子豚のワルツ

ビーバー父さん

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家名の歴史

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「今の俺らも初めて聞いたわ。」

「ほんと、僕も。
 父様、どう言うこと?」

フロウとマロが、咲季のピアスと監視映像を通して知った家名の事実を、トルクに問いただしていた。

「家名を与える儀式は、命が生まれた時と決まっていて、伴侶は元々の家名を外すのが年に一日しかなく、三年以上の生活期間が必要なんだ。
 だから、咲季はまだ、うちの家名にいれられない…」

項垂れながら話したトルクに、二人は冷たい視線を投げた。

「で?」

「でって?」

「それを母様に教えなかった理由!」

フロウがバンッと机を叩いた。
一枚板の頑丈な机の表面が、凹んだ。

「その、その間なら、咲季は自由で子供が居ようが、居まいが、その、別な男の元へいく権利があって、絶対!咲季は子供達を捨てたりしないよ!しないって分かってるけど、私は最初にやらかしてるから、自信が無くて…。
 君は自由だから、とは言えなかった。
 子供達も全員連れて出ていくって言われたらと思うと、怖くて。」

「もう、父様、呆れた。
 ほんっと!!マジで!!
 やらかした償いがそれか?
 レオハルトが魔法で縛って、てめぇは状況で縛ったのかよ?!
 子供作ったら母様が出て行かないとでも?
 更に!家族からその話が露呈しないようにしてたな?」

フロウが低い声で罵倒し、睨み据えた。
側で執務をしていたマナイも顔を逸らした。

「僕、父様の家名いらない。
 母様の田淵でいい。
 田淵マロになるよ」

「あ、俺も
 田淵フロウ、いいなぁ」

「じゃあシュリとエリュもかなぁ
 田淵シュリ、田淵エストゥール
 うん、いいね!」

女子が良くやる、誰々君の苗字に自分の名前を付けてみて喜ぶような、そんな感じで田淵の名を付けていった。

「で、あと愛称しか名乗らないのは何故よ?」

「真名は、本当の家族、伴侶になった時に」
「はぁ?何だよそれ?
 じゃあ、俺らも本当の家族じゃねーな。」

フロウはキレる寸前だった。

「君たちだって神様から名前をつけてもらってるんだよ?
 それが真名だから。
 咲季の子だから特別に。」

「エストゥールはどうなんだよ?
 あいつも家名無しなのか?」

「あ、そうだ。
 母様が産んだわけじゃ無いし。」

「エリュは、生まれ落ちたその時に、咲季がうちの子と言った事で咲季の家名に入っている」

「ぶん殴る!
 俺も母様の家名に入るわ」

「家名が歴史って、下らない。
 ナニソレ!」

トルクはタジタジになって説明するが、フロウから、最低とか言い訳すんな、など罵倒され否定されて、逃げる一択になったとしたら、全力で母様達を守るから、追いかけて来んなよ、と釘を刺される始末だった。

「あとな、誤魔化す為に寝技に持ち込んだら、そのぶら下がってる物ぶち切るからな」

「あのね!
 仮にも私は父親だからね???」

「おう、だから粛清するのは子の役目だろうが」

フロウだけが、宰相トルクをやり込める事が出来る、唯一の存在だった。

小さな声でマナイが、よく言った、と褒めていたのは言うまでもなかった。







「咲季?咲季ちゃん?
 おーい?」

思いの外、考えてしまっていた。

だって今の状態って事実婚てやつじゃん!
ナニソレ!って思うの当たり前じゃ無い?

「家名、知りたい?」

「いえ、知りたく無いです。」

だって、今まで教えないって事は、それまでって事だろ?

「あの、咲季ちゃん?」

「なあに?ロゲル?」

オロオロしてるロゲルに、八つ当たりをした。
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