子豚のワルツ

ビーバー父さん

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媚薬

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引き千切ってそのまま床に叩きつけたつもりだったが、ただ落としただけの状態になってしまった。

意外と頑丈で、落っことしただけでは壊れるどころか、綺麗なままのピアスが転がっただけだった。

「おいおい、商品に傷つけてんじゃねーよ。
 ピアスに何か仕掛けがあったみたいだが、残念だったな。」

ヘラヘラと笑いながら、床に落ちたピアスと残念、壊しちゃった、と言いながらタナトスが踏みつけた。

パキッ。

微かな破壊音の後、その壊れたピアスから一気に魔法陣が広がった。
壊したことで発動する魔法陣は、攻撃自体を転送する魔法だった。

国で監視してるフロウやマロの魔法に加えて、マナイの支配魔法にトルクの攻撃魔法、シャズの拘束魔法も転送されて来た。

更に、トリシュがお待たせ~と言って、現れた。

「叔父様!!!
 こいつやっつけて!!!
 母様に変な薬飲ませた!」

「エリュ、何で捕まってるの?
 そんなのカッター使えるんだから切れるじゃない?
 俺の教えた事忘れちゃった?」

「あ、そか。」

今気づいたように、エリュが水魔法で切り裂いた。

「出来た~」

「エリュ、後でお説教ね」

タナトスはシャズの魔法ですでに拘束されていたけど、トルクの攻撃魔法が脇腹に命中した。

「うぐ!!」

ダラダラと血が流れ始めて、小さな肉片が飛んだのが分かった。

「あ~、怒らせちゃいけない人を怒らせたからね~」

支配魔法で自白させるから別に拷問とかの必要はないんだけど、トルクの怒りは納まらないらしくて、さっきからちまちまと肉を削って行ってた。

「あぐぅ、糞っ!!
 こいつらなんだよ!!」

トリシュがにっこり笑って、家族だよと言った。

「兄様、ロゲルが」

身体が熱くて、呼吸も荒くなる。

「ああ、シュリもだな」

『シュリはこっちで監視してる。
 神殿で人身売買が行われている。
 これでこの証拠は出来たから、皆、取り敢えず引き上げていいよ。
 早かったな、一日かかってないぞ』

「そりゃ、エサがいいからね~」

そこへ現れたのがロゲルだった。
どっかのお金持ちに買われたって聞いてたから、どうなるかと思ったのに。

身体の熱がどうにもならなくなって来た。

「あ、ん」

「咲季ちゃん?」

ロゲルが床に倒れ込んでる僕を抱き上げた。

「あ、ん、やぁ、さわら、ない、で」

擦れる布も、ロゲルの体温も何もかもが刺激した。

「やだ、やだ、さわら、ないでぇ」

ゾクゾクと背中を這う快感が、理性を失くしそうだった。

ロゲルが抱きしめれば抱きしめるほど、体の芯が火照った。

「咲季ちゃん、どうしたんだ!」

「こいつが母様に変な薬を飲ませたの!」

エリュの強い口調すら、ビリビリと響いた。

「ふっ、ふっ、ふっ」

短く呼吸をしてどうにか、快感や刺激を逃してみるけど、気休めにもならなかった。

「お願い、一人にして」

「大丈夫だ、おい!お前!
 解毒薬はどうした!?」

タナトスがヘッと吐き捨てる様に、そんなもんはねぇ、と告げた。

「最高級の媚薬だ
 よがり狂っちまうのさ
 はーっはっはっは!!
 ざまあ見ろ!
 腹一杯に精液や、チンポを欲しがる薬さ!
 壊れる前に、たっぷり出してやる予定だったからなぁ」

トリシュがタナトスの口を縫い付けて喋れない様にした。

「魔力で体の薬を流してみよう」

トリシュが前に魔力を流す方法を教えてくれた時みたいに、手を握ってくれたけど、流される魔力で余計に体の中を擦られたみたいで、激しく悶えてしまった。

「マナイ、トルク兄上を寄越せない?
 こちらから、咲季ちゃんをそちらに送るには船まで移動しないと…
 多分、間に合わない」

「トリシュ兄様、僕、大丈夫、だから、」

ロゲルが抱きしめる腕に力が入った。

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