その瞳の先

sherry

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「じいさんに会ったよ・・・瞳の事も聞いた。それにあの人もいて謝られたよ。ねぇ母さん、俺たちは間違ったのかな?」

「そう・・・あなたは間違っていないわ。間違ったのはお母さんよ。瞳が現れたときちゃんと伝えなかったお母さんのせい。あの時伝えていればあんなことも起きなかった。あなたにも亜蓮にもあんな思いはさせずに済んだ・・・ごめんなさい。あなたたちに辛い思いをさせて・・・」

母はずっと後悔しているのだろう。あの瞳が出た俺をとても不安げに見ていた母・・・こんなことになって余計にそう思うのだろう。

「母さんのせいじゃない。あの人が弱かったんだ。亜蓮は?あれからどうしてる?」

「元気にやってるみたいだけど、もうずっとこっちには帰って来ていないわ。湊斗くん達といるみたい。やっぱり今更なのかしらね・・・ねぇ零。あなたこのまま帰って来ないつもりなの?」

亜蓮・・・帰ってきてないのか・・・湊斗といるってことは2人はまだ付き合ってるんだな・・・そして、俺が帰らない理由も・・・でも、

「母さん・・・俺が離れることで皆が幸せに過ごしてるなら、それだけでいいと思ってたんだ。だけど・・・どうしたらいい?俺が今帰ったら、母さんが悲しむのも、亜蓮が傷付くのも分かってる。けど・・・じいさんと話して、側にいてもいいのかなって・・・皆が幸せにはなれないかもしれない。だけど・・・出来るなら正したいんだ。ずっと考えてた1人になって寂しい思いも悲しい思いも一杯した・・・亜蓮はずっとこうだったのかなって・・・今の俺たちより小さい亜蓮はどんな思いだったのかなって・・・だから・・・もう遅いかもしれないけど・・・今度こそちゃんと幸せになってもらいたい。皆で家族になりたい」

「バカね・・・私は大丈夫よ。そんなに弱くないんだから!だからね、帰りたければ帰ってくればいいの。お父さんだって分かってるのよ。あの時はあんな言い方しちゃったみたいだけど(笑)学園の卒業試験だってそっちで受けれるんだからね!私たちの心配なんてしなくていいのよ。そりゃ今更だって言われるかもしれない。納得できないかもしれない。でもね ・・・もう自分の事は自分で考えられるでしょ。それにね、どこにいたってあなた達は私の大事な息子よ。ありがとう・・・守ろうとしてくれて。私は幸せよ。」

そう言う母の声は少し涙声だった。この人は何て強いんだろう。それに父さんも・・・この人が俺の親でよかった。

「ありがとう・・・」

それから俺は学園を卒業するために必要な単位や、課題をこなした。
無事卒業試験に合格し、卒業できることになった。そのまま急いで大学入試も受け無事合格した。ようやく帰国する目処がたち、俺が家についたのは卒業式の前日だった。

久しぶりの実家で母に会い、明日の卒業式が終わったら亜蓮に話をすることを教えられた。俺は卒業式には出れないが、最後に学園を見に行こうと近くのホテルに泊まることにした。ホテルに着いてゆっくり出来たところで俺はあいつに連絡した。

「もしもし?」

「煌夜・・・今まで連絡出来なくてごめん。帰ってきたよ。」

「おかえり。」

あの日会いに来てくれてから何度か連絡をもらってたけど、俺はずっと返せずにいた。甘えてしまいそうで、弱音を吐きたくなりそうで・・・

「うん・・・ただいま」

しばらくあの日からお互いどう過ごしていたとか、たわいもない話をした。そして明日、式を見に行くこと、終わったら亜蓮に話をすることも・・・

「そうか。大丈夫か?」

「大丈夫・・・だけど、何かあったら守ってくれよ」

「ああ。あの日言った言葉に嘘はない。」

「じゃあまた」

後ろから煌夜を呼ぶ声がし、俺たちは電話を切った。
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