔にとって気に入った人間攫うのは当たり前だったから気にはしなかったが、まぁお前にしてみればだいぶ人生変わっちまう話だろうな」
「てことは、リザさんもデーヴィットさんが?」
「俺の場合はリザに拾われたからだ。あの頃アメリカは株価が大暴落して金が紙クズ以下の価値しかなくてな。んで、腹減って行き倒れ寸前の俺をリザが拾ってくれた」
「また腹減ってたんだ・・・」
「おい俺をそんな目で見るな。これでも一国の王だ。乞食みたいな言い方すな」

 彰はジーっとデーヴィットを憐れむように見つめる。視線が痛くなったデーヴィットは彼から視線をずらすと話を続ける。

「俺達淫魔王は最終的に人間をパートナーとして迎入れる特権が与えられている。他の淫魔には許されねぇし、もし恋仲と分かれば人間は記憶を消して元の生活に還す。だがその淫魔は消すしかない」
「そこまでやるのか?淫魔も記憶を消すだけじゃ駄目なのか?」
「駄目の問題じゃない。淫魔王おれたちの地位に関わるんだ。淫魔王が人間を伴侶に求めるのは結局国の安定に繋がるからだ。確かに力のある淫魔が王に就く。だが世代によって若い奴等の方が力が上回ることもある。いちいちそんな奴等が現れて王位争いが起きれば国は安定しない。そこに人間を伴侶として迎え地位を確立すれば争いはなくなり国は安定する。大昔に決まった慣わしだ」

 そう断言するデーヴィットの表情は真剣そのものだ。その表情を見て彰は彼の王としての責任の大きさを感じ、いつも自分には余裕のある様子で接しているアルカシスを思い出した。

 彼も、自分と出会うまでは常に王としての地位を脅かされる立場にあったのか・・・。

 そう考えた彰はもう一度デーヴィットに尋ねた。

「じゃあ、俺がアルカシス様のパートナーになったなら・・・」
「王としての地位を脅かされる心配はなくなったということだ。お前がアイツのそばにいる限り、アイツは北の王として君臨し続けられる」
「そう、だったんだ・・・」

 彰はデーヴィットの言葉に安心を覚えた。
 自分の存在がアルカシスの王の立場を守っている。
 そう考えるとこれで良かったんだと納得した気持ちになった。
 不意に、ぼんやりとした眠気が来た。とろんと重くなった瞼と気怠げな身体が彰を夢見心地な気分にさせていく。朧げながら彰は言った。

「じゃあ・・・俺は・・・アルカシス・・・様に・・・とって、ふぁ・・・いなければ・・・ならない・・・」

 カップを握っていた彰の指が力なく離れていく。持ち手を失ったカップはガラスのテーブルに茶を拡げていく。そのまま白いソファにもたれかかりながら彰は眠りについた。

「悪いな、ショウ」

 ソファから立ち上がったデーヴィットは彰が完全に眠ったことを確認すると、彼を横抱きにして別室にあるキングサイズのベッドに横たわらさせた。小さく微かな寝息を立てる彰にゆっくりと布団をかけてやるとデーヴィットはボソッと呟いた。

「安心しな。アルカシスはお前を見捨てたりはしない。俺達淫魔王にとってパートナーは命よりも大事な存在だ。お前はただアイツに全て任せちまえばいい。大きな間違いは起こしたりしねぇ。ーーだろ?アルカシスよ」

 デーヴィットがアルカシスの名を呼ぶと部屋の死角で姿を消していた女性に扮しバッグを肩にかけたアルカシスが現れた。



*   *   *


 帰還したアルカシスはよく知る親友と自分のパートナーがなぜ一緒に部屋にいるのか理解し難かった。
 厳しい表情をデーヴィットに向けたままアルカシスは尋ねる。

「デーヴィット・・・。わざわざ観光客として来日してまで、私に何の用かしら?」

 アルカシスに背を向けたままデーヴィットは身体が硬直したように動き出せないまま言った。背中はアルカシスの殺気を受けて寒いはずが汗をかいているのが分かる。

「おいおい。盗み聞きしていたから事情は知ってんだろ?アメリカからこちらに逃げたヤクの元締めを一緒に探して欲しいんだ」
「取り逃したってこと?」
「まぁ・・・平たく言えば・・・」

 話を聞いたアルカシスは口元に指を当てて思案する。軽く息を吐くとデーヴィットに言った。

「いいでしょう。だけど貴方にも私の仕事を手伝ってもらうわ。同じ国に淫魔王が二人も滞在するのは自然災害を起こすから魔力は使わないように」
「オーケー。物分かりのいい美人は大好きだ。愛してるぜ、アル」

