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事情と溺愛
しおりを挟む「元々、婚約破棄を願っていたのはトルシエの方なんだ。
婚約者がいるにも関わらず、多数の女性と関係を持っていてそのくせ王太子としての政務はかっらっきしというバカだったんだ。
トルシエは言葉がキツくて正論を言われるものだからあのバカ殿下は逃げ回っていたんだ。
政務はトルシエがしてくれる、何かあれば政策は宰相とその補佐の私がする。
最近では関係を持った女性を側室にするとか言い出していて、貴族会でも問題になっていた所だったから、准男爵令嬢の事は渡りに船だったのさ」
素晴らしく爽快な笑顔で話してますけど、バカバカはあんまり言わない方が良いのでは?
一応、アレでも王族じゃん。
「もしかして、既に他の方が立太子されるのですか?」
「あぁ、うちの弟がね。
ビランコ家は王妃の方の家系で、甥になるから継承権はちゃんとあるのさ」
なるほど。
「でもそれと、さっきの婚約式は関係ないですよね?
大体いつ僕たちは婚約したんですか?
さっき知り合ったばかりですが?」
お城を後にして、先に帰ったトルシエとは違う公爵家の馬車に僕も乗り込んで、こんな話をしていた。
「事情を解決できると言っただろ」
「それはそうですけど、事情は別に……」
そっぽを向きながら返すと、何故か甘く微笑まれてしまった。
「私とは初対面だと思ってるのか」
「だってそうでしょ?」
「その女装した姿ではなく、学園の制服を着ていた時には顔を合わせているけどな」
あ、学園祭の時の? いやいや、面と向かってしゃべってすらいないじゃん。
その時の記憶なんて、今の僕じゃないから尚更だよ。
虐められて学園際の間中逃げ回って隠れて過ごした事が思い出された。
正確には元のこのキャラの記憶。
「虐めにあっていたので、学園祭なんてほとんど見てもないし参加したと言えるほど何かしてもいません」
自分の体験したことでは無いけど、その時の感情や映像が思い出されて苦しくなった。
「そうだったな。
だから、私は覚えていたんだ」
「どういう」
いきなり手を握られて、良かった、と言われた。
「トルシエが覚えていたんだよ。
君に一目ぼれをしたって言ったのを」
「はぁ?」
「君がドレス姿で現れた時、トルシエが気付いてくれなかったら、今こうやって君と一緒にいなかった。
転んだ時、機転を利かして医務室へ連れて行って、私と会わせようとしてくれたんだよ。
だけど君ったら物凄い勢いで逃げちゃってるし、追いかけようにもあの准男爵令嬢は邪魔だしで、本当にイライラした」
あぁ、トルシエって言い方キツイからなぁ、そんな含みがあったなんて分からなかったよ。
でもさ? あの時、令嬢って声かけて来たじゃん。
「お、おかしいだろ?」
「うん、私もそう思う。
君が忘れられなかった。
それに、あんなドレス姿で、あんな事」
顔を真っ赤にした小公爵様が何を思い出したが理解した。
僕のちんちんだ。
ちょっと会話がかみ合って無い気がするけど?
「で、でもだからっていきなり婚約とか」
「隣国なら同性婚が認められているから大丈夫」
おい、もしかしてトルシエの婚姻って、それを狙ってじゃ?
「違うよ、隣国の国王がトルシエの事をすごく気に入ってね。
ほら国際的な折衝も妹が代わってやっていたから、会談する機会が多かったんだよ。
殿下の婚約者じゃなければって、ずっと言っていて悪評も知られていたから破棄するのも時間の問題だと思われていたのさ」
「はぁ、知らぬはバカ殿下ばかりなり、って事か」
お、僕もじゃん。
「最初は冷たくしてごめんよ。
本当はずっと甘やかしたくて甘やかしたくて、女装してくるって聞いてたらもっと綺麗なドレスを贈ったのに」
「それ! 何でサイズもピッタリでドレスが出て来るんだよ?」
「もちろん知ってるからさ」
こわ。
「どういう事?」
「ザンダース家の事情も知ってるよ。
だって君の事だから調べつくしてるしね」
さすが、宰相?って事か?
「僕、君じゃないよ」
「うん、知ってるけど君から教えて欲しい」
まるで跪く様に僕の手を取って、名乗るのを待っている小公爵様に、怖いって感情より何か違う感情が芽生えそうになっていた。
「イリエラ・ザンダース」
この記憶を持ってる体の名前。
「イルって呼ぶね。
私はサイアス・ビランコ、アスって呼んで」
「その、婚約は、ちょっと早いと思うんだ」
改めて、婚約とかそんなのは考えられなかった。
一応、前は健全な男子で女の子とお付き合いしたことは無かったけど、性的な対象は女の子だと思ってるから。
「うん、まずはお付き合いから始めよう」
「まぁ、それなら」
そう言うと、頬にチュッとキスをされた。
キスされたくらいじゃ、しかもほっぺだし!
「明日には隣国に立つから、ザンダースには手紙を送っておいたよ。
ビランコ家でもらい受けますって」
ナントカは紙一重って奴なのか、思考が突き抜けてるとしか思えなかった。
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