子豚のワルツ

ビーバー父さん

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全然楽なんかじゃなかった!!〔怒〕

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 ☆すみません、今日の更新遅れ気味です!
 感想やお気に入り、ブクマありがとうございます!!☆





 痛くて重くて、苦しくて、どうにもならない。


「咲季ちゃんを浴室へ運びます
 ワイス、結界は?」

「万全でございます」

 マナイが僕を抱き上げて、浴室のバスタブの簡易産室へおろすと、ごめんねって言った。

「本当なら、ちゃんと準備して、
 きれいな場所で産ませてあげたかったんだけど、
 間に合わないから、なるべく綺麗にできて負担の無い場所がここしかなかったんだ。」

「ん、ん、
 マナイにいさま、苦しいよぉ」

 グルっと中で動くのが分かった。

 内側を引き裂かれるように押し出そうとすると、マナイがもう少し我慢してって叫ぶ。

 何を我慢すればいいの?

 犬が熱くて苦しくてするような息遣いで、どうにか痛みやら苦しいのを逃がす。

 トルクが僕の横に来て頑張ってって言いながら手を握る。

 これって本当に僕が産むの?
 中がぐりゅって動いて、どんどん下へ降りていくのが分かった。
 激しい痛みだったけど痛み以上の愛しさで、耐えることが出来た。

 10回以上掛ける治癒魔法の意味が分かった気がした。
 ちょっとずつ動いて行くけど、中は引き裂かれて行くから、数回に分けて治癒を掛ける。
 でも一人だけならまだしも、これは、治癒もかなりの負担になるって分かる。

 だって最初からやり直しになるだもん。

 身体が引き裂かれる状態が続けば、死へ至るんじゃないかと容易に想像できた。
 これが楽だって言ったトルクにマジギレしそうだった。

 こんな状況なのに、そうか、トルクのお母様が亡くなった理由ってこれだったのかもしれない。
 実際、治癒魔法を掛けられたのって、トリシュとトルクしかいないなら、危ないんじゃないかと思った。

「マナイ兄さま、もしかして、これが原因って知ってたから?」

「そうだよ、私たちの母は、トルク兄さまがいたから治癒魔法が掛けられて三つ子で生まれたけど、
 普通なら一人でも大変なんだ。
 なのに、トルク兄さまは忘れちゃってたみたいだし、
 咲季ちゃんはぼんやりしてるしで、
 どれだけ心配させるのさ!」

「えっと、それ、トルクも、悪いよね?
 ふふ、ふ
 楽じゃ、ないじゃん
 ほん、と、キツイ、よ」

「咲季、頑張って、もう少しみたいだよ」

「咲季ちゃん!息んで!!!」

「ん~~~~~~!!!」

 一気につるんって出た感じがしたけど、裂けた痛みが酷くて、どうにもならなかった。

 ニューニュー、ミニューニュー

「産まれた!
 凄い、白い、よ!!
 白豹の子だよ
 咲季、ありがとう、本当にありがとう!!」」

 汚れを綺麗に産湯で落として、抱かせてくれた。

「あは、小さい
 可愛い、産まれてくれて、ありがとう」

 浴室の外で控えてた皆に、トルクがお披露目をするのにつれて行った。
 だって僕にはまだあと二人残ってるから。

 同じことの繰り返しかと思ったのに、ままならない。

 二人目は一人目より少し大きい感じがした。
 ただ、治癒を少しだけ回数を分けて掛ける分、中が多少広がってるみたいで、少しだけ楽に降りてくれた。

 トリシュが丁寧に治癒魔法を掛けてくれるから、身体が少し慣れた気がした。

「咲季ちゃん、もう少しだよ、もう少し、
 息んで!」

「んん~~~~!!」

 つるん、って出たけど、これ体力的に持たない気がする。

 うにゅーにゅーみゃーにゅー

「え?どういうこと」

「どうしたの?
 赤ちゃんに何かあったの?!!」

 気力を振り絞って、マナイ兄様に聞くと茫然とした状態で答えが返って来た。

「咲季ちゃん、この子、黒い
 黒豹だよ。」

「僕が黒髪とかだからかな、
 無事なら良いよ」

「咲季ちゃん、神様産んじゃった?かも?」

「何言ってるの、黒豹でしょ、
 カッコいい子になってね」

「う、うん、とにかく綺麗にしなきゃね」

 産湯で汚れを落として抱っこさせてもらうと、一人目より大分大きい気がした。

「可愛い、トルクにお願いして」

 一人目を連れて戻ったトルクが雄叫びを上げた。

「咲季、咲季、この子、ねぇ、この子!!」

「う、あ、三人目、早そう」

 治癒魔法が掛けられる前に、ぐいぐいと下へ降りてきてた。

「咲季ちゃん、もうちょっとだけど、この子早い
 なんで?すごく早い」

 そう、まるで自分の意志で出ようとしてるような、そんな感じだった。




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