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しおりを挟む「私がそうさせてしまっていたんだ、すまなかった。
お前は私の伴侶なのだから、使用人にやらせるか執事に指示を出させなさい」
ザクロがテイトに掃除の手を止めさせて、ダイニングへ連れて行くとテイトが下ごしらえした食材を使った朝食が運ばれて来た。
「キッチン担当に、下ごしらえは下男かシェフ見習いに刺せるように伝えなさい」
「旦那様、今朝はまだ下ごしらえをしていません!
掃除も、もう、殆ど済んでいて、今日は何もしていないんです!」
テイトが目覚めた時には既に下男やら使用人が働き始めていた。
ただ、顔ぶれは見た事ある人が多かったけど、仕事内容が逆転していた。
「そうか、ならば問題無いな」
そうは言ったものの、テイト自身には問題が大ありだった。
今まで自分の存在は空気みたいで良かったけど、する事が無ければここには居られないような、そんな焦燥感に駆られていた。
「テイト、お前は役割が無いと居られないと思ってないか?」
「へ? あ、そうです」
何で分かったんだ、と言う表情にザクロは少しだけ笑うと、お前は伴侶だろ?と言われた。
「伴侶って何をすれば」
「この屋敷の内政を取り仕切るんだ。
例えば、使用人たちの働きぶりで給料を決めたり、どこか不具合があればその修繕費を算出したり、手配とするとかな。
分からなければ、私と書斎で勉強しなさい」
勉強と言う言葉に、テイトは少なからずワクワクした気持ちを持った。
「へへ、旦那様、僕、ちゃんと勉強した事ないですけど、頑張ります!
凄い、うれし」
手をモジモジさせながら、嬉しいと言うテイトを今すぐにでも抱き上げて、自分のモノにしてしまいたかった。
戸籍上はちゃんとした伴侶だが、テイトの事情を考えるとトウカと同じ神族として扱った方が良いという結論をザクロは出していたし、風の子たちの話で神事として一度風の神に嫁すという手続きを踏まないといけない事にも気づいていた。
「テイトはしっかり食べなさい。
そんなにガリガリでは心配になる」
「でも、そんなに食べられなくて……」
胃が小さくなっているからだと思ってはいたが、あまりにも少なかった。
「少しで良いから、回数を増やそう。
いつでもつまめるように、何か簡単なものを出すように」
給仕係の使用人に言うと、頭を下げてその伝言を厨房へと伝えに言った。
そしてお弁当の様に作られた、コンパクトなピクニックバッグを持って、働きたがるテイトを宥める様に書斎へ連れてくると、帳簿の見方を教えた。
算数が出来るのは強みだった。
あのジョスクですら足し算引き算程度で、掛け算割り算が出来ると言う事は、損益の計算が出来ると言う事だった。
ピクニックバッグから時々、小さな毬状の寿司や、クラッカーに乗せられたチーズ等を口に入れさせては、帳簿の整理をさせて内情を把握させた。
テイトの気が済む様に体を動かす仕事をさせても良かったのだが、ザクロの気持ち的にテイトを誰にも見せたくない、と言う独占欲が勝った結果だった。
テイトが伴侶として屋敷を仕切るのに時間はかからなかった。
ほんの数日で屋敷内の事は掌握し、使用人の配置下男の使い方、下働きへの教育と意外な采配を振るった。
この屋敷に嫁いで来てから、ほぼすべての仕事に手を出していた事で、手が足りない部分や改善しなければいけない部分を把握していたからだ。
そして、持ち前の前向きさもあり、使用人に昇格した子らからは慕われ、下男や下働きに降格した者はこれまでの行動を見られることもあり、今のところはちゃんとテイトの指示を聞いていた。
今のところは、である。
人はそう変わらない、とテイトも思っていたからだ。
「旦那様、情報が集まりましたのでこちらにお持ちいたしました」
テイトが屋敷内を確認している間に、執事はザクロの元へ神族の戸籍に関する情報を差し出した。
トウカの件はテイトに教えるのは救ってからだと、ザクロが決めていてその内容が残酷かもしれなかったからだ。
「やはりな。
トウカ殿は神族の何者かによって、公爵に引き渡されたんだな」
「そうでございましたか」
神族の戸籍は死亡として出されていて、抹消されていた。
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