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沸いて出た、敵役G

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 式が終わると皇宮の庭園を開放して、披露宴が行われた。
 帝都に住む人達が今日だけは自由に祝って欲しいと、両陛下からの心配りだった。

 貴族達や騎士達の存在に畏れを抱く平民には敷居が高いと思ったけど、子供達はそんな畏れをどこ吹く風で飛び込んできた。

「これ凄い!
 お花が甘いよー」

 どこかのチビさんが花の形をしたお菓子を舐めて、キラキラした目を兄弟に向けていた。

「早く、早く!」

 そんな風景があちこちで見かけられ、貴族達は戸惑いながらも両陛下の思いを汲み取ろうとしていた。





「おめでとうございます。
 ご招待頂きありがとうございます。
 こちらの方が? ふふ、殿下らしくない方を選ばれて」

 僕達の前に現れた貴族然とした青年が、いきなり嘲笑う様にすると、まるで汚い物でも見るように蔑んだ目で睨まれた気がした。

「どちらの方でしたか?
 私が招待した訳ではないので存じ上げませんが。
 祝辞は結構ですし、知らない方が無理をされる事はありません。
 作法も難しかったんですね?
 そのお年まで無教養では将来が心配で、お相手を誰でもいいから見つけに来たんですか?
 ですが、どうでしょうか。
 そのように恥ずかしげも無く、この場にいられるような方を迎え入れる方はいないかと思いますよ?」

 本当に困ったなぁ、って言う表情と態度に言葉で、相手にそれ以上言わせずに撃退した。

 要は、バカなの? である。

「なっ!」

 どっかの貴族青年は、顔を真っ赤にしてどっかへ走り出していた。

「グラン?
 今の人ってなに?
 前の恋人かなんか?」

 敵対心丸出しで来ないでしょ!

「本当に知らないなぁ。
 記憶にも無くて、あんな態度を取られる覚えも無いから、頭悪すぎてかなり驚いた」

「僕が思うに、きっとグランの事が好きだったんじゃないかな」

「んー? だとしても、1ミリも興味ないな。
 もし友達だとか知り合いだとしても、シアンにおかしな態度を取る輩を野放しにする訳ないし。
 大体、あんな変な奴を友達にはしないよ、いくらなんでもね」

 目が笑ってないよ、グラン。

「さて主要な貴族には挨拶を済ませたし、私たちも少し楽しもうか」

 今度はちゃんと笑ってる。
 グランの表情が持つ意味を結構わかる様になるくらい、僕はグランをよく見てるって事だ。
 本人は隠したいみたいだから、気づかないふりをする。

「リュシアンはおじいちゃんたちが五分ルールを適用してるみたいだし、僕らは何か飲もう」

「全く、リュリュって呼び名を勝手につけてるし、困ったもんだ。
 明日の朝は絶対門の前に馬車が着いてるから」

 さっきの話しね。

「まっさかぁ、帝国の皇帝陛下と皇妃様だよ?
 そんな暇なわけないって。
 グランだって第四王子だった時に陛下が忙しかったの知ってるんでしょ?」

「いや、暇してたぞ、あの二人」

 そんな訳ないでしょ。 

 庭園の中を動きながら、どんな飲み物にしようか迷っていると、先ほどの青年を年配でかなり恰幅の良い男性が伴って再度現れた。

「おぉ、ラグランジュ殿下、こちらにいらっしゃいましたか。
 今日はおめでたい日ですが、私の息子を紹介したくて連れて来ました。
 金色の魔法使い様には負けますが、うちの息子もなかなか美形ではないですか?」

 何故か勝ち誇ったような表情をしている青年に、僕は笑いかけた。

「おめでたい日に、何故紹介をする必要が?」

 グランの周りの温度が一気に冷えた感じがした。

「はっはっは、殿下もお人が悪い。
 金色の魔法使いを逃がさないための婚姻だと、皆気づいてますよ。
 しかも平民から出たばっかりに、こんな披露宴をしなくてはならないなんて」

 それは庭園を開放して、帝都の誰でも来て良いって決めた陛下への冒涜だし、頭まで下げてくれた陛下と皇妃様への不敬で処刑されてもおかしくない発言だった。

「ほぅ? ではこの披露宴は無駄だと?」

「平民にまで振る舞う必要性を感じませんな」

「そうか、貴殿はどちらの家畜だったかな?」

「は?」

「あぁ、すまん。
 家門だな」

「私はゴ」
「いや、必要ない。
 私こそ無礼であった。
 ラグランジュ・ド・ラキュー、エルモア・シアン・ド・ラキュー魔法伯爵の夫である。
 以降はお目にかかることも無いだろうが、隠居先は慎重に選んだ方が良いかと思うぞ」

「どういう意味ですかな?」

「そのままの意味だが。
 貴殿に人語は難しかったか?
 そちらの息子殿も無教養だとさっき知ったばかりでな、いや、すまん」

「私どもが無教養だと?」

 グランは素晴らしく綺麗な礼を取ると、これまた素晴らしい笑顔で、難しい話でしたね、と付け加えた。







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