子豚のワルツ

ビーバー父さん

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トリシュとマナイ

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可愛そうな弟たちは、あれ以来凄く懐いてくる。

「咲季ちゃん、あのね、これ美味しいから」

マナイとトリシュが餌付けしてるってくらい、何かしらの食べ物を運んでくるようになった。
ワイスさんが、僕のお腹の子の事を心配して栄養を摂らないといけないって言ったのが原因みたいだけど、それよりも色々寂しかったのかもしれない。
勝手にそんな事想像しちゃったけど、トアは追い出されたりだし、不安なのもあるのかもしれなかった。

二人はトアと違って、性格の悪い感じはしなかったけど、ちょっとだけ警戒はした。
申し訳ないけど、食べ物は少しだけ気をつけた。
彼らが口にした物と同じ物ならたべるようにした。

こちらではお医者様の様な人は存在しなくて、治癒魔法で治療するのが当たり前だったから、何が治癒魔法でいけるのか、前にトルクが毒なら厄介だと言っていたのを思い出したからかもしれない。

僕も魔法の勉強をしないとダメな事は分かっている。
悪意や敵意に弱すぎるから。

「トリシュ様とマナイ様は魔法って得意ですか?」

「攻撃魔法なら一通りは使えますよ。
 マナイは支配系が得意だし、私は治癒系ですね。」

「僕も、練習したいのですが、教えて貰えますか?」

「トルクお兄様が良いって言ったら、教えるよ!
 咲季ちゃんが自分の身をちゃんと守れるようにね。」

トリシュはどちらかというとおっとりしたタイプで、マナイは人見知り?な感じだった。

「マナイ、咲季ちゃんに支配系の魔法見せてあげたらどうかな?」

「トリシュも一緒なら、いいよ」

二人は僕に簡単なマリオネットを作って見せてくれた。

「咲季ちゃん、人形になる物は何でも良いの。
 例えば、こうやって召喚したり、作ってもいいの。
 あとは、怖いけど、誰かの一部を入れると、その入れられた人も操れるから、髪の毛一本でも取られたらダメだよ?」

マナイが教えてくれたのは、呪いの藁人形の話みたいだった。
 
「その支配からは逃げられないの?」

「体の一部だから、効力に差があって、心臓に近ければ近いほど支配は強くなる。
 だから、支配の届かないところまで一度逃げてしまえば、同じ一部が繋がる事はないから、もし、そんな事が起きたら、とにかく逃げて?
 これね、トアがよく使うから気をつけて欲しい。
 私たち、咲季ちゃんを凄く傷つけた時、怖くて何もできなくて、泣いてばかりで本当にごめんね、ごめんなさい。」

目を真っ赤にして涙を堪えてるマナイは、本当に心配をしてくれているんだ。
隣でトリシュまで涙を堪えてた。

「咲季ちゃん、なんでそんなに優しいの?
 トルク兄様が酷いことしてたのに、何で許せるの?」

「トリシュ様、マナイ様
 僕だって本当は怒って泣いてたんですよ?
 知ってるじゃないですか?」

「うん、だけどあれは、トアが悪い
 それを止められなかった私たちも悪いんだ。
 もっと怒ってくれて良いんだよ?」

「トリシュも私も、咲季ちゃんの味方だから!
 絶対裏切らないから!
 だって、最初から優しくて可愛くて、その好きだったから
 この前、トルク兄様に抱っこされてた子豚の咲季ちゃんは、物凄く可愛くてそっくりなお人形を作りました!
 ほら、ね」

マナイが空間魔法から出して来たのは、僕の子豚の姿にそっくりなぬいぐるみだった。

「これ、可愛い」

「ね、でしょ?
 トルク兄様には内緒ね?
 独占欲強いから、絶対ダメって取られちゃうから。」

「かも、ふふふ」

三人でいつか子豚の人形を売り出そうってとこまで話が弾んだ。







最近はトルクが僕を起こすことで一日が始まっていた。

「おはよう、咲季」

「ん、ん、お、はようです
 トルク様」

最近は寒いから半獣化してくれてるので、本当に嬉しいし頼もしいです。

「お目覚めですか、咲季様」

「ワイスさん、おはようございます」

「今日は何が召し上がれそうですかね?」

「こればっかりは…」

僕はなんだか遅いつわり状態で、皆と同じ物が食べられなくなっていた。

「咲季、食べられるものを全部試してみたらいい」

目元にキスをしてくれながら、トルクが身支度をした。
その時に、昨日の話しをトルクにした。

トアが支配系の魔法が得意なら、それに対抗する手段として、マナイ達に魔法を教わりたいという事を承諾してもらうお願いをした。

「トアの動向は監視しているが、確かに、咲季は魔法を使った事がなかったな。」

「ね?お願い」

「危ない事はしない、体調がおかしければすぐ横になる事、それと、様を取ること。」

「さまをとる?」

「咲季、目覚めてから私の事、トルク様って呼んでるの気づいてない?
 なんか、喧嘩しっぱなしみたいで私は嫌だなぁ
 仲直りのお約束は?」

「ごめんねって言ったら仲直りのキス」

大袈裟に拗ねるトルクに、ごめんね、トルクって言いながらキスをした。

「咲季、助けが欲しいときはいくらでも叫ぶんだよ?
 わかった?」

「叫ぶ練習しなきゃ」

そこから?って言いながら、皆んなが待つ食堂へ行った。
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