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天界よいとこ一度はおいで
鼬の最後っ屁
しおりを挟む眠りに落ちるときに、そっと部屋を出ていく二人が見えて、そのまま意識を手放した。
朝、起きて結局食べられずに残した夕飯のトレーを戻しに食堂へ行くと、あの面倒くさいハルカが自慢げに自分が調理をしたからだと、一説ぶっていた。
「まずい食材でも、心を込めれば美味しくなるし、できるんだ」
ふーん、そうなんだ。
別に何言われてもどうでもいいので、トレーを返してさっさとその場を後にした。
絡まれなくて良かった。
昨日の持ち場へ急いでいくと、すでにカミツキガメ上司が来ていた。
この人、ちゃんと寝てんのかな?
「おはようございます。
今日も良いお仕事ができるよう、心を尽くします」
挨拶をすると、ちょっといつもと違う反応だった。
「おはよう。
今日も頑張りなさい。
ちゃんと、見ていますから」
「? はい。」
あの嫌味というか、噛みついてくる人がどうしたんだ?
逆に、この人がこうだとあの面倒くさい奴が余計に絡んできそうなんだど。
「ところで、前に洗濯をした時、君はどうやってシワを伸ばしましたか?」
「はい、平らな石をお湯で温めてそれを持ってシワを伸ばしました。」
「素手で、ですか?」
「はい、それは仕方なかったので、素手で」
「手を見せなさい」
「えっと、今、水膨れが潰れちゃって汚いから、
見ない方がいいですよ」
「それなら治療を」
「いえ、もう大丈夫ですから」
「では、本当はしてないのではないか?」
「もう!大天使様の為に言ってるんですけど!
はい!これでいいですか?」
実は洗濯をやり直したりしてるから、手のひらは酷いことになっていて適当に布を巻いてやり過ごしていた。
家畜の世話で、道具を使ったりするから、治り的にはイマイチでだいぶ汚い。
「これは…!」
「満足しましたか?」
「治療を受けなさい」
「大丈夫ですよ、すぐ慣れますし
きっと、もうすぐ楽になりますから」
「だが!」
「大天使様、俺、もう少し頑張らないと
皆さんに美味しい鶏を提供できないんで
作業に入りますね」
吉田くんも今日はいなかった。
とにかく、鶏は一人でやるって決まったのだから、手早く終わらせないと。
しかし、カミツキガメ上司は一体どうしたんだ?
今まで、出来てないとかの指摘しかしなったのに。
治療とか今更だし、あと少しで楽になれる気がしてるんだ。
だから、今はこいつらのために頑張る。
ヒヨコは足元に集まるし、雄鶏も雌鶏も俺の後をついて回る。
インプリンティングされてるわけでもないのに、ついつい可愛くて抱っこしたりしていた。
作業の途中で、ミカさんが現れた。
「イズミちゃん、体、大丈夫?
ちゃんとご飯食べた?」
「昨日はありがとうございました。
もう、大丈夫ですよ。
しっかり眠りましたし」
「もし、何かあったら言うんだよ?」
「ありがとうございます」
天界の全ての食材はどのくらいあるのか分からないけど、鶏だけでも相当いる。
鶏糞は作物のための肥料にするので、それを集めて運ばなければいけないし、卵に黄身を黄色くさせるためにトウモロコシやサフランの餌を混ぜてあげたりと、意外と、かなり大変だった。
いわゆる地鶏の放し飼いみたいなもので柵には入ってるものの、自由だから卵を産む場所も決まってないし産んだ卵を宝探しのように探すのがまた楽しかった。
ヒヨコも増やさなきゃいけないし、農場ゲームみたいな感覚で、一日中回っているような感じだった。
一部で、鶏たちのけたたましい鳴き声が上がった。
急いで、そっちへ行くとまた、あのハルカが数人の仲間と来ていた。
「おい!
何やってるんだ!」
「お前、今日の夕飯の調理へ回されるらしいから、
こいつらを蹴って不味くさせておこうかなって。」
ニヤニヤと笑う醜悪な顔に反吐が出そうだった。
「やめろ!
鶏は関係ないだろう!」
「そうかもね、でも。お前が気に入らないから。
ウリ様に近づくなって言ってるじゃん!」
「ウリ様ってなんだよ!
ウリ坊なら、どっかにいるって言ってたぞ
大体、ウリ坊の飼育係なんかしたくないっていってるだろ!!」
なんか、醜悪な顔を真っ赤にしてプルプル震えながら、なんか言ってた。
怒鳴りながら殴ってきたから、何を言ってんだか分からなかった。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!」
これがふじこるってやつか?
ミカさんとカミツキガメ上司が駆け寄ってきた。
あ、もう昼の巡回だったかな?
「ハルカ!
何をやってる!?」
「ウリ様!
助けてください!
また、この人が!」
「なぜ暴力を?」
「してません。
いきなり殴りかかられたのは、俺です」
「鶏をまた蹴ったりしていたから」
「蹴ったりしたのはお前たちだろ!」
「食材を不味くしてやるって!」
また、こいつの言う事を信じるんだろうな。
すると、ミカさんがあいつに提案した。
「では、ハルカ、君が今日も夕食を作ってください。
不味い食材でも心を込めれば、美味しくできるのだろう?」
「え、あ、」
「できるんだろ?」
ハルカとそのグループの顔色が悪くなった。
「さぁ、今君が言った、彼が蹴った子たちを持って夕食の支度をしなさい」
ミカさんは否を言わせぬ強い口調で、蹴られた鶏たちをそのグループに持って行かせた。
「イズミちゃん!!
大丈夫かい?」
「ありがとうございます。
蹴られた子たちが可哀そうでした」
カミツキガメ上司が良く黙ってたなぁ。
いつもなら、かなりぶっ飛んだことを言い始めるのに。
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