 不意にアルカシスは肩にかけたバッグからスマートフォンを取り出す。

「貴方のパートナーに密会の画像でも送ってやろうかしら」
「それマジでアウトだからやーめてー。淫魔王が二股かけた疑惑かけられてパートナーに愛想尽かされたとか知られたら恥ずかしくて東国にも帰れねーからマジ勘弁~」

 ワタワタと取り乱すデーヴィットを無視しアルカシスは彰が寝ているベッドに足を進めた。すうすうと静かな寝息を立てて寝ている彰を見てアルカシスは呆れたように溜息をついた。

「全く・・・馬鹿な子。私がどうして貴方を身捨てなければならないのよ。必要ない心配してるから・・・」

 チラッとアルカシスは彰の通学用の鞄に目をやる。中から古書が僅かにはみ出ており、あの本を見ると再度溜息をついた。

「こんないらない本なんか買って・・・。無駄に講義が多いんだから、学校が終われば早く戻って休めばいいのに」
「そういえば・・・何だってお前ショウに教えなかったんだ?伴侶ならば俺達の事情を教えても問題ない。いつまでアレを鳥籠に閉じ込めるつもりだ?」
「そうね・・・。『魅惑の人』を狙う者が、いなくなるまで、かしら。私が闘神に昇格したからといってこの子がいつまでも私のそばにいてくれるとは限らない。トールの時のようにこの子を暗示にかけてまで、手中に収めようとする者が今後も出てくる可能性もある・・・」
「お前・・・」

 デーヴィットはアルカシスの悲しげな表情を見て唖然とした。信じられないといった表情を見せるも密かに動向を探らせていた密偵の報告を思い出した。

『アルカシス王が闘神に転生したきっかけはペットとして囲っていた人間を邪神達から取り返すため』

 当初デーヴィットはその事が信じられず、この目で確認しない限りは信用できないと思った。
 だが前回王達の会談で見せた彼の表情は、パートナーが近くにいないというだけで物悲しい様子を見せており、王に即位する前の彼を知っている自分は衝撃が走ったのを覚えている。

「こないだの会談で見せたお前のツラと今のお前のツラ・・・、お前、本当にソイツを・・・」
「ーー違うわ、デーヴィット」

 言いかけたデーヴィットをアルカシスは強い口調で制した。

「私は、この子を誰にも渡したくないだけよ。だって闘神は、愛を知ることはないのだから・・・」

 そう語るアルカシスの悲しげな表情は、デーヴィットから見れば切ないものに見えた。彼はアルカシスに尋ねる。

「何故だよ、アルカシス」
「・・・」
「ショウはお前のパートナーでいることに喜びを感じている。コイツが下らねぇことで悩むのもお前が好きだからだろ。お前の親父だって先代を愛していただろ。闘神だからって愛することを知らねぇってわけじゃない」
「確かにそうね。でもその結果、母は狂い父は叔父に殺された。兄や姉も死んだ・・・」

 アルカシスはゆっくりと目を伏せる。思い出すのは遠い昔幼い自分のみを愛しておきながら、他の兄姉達、特に長子のエリザベータに対して強い憎しみと嫉妬を向ける狂気に満ちた母の姿と、自分に瓜二つの息子を庇いトールに殺された父の姿だった。
 眠る彰の髪を優しく撫でながらアルカシスは言った。

「私には、この子に『愛している』とは言えない。もし言えば・・・」

 この子が、私を愛し、私もこの子を愛していると伝えたところで、母のように狂い我欲に走る姿を見たくないから・・・。

 アルカシスの表情にデーヴィットはグッと胸中に込み上げてくるにものを感じながら、直ぐに払拭するとアルカシスの肩に手を置いた。

「迷っているんだな、お前も・・・。闘神に昇格して半年経ったが未だに神気の制御もままならないのは、そのせいか?」
「そうね・・・。暴れ馬の神気を手懐けるのにもう少し、時間が必要なのよ・・・」

 痛いところを突かれたとアルカシスは自嘲気味に笑みを浮かべた。親友とはいえ他国の王にまで自分の弱点が知れてしまっているのはまずい。外部に知らせているということは、当然これから自分やショウを狙う『敵』も把握しているからだ。

「・・・出所が分かったわ」

 アルカシスの言葉にデーヴィットは彼女に振り返る。彼女のスマートフォンには上品に佇む若い女性の写真があった。そのホームページ上には『神成製薬会社』と記載されており、彼女は社長として紹介されていた。だがデーヴィットは彼女の写真を見ると剣呑な表情を浮かべる。

「可愛く見えてかなりのやり手だなこのお嬢さん。一見するとお上品に見えるこの笑顔も何か得体の知れないモノを感じるぜ」
「貴方もそう思う?」
「で、お前は今後どうする?」
「彼女とどうにかして接触を図るわ。今、私の息のかかった人間達が調べている」
「分かった。それじゃ、俺も同行しよう。これ以上、リザやゴードンのような市民達に被害は出させられねぇ・・・」
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