上 下
50 / 116
天界よいとこ一度はおいで

赤い翼

しおりを挟む


赤い翼を隠す様に、大きい白い翼を広げた。肩甲骨から生えた一番大きい白い翼と、そのすぐ下から生えた赤い小さめな翼。
腰あたりから尾羽の様に生えた翼の6枚が、俺の翼だった。

ちゃんと神経も繋がっているらしく、全部が自在に動かせた。

「イズくん
 翼の色だけど、何にも問題なかったよ
 むしろ、神力が凄いくらいで
 胸を張っていい。
 それに、君は翼を仕舞えるようだし。」

ウリエルをラファエルは帰し、俺にだけ話した。
神力が強くでも、彼らにとって異端は異端でしかない。
綺麗な異端なら赦せたのだろうが、赤い翼は恐怖ですらあったのだろう。

「頂いてたお仕事を、そのまま継続できますね。」

にっこり、笑ったつもりだった。

本当は気味が悪いだろうに。
ラファエルはそれ以上の言葉を出さなかった。
翼が生えるまでは周りが優しくしてくれていたのに、赤い翼や6枚持ちとなったら、寄って来なくなった。
正直なこった。

綺麗や可愛いから、寄っていじってその周りにいる優越感とかなんだろう。
逆に前例のない赤い翼に6枚持ちは畏怖、もしくは嫌悪なのだろう。

記憶にある人生の中でも、覚えがなくは無い。
親からの暴力で、顔が腫れたり傷がついてたりしたのを見た連中は遠巻きにした。
ヒソヒソと喋り、汚いものでも見るように目を背けた。

「ラファエル様
 色々ありがとうございました。
 帰りますね」

翼が生えきった事で傷もいきなり修復され、痛みがなくなった。

俺に病院が必要ないように、この天界には異端な天使も必要ないんだ。

「お元気で」

そう挨拶を交わして、生まれて初めて自分の翼で飛んだ。

次元の違う天界から、人の世界に跳ぶために歪みをみつけ、まるで堕天する様に飛び出した。
まあ、パスポートのない出国みたいなもんだな。
大天使なら人間を装って地上に降りる事もできるし、目眩し的な力もある。

人間に紛れて生きよう。

ウリエルに好きと言えた事、好きと返してもらった事で、十分だと言い聞かせた。





生き方を知っている。
人間だったから、都会の深夜は隠れて生きるのに適していた。

個人経営の店なんかは結構融通がきくから、辻褄を合わせるのに、大したことは無かった。
このアッシュブルーが目立たない国を選んで、納税者になるようにそこは力で改竄やら色々させて貰った。

北欧地方にも住んだ。
色んな意味で優しい人がいたが、やはり日本が一番良かった。

外国人としてちゃんと手続きを踏んだ。

そして、バーレスクみたいなとこで、働き始めた。
外国人ダンサーとして。



それは、天界を出てわずか一年の事だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫乱少年の性活

こうはらみしろ
BL
『ボクはあの日、淫乱になった…』 ある日、格は兄の淫らな行為を見てしまう。 そこから格の人生は大きく変わっていく──

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

EDEN ―孕ませ―

豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。 平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。 【ご注意】 ※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。 ※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。 ※前半はほとんどがエロシーンです。

18禁ファンタジーBL創作短編集

結局は俗物( ◠‿◠ )
BL
(12/25…オルタナティブな季節 12話 更新) 「カラスは我々を見張り、紅石は我々を射抜き、神は無言」 次の章完結予定まで放置。暴力・流血表現・女キャラあり多し。銀髪青年受・黒髪少年攻多し(たまに逆)。あとは章ごとに注意書き。エッセイにてプロット・ネタバレ等掲載しています。表紙・イメージイラストはイラストブックにて掲載。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

処理中です...