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しおりを挟むテイトの神事の練習が続き、トウカから様になって来たと言う評価を得て、ようやく神事の日程を決める事になったのは、屋敷に賊が入る事件から二か月ほど経った頃だった。
「旦那様、お伝えしたい事が至急ございます」
見習いではなく、執事が顔色を変えてザクロの執務室へと訪れた。
「何があった?」
「ジョスクが来ました」
ザクロは目を通してた書類から顔を上げると、眉間に皺が寄り明かな嫌悪をにじませた。
「追い出せ、それくらいお前の采配で分かっているだろうが」
「それが、そ」
「何だ、一体!」
バンッと手に持っていた書類をデスクに叩きつけながら、歯切れの悪い執事を一喝した。
「ジョスクが旦那様の子を妊娠したと言っております」
一息に吐き出した内容は、ザクロにとって衝撃的で正直なところ、歓迎できない内容だった。
そして、脳裏に過ったのは、テイトには知られるわけにはいかない、それだけだった。
「ジョスクをこの屋敷から出して、別な部屋を与えろ。
そこで話す。
使用人には箝口令を、これ以上アイツの存在を知られるな」
「畏まりました」
執事に緊張の色が走り、深く頭を下げると素早く周りの使用人たちに指示を飛ばしながら、ジョスクを待たせている場所まで駆け抜けていった。
「くそ、なんだと? 妊娠するはずがない、今まで避妊はきっちりしていた。
ではどう言う事だ?」
独り言を呟くには多少大き目だった。
それを聞きつけたのは風の子らだったことで、テイトの耳に入る事は当然だったが、ザクロはその事に気づけないでいた。
「旦那様、手配が全て整い移動させました。
場所はこちらになります」
執事が静かに住所の紙を渡した。
「これから出る」
「お気をつけて」
「それと、新しい医者もそっちへ送ってくれ。
あと、アイツの背後を調べ上げてもらえるか?」
「御意、必ずや暴いて見せます」
これまで垣間見せていた裏の顔をした執事が、いつの間にか控えていた部下を連れて部屋を出て行った。
その瞬間、聞き覚えのある声がザクロを責め立てた。
「お前!テイトを泣かせたな!」
先ほどの独り言を聞きつけて、風の子らはザクロに隠れる様にしていたが、我慢しきれずに現れてザクロを問い詰めた。
「まだ泣かせていない」
「テイトは泣いていた! ここから出て行くって!」
「どう言う事だ? 何でテイトが出て行くと言い出した!!」
ザクロの怒りが瞬間的に沸点に達していた。
その気迫に風の子らがたじろぐと、更にザクロは鬼気迫る表情で詰め寄った。
「おい、いくら風の神とは言え、人の運命に介入してはいけないんだよな?
こんな些末な出来事を大きくしたのは、風の神って事だよな?
返答如何によっては、お前らに罰が下るんじゃないのか?」
人の運命に係る事に介入すると言う事は、神の理を越えてしまう事になると言う事をテイトを助けた光の神で重々理解していた。
「これは、運命じゃない! だから」
「運命だ、テイトは俺の本当の伴侶で、その間に亀裂を入れようとするのは神の理から逸脱してるよな?」
そう言われて、風の子らは顔色を変えた。
「で、何をしたんだ?」
「テイトにここにいた悪い奴が来て、赤ん坊がいるみたいだって言った」
「くそ!!! お前らは人知を超えた力があっても、中身は五歳児か!」
見た目通りだな、と付け加えテイトにちゃんと話すから、出て行かないように伝えろと言って、ザクロは最初の目的地であるジョスクに与えたアパートへ向かった。
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