子豚のワルツ

ビーバー父さん

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宰相は誰?

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「とにかく、一日でも早くエスラの家を小屋じゃなくて、ちゃんとした家にしてあげたいんだ」

僕はあの狩猟小屋みたいなとこで、清貧と言えば聞こえはいいけど、荒屋よりマシ程度の小屋はどうかと思った。
隠れて成長して、また、討伐されてなんて許せない。
封印なんて言いながら、結局は殺してる。
痛い思い、苦しい思いはよく知ってるから、余計に早く何とかしてあげたかった。

「母様、父様が宰相を立てるのが先だって。
 彼らの意向をちゃんと正しく理解して、腹黒さがあって、魔王を守れる人がね。」

うーん、魔族にいないのかなー。

「あの、私たちが魔王の国へ、その、出向という形でお手伝いしては?と思っています、如何でしょうか?」

トリシュとマナイが挙手をした。

「え?どうして…」

「咲季ちゃん、私たちの母が犯した罪です。
 せめて、少しでも役に立ちたい。
 それにね、ここにはトルク兄上という立派な宰相がいます。
 私も、真似事をしては来ましたが、魔王国で役に立てる知識もあると思うんです。」

そりゃ、トリシュもマナイも教えたり、指示したり上手いけど。

「だって、」
「咲季ちゃん、私たちは母の罪、父の罪を償いたい、と言うよりは新しい場所でやり直したい、って気持ちの方が強いんだ。
 それにね、私たちが魔王国に行けば、色んな意味で交渉も交易もし易いと思うんだ。
 実情を一番知ってるのは、私たちじゃない?」

「トリシュ兄様…」

正直、考えてなかった訳じゃないけど、エディオンとか他の魔族の気持ちを考えたら提案出来なかった。
もし、向こうに行って、嫌な目に合ったりしたらって。

「咲季ちゃん、心配してくれたんだよね。
 母は本当に酷い事をした。
 父もトアもそっくりだって言われてたのが分かったけど、私たちにも同じ血が流れてる。
 だからこそ、このままじゃいけないって思うんだよ。
 直接僕たちがしたわけじゃないけど、やっぱり、家族だったから、かな」

「違うよ!!
 兄様たちの家族はここにいる僕達だよ!!
 あいつらは家族なんかじゃない!!!」

何かが悔しくて号泣して、怒鳴ってしまった。

「母様、落ち着いて。
 トリシュ叔父上とマナイ叔父上と、ロゲル叔父上も魔王国に行く事になったんだよ」

マロが僕の肩を抱きしめながら、新たにロゲルの名前を出して来た。

「悪いな、咲季ちゃん
 私も、二人について行くことにしたんだわ。
 一から始める国なら、私たちの様な存在も必要だろう。
 それに何も一生向こうへ行ったきりではないよ。
 国が整い、彼らが納得した国政になったら、私たちは引き上げてこっちに戻ってくる。
 これは約束だ。
 ほら、咲季ちゃん、四人で”ゆびきりげんまん”だ。」

涙は止まらなかったけど、僕の両手の小指にはたくさんの小指が巻き付いた。

シャズもロゲルも、トリシュもマナイも、そしてトルクも。

「針千本、いえ、一万本のーます!!!」

約束だよってって強く手を握って、無理矢理笑った。

「さぁ、叔父上たち
 母様は父様に任せて、急いで準備して。
 バカレオハルトの国が動いた。
 エナグラを盗りに行こうとしてる」

フロウが監視していた元エナグラに、レオハルトの国リサマールが軍隊を動かした、と告げた。
レオハルト自ら指揮を執っているなら、うちも参戦するという話しになり、マナイたちは急いで魔王国陣営として立つことになった。



そして、勝手に魔王国って呼んでました。

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