子豚のワルツ

ビーバー父さん

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謁見

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報告が終わって、会議室から出るとエストゥールが駆けてきた。

「母様!
 お仕事終わった?」

うん、三人の時は余裕もなけりゃあっという間に青年になったし、そう思うと成長を楽しむ事も無かったから、エストゥールの笑顔は毎日が幸せだと言う証拠の様だった。

「終わったよ~」

「遊ぶ?
 ね、遊ぶ?」

「そうだね~、お兄様達とは何して遊んでたの?」

「んとね、氷鬼してた!」

「楽しかった?」

話していたら、ドヤドヤと三人が参った参ったと言いながら入ってきた。

「母様、エリュってかなりセンスいいぞ」

「フロウ?
 何が?」

「氷鬼、俺達が油断してたとは言え、
 全滅。」

「え?」

まさか、ね?

「氷鬼、エリュは文字通り、凍らせて来るんだわ」

笑いながら言う?

「攻撃魔法と強化魔法の錬成が早くて、スピードがいい。
 攻めるタイミングと動くタイミングがマッチしてるから、初っ端なら防げないわ」

戦闘訓練か。

「エリュね、シュリ兄様と一緒に戦うの!」

あー、その為に頑張ったのね。

「ん、エリュは強いねー
 もう少し大きくなったら討伐とか行けるね~」

もうね、この世界だからね。
諦めました、はい。
何でもありですよね。


このまま、エストゥールが自由に育ってくれればいい、それだけを願っていた。






魔王国の宰相が、正式に国王ダリューンに謁見を申し込んで来たのは、マナイ達があの国を引き上げてわずか一月後だった。

「何を考えてるんでしょうね?」

執務室でマナイがトルクに向かって言った。

「エスラへの執着だろう?」

多分その通りだとマナイは思いながら、嫌な気分になった。
あそこまで出来るエディオンがエスラにどうして執着するのか、正直分からなかった。

「いやな感じだな。
 もしやエスラにまた、家族を復活させてくれとでも言うのだろうか…」

「マナイ、そのような事が一言でも出れば、殺してして構わない。
 戦争になってもいい。
 うちの子だ!」

「トルク兄上、私にとっても可愛い甥です。
 全力で排除しましょう!」

これは二人の宰相だけの黒い密談だった。





謁見が申し込まれていた当日はメンバーが予め申請されていたが、その中にはエディオンの名前は無かった。
無かったはずなのに!!
謁見の間で挨拶をしているのは、エディオンその人だった。

「建国の折には、マナイ様の慧眼とロゲル様の人脈、トリシュ様の教育指導を頂き
 魔王国も諸外国から認知され、これからの国として漸くスタートラインに立てました事
 心から感謝しております。」

美辞麗句を述べながら、エディオンの目は国王を見ているようで、その実その場にエスラがいないかと探ってるのが見え見えだった。

「立派な国王になられたようで、
 マナイ達の働きは良かったようですな」

「はい、素晴らしい国への足掛かりが出来ました」

「そうか、ではこの度の礼は受け取ったと言う事で
 帰国願えるかな」

んん?
え、なんか聞こえた。

「さぁ、用はすんだであろう?
 お帰りなさい」

じじバカだったわ、そう言えば。

「え?
 いえ、まだ本題が!!」

「ん~?
 それ以上言うと、潰しちゃうけど」

「エス」
「黙れ!貴様が口にしていい名ではない。
 もしこれ以上呼ぶなら、今この場より敵国として扱うが?」

黒い密談は、密談ではなく、総意だった。

「何故、ここでその名を口にするんですか?
 あの時、僕が持ち帰ったからですか?
 貴方が自分の為に、刻んだ体の残りを」

「あれは、封印と復活が同じだと言われて…
 私に家族を返すと、でもそれは魔族で人ではなかった」

この期に及んで、魔族だのって自分だって魔族じゃないか!
不本意だったかもしれないけど、それで、仇を討てたじゃないか!

「貴方の本当の仇は、ちゃんと討てましたよね?
 一緒に行動を共にしてたじゃないですか。
 まだ、何かを求めるんですか?」

怒りが収まらなくなる。

「違う、違うんだ!!
 愛してるから、もう一度、エスラを再生したいんだ!」

「言ってしまいましたね。
 その名を。」

マナイが支配魔法を展開させた。

「エスラはもう再生できません。
 やっと、本当の意味で、魔王というシステムから解放されたんだから。」

そう、もう魔王は存在しない。




 





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