子豚のワルツ

ビーバー父さん

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暗部ワイス

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※残酷な表現等あります。
 ご注意ください



王宮で見ていたシャズとフロウ、マロは咲季が救出された事を確認した。

「フロウ、このまま索敵しとく?」

「えぐい傷持ちのおっさんに監視つけた。
 レオハルトが拾うか、別なのが拾うか。
 船は座礁寸前だし、動くだろ」

トアの父親が傷を負ったまま飛び込んだ崖下には待機していた、小さめな船があった。

「あの傷程度じゃ、死なないし
 母様を狙ってまた来るだろ」

力がある者が乗船しているはずと、フロウは考え船にも監視を付けたが、レオハルトや要人は見つけられなかった。

「どこの国か分からん。
 世界を潰す気になれば、できるけど。」

フロウの監視が届かない何かがあるのか、それの方が重要だった。

「あの船、中に魔法陣があるよ
 転移系かな?」

「それか」

「船はカモフラだね。」

またもやシャズがその言葉に反応した。

「転移系は、かなり珍しいし、それが得意なのは、隣国だ。
 マナイやトリシュの母親が行かされた国だ。」

「転移系の魔法が発動されれば分かるけど、海上で船の中は盲点だったな。」

「隣国だけとは限らないだろ
 マロ、結界張れるよな。」

「うん、海域まで拡げる?」

「いいや、ちょっと考える」

歯切れの悪いフロウにマロが、あれ?と言う顔をした。







死体の処理と、内通者の処分を兼ねてワイス達は崖近くにいた。

「支配されたとは言え、私達は訓練されているのに、内通者になったのは何故ですか?
 それと、何処と取引をしました?
 トア達ではないでしょう?」

娼館へ潜入していた者と、王宮で内通した者の二人がワイス達から尋問されていた。

声を荒げるわけでも罵倒する訳でも無く、淡々と質問するワイスに、周りは寒気を覚えていた。




それもその筈である。
拘束されて身動きが出来ない者の足の指を一本、また一本と落としていた。

「別に喋らなくても、構いません。
 喋ったところで、処分が変わるとは思えないでしょうし。
 処分が変わるとしたら、余程の情報じゃないと難しいと思いますしね」

他の者たちは、死体の処理と処分をしていた。
トルクが注意したように、シュリの遣り方が、脳漿を飛び散らせたために、かなりの苦戦を強いられていた。

辺り一面が血で染まるのは仕方ないにしても、頭半分とかはさすがに中身が飛び散って、処理するにもまずは回収をしなくてはならず、魔法でどうにかできるものでは無かった。

「ワイス様、さすがにこの処理は難しいので、ミストを使用して宜しいでしょうか?」

ワイスは肩眉を上げて、ふむ、確かに、と呟くと、炎系の魔法に長けた者を選ぶと侵入経路になってしまったのも森があるからだといい、辺りを焼いてしまう事を許可した。

焦土と化したその場に、死体だったモノは炭になり灰になった。

「さて、では植物系のものに、ここを見晴らしのいい芝地にでもしてもらい、後はこいつらの処分ですね」

「畏まりました」

部下の者たちは畏怖を持って、ワイスに頭を下げた。
そこに転がるモノの様にはなりたくなくて、また、それだけの力を持つワイスに心酔している部分もあった。

「レオハルトのリサマール国と、隣国エナグラ、それに、鳥獣国ライハン、北端の国レイシンが関わってる事は吐きましたけど。
 これ以上の情報は持っていないでしょう。」

「焼きますか?」

「この子にも親兄弟家族がいるでしょう 
 遺品として渡せるもの以外は焼失させなさい」

近しい者には裏切った末の、処刑とは知らせないように、遺品を渡し殉死したと伝えるのであった。


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