神獣ってモテますか？(モテないゲイは、魔法使いを目指す！@異世界版）

異世界は続くよどこまでも

21

「アキ！」
「アキ様！」

口々に俺の名前を呼ばれた。

夢を見た。
随分小さい頃の夢。
お母さんを見つけて、たくさん話せた。
お母さんと一緒に来たはずなんだけど、夢のままだったのかな。

「ぁ、」

喉がくっついた様になっていて、声が出ない。

女の人の声が聞こえる。
懐かしい、夢の中の声。

「亜希！
　亜希！
　お母さんよ！
　分かる？！」

寝過ぎていて、体が動かず顔だけをなんとか向けると、夢の中のお母さんがいた。

「ぉ、　　ぁ　さ　　」

夢じゃなかった。
お母さんを連れて来れたのは、夢じゃなかったんだ！

動かない身体に涙が滔々と流れて、視界が霞んだ。

ちゃんと声も出せないけど、良かった。


執事のカスティアさんが、俺が眠り続けていたことを話した。

「アキ様、3ヶ月も眠り続けておりました。
　麒麟様の魔力で体を保っていましたが、
　それも難しく、
　体を凍らせて魔力の消費量を最低限に保っていました。
　温まるまでは、動くのも難しいかと。
　すぐに、湯の準備を致しますので、お待ちください」

カスティアさんは部屋を出て行った。

少しずつ体に魔力が取り入れられ、巡るようになると何とか声が出せるようになった。

「おか、あさ、ん
　よ、か、った」

泣き崩れているお母さんに肉球の手を握られ、ちょっと恥ずかしかったけど握り返した。

「無理に喋らなくていいから。
　亜希は、元気になることだけを考えて、ね」

うん、うん、て一生懸命に頷いた。

周りのみんなが、泣き笑いしてるのを見て、声にならない声でごめんなさい、と呟いた。

「アキ様！」
セルゲートがお母さんと一緒に俺の手を握る。

「ら、どる
　ごめん」

「アキ様、まだ私をラドルと呼んで下さるんですね！
　早くお元気になられて、私たちと帰りましょう」

「そうだぞ、アキ
　早く帰って、私と真名を交わそう」

神様、面白可笑しく言ってるけど、その表情は泣き笑いだった。

「おれ、そ、んなに？
　死に、そ、う？」

『アキ様、九割死んでました。
　その一割すら、維持できず、
　我らの魔力を与えても、受け取らず。
　凍らせて維持するしかなかったのです
　もう少しで、本当に消えてしまうところだったのですよ！！』

イーリスが酷く厳格な表情で俺を窘める。

「ごめん
　チカちゃん、ありが、とうね
　スズキ、くんもありがと
　いーり、す
　こんちゃん、大変なこと、させて、ごめん、ね。」

『コン殿は、アキ様の命令を頑なに守っておりました』

「いい、んだよ
　おれ、が、ぜったい、言っちゃ、ダメ、って」

コンちゃんに笑いかけると、嘴で俺の頬にスリスリしてくれた。

「ふふふ」

こんなにたくさんの家族がいたじゃないか。
夢の中では家族なんかいないってずっと泣いてた気がする。
夢だからか、あんまりはっきり覚えてない。

「アキ、私がお前を独りにしたから
　本当に悪かった。
　自分のプライドが先に立って、お前が寂しがっていたのに
　ちゃんと言葉に出してくれたのに、
　蔑ろにした。
　お前が目覚めない間、どれだけ助けられ
　癒してくれたのかを知った。
　お前が歌ってくれていた間は、少しの睡眠でも十分癒されていた事に気づいていなかった。」

「……」

「アキ？
　私が、分かるか？
　夢の中では、思い出してくれたではないか！
　アキ！
　私は、本当に取り返しのつかないことをしたのだな」

「そうだな、オプスクリタス　
　お前は、悪すぎた。
　これに懲りたら、二度とアキを独りにするな。
　今回は、この城の中で、九死に一生を得たが。
　もしこれが、人間の手引きであれば、
　二度と、アキには生きて会えなかったぞ
　バカめ！」


そこへ、お湯の準備ができたことを告げられ、誰が一緒に入るかでまた揉めた。
でもさ、俺を抱きしめる腕も、飛び込む胸も、タロー様しかいないんだよ。
さっきは、タロー様の謝り方がちょっとね！
もっとちゃんとして！ってことで。

「タロー、さま、
　連れて、いって」

「アキ～～！！！！」

泣くのか。　
泣きたかったのは、俺だけど。

「おかあ、さん、まって、てね」

「仕方ないわね、婿さん
　亜希を不幸にしたら許さないわよ！？
　伴家恒例の制裁を受けてもらうからね！」

「はい！　
　母君、胆に銘じます！！」

「よろしい
　さっさと、亜希を元通りの綺麗な子にしてきて頂戴！」

凄い勢いで抱き上げられて、浴室へ走っったタロー様は使用人のみんなに笑われてしまった。

「アキがいるなら、笑われようが、貶され様が、どうでもいいさ！
　ごめんな、アキ。
　また、笑ってくれるか？」

「はい。」