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ひとみは二つ返事で、探偵事務所へ急いだ。

さとる君が拉致られたなんて!と。
正直、ここまでさとるの身が危険晒されていたとは想像していなかった。

さとる自身というより、本田の家が大きすぎて、そのせいで襲われたのだと思っていた。

ところが、今の連絡でさとるが拉致られて、あの探偵が絡んでる可能性があると。

「くそ!」

自分は何の力もなくて、側にいることもできない。
それが憤りになり、自己嫌悪になった。





5分程で、探偵事務所に着いた。

「すみません、先程お電話した太田と申しますが、ご相談をお願いしたいのですが。」

男らしく、訪問客を装った。

そこそこの従業員がいるらしく、ドラマの探偵社のイメージとは違っていた。

「はい、ご紹介がある方でしたよね?」

受付の女性に、アフィニティの本名を出して指名した。

「すぐ参りますのでお待ち下さい。」

打ち合わせルームに通され、すぐに現れた。

「失礼します、私が、」

言い掛けた時に、素早くひとみが拘束した。
後ろに回り、ヘッドロックした状態で凄んで見せた。

「お前、さとるくんのストーカーの協力者だよな?!」

「え、ちょっと!」

慌ててもがく相手に、更に締めていく。

「静かにしろよ、笠木って奴の居所、教えてもらおうか?」

「!!」

「早く!
 さとるくんに何かあったらこの会社も、告発してやるからな!」

「さとるって、カイくん??」

「早く!」

「笠木さんが!やら、かした?」

「そうだよ、拉致った!」

「分かった!
 彼の会社兼住居を教えるから!」

ひとみはスマホを取り出すと、侑士への発信ボタンを押した。

『もしもし!』

「抑えた、いまから、奴の住所を話させる」

首を拘束したまま、スマホをアフィニティの前でスピーカーにした。

「すみません、こんな事になって」

『いいから早く!』

会社兼用の住居の住所、奴の番号を教えて、自分が時間を稼ぐと告げた。

いま、侑士達がいる場所から20分程で着く場所だった。





ひとみに、深々と頭を下げて、すぐに笠木の番号を鳴らした。
事務所を出て、車にひとみと乗り込むとスピーカーのままで、運転した。

何回かのコールで、笠木が出た。

『もしもし?』

「あ、俺だけど、時間空いたから今から行くねー」

極力明るく話すのを見てると、ただのクライアントでは無いのが分かった。

『いま、取り込み中だわ
 これから、天使ちゃんと天国の様なセックスするからさー』

スピーカーで聞いていたひとみは、吐き気がする様な怒りで震えた。

「えー、もう、向かってるし~!
 じゃあ、混ぜてよ!
 俺も天使ちゃんとヤリたいわ」

『えー、まあ、いっか
 天使ちゃん、きっと二本くらい入る様に開発されてるっしょ。
 入らなくても、突っ込むけどね
 ぎゃはははは!
 早く来いよ、30分だけ待ってやるよ
 それまでに、穴を緩めといてやるから、一気に突っ込もうや!』

「わかった、あと10分くらいで着くから、待っててよー
 絶対だからね!
 一緒に突っ込んで、鳴かせるんだからねー!」

『お、10分か、なら早く緩めとかないとな!』

「やだ!
 俺も、緩めるのやる!
 だから、待て!って!」

おかしい言動の笠木をなるべく刺激しない様に、電話を少しでも長引かせる様に。

「もうすぐ着くよー
 いま、天使ちゃん、どうなってんの?」

『いま、マッパにしたとこ、傷がなー
 結構あってさー
 上書きしなきゃ、ダメじゃね?
 あのクソ、下手な傷にしやがって』

ひとみは聞いてるだけで吐き気がした。

上書きと言うことは、更に傷を増やそうとしているのか。

焦る気持ちと、怒りと、最悪な事態を想像して、体が震えた。
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