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安心しきってたんだ。




敷地は広くて簡易裁判所?とかもあるし、いろんな人が歩いてた。

出てちょっと行った場所で、まだ、聞きたいことがあるって引き止められてすぐ戻って欲しいようなことを言われた。
こんな場所だし、急いでるって言うし、何回も来て見知った場所だったし、俺だけ走ってその人の後について行った。
長目の前髪とマスクと眼鏡で分からなかったけど、なんとなく見知った顔のような気がして何も疑わずについて行った。

「すみません、既にほかの方が待合にいらっしゃるので、こちらから入ってくださいますか?」

確かの他の人と顔合わすのはちょっと、だもんね。

建物の外側を回ろうとしたところで、衝撃を受けて意識が飛んだ。


これ、やばい。






知らない場所で目が覚めた。

「ど、こ?」

どこかの部屋。
ベッドに寝かされていたみたいだ。

ともり目が覚めた?
 これからは、俺が幸せにしてあげるからね。」

笑顔を見せるさっきの眼鏡とマスク男がいた。
その下から見えた顔は、俺より上に行った男。
俺の自尊心や自己評価や、全てを棄てるきっかけを作った男。

「!!
 …笠木!」

「俺がプロジェクトで海外に行ってる間にいなくなっちゃうし。
 連絡つかないけど、すぐには戻れないし凄く心配したんだよ?
 会社も辞めて、番号も変えちゃって。
 実家に帰るって言って辞めたでしょ?
 だから、こっちの方で探偵に探してもらっても、居なくてさー
 海外からだと探偵との連絡も中々上手くいかないし。
 探偵はさ、まだ東京にいるって言うからアパートにも行ったけど、居たのは伴のお母さまでさ。
 留守番だって言って、帰って来ないし。」


あぁ、事故った頃か。


「いつの間にか、アパートも引き払って次に見つけたのは、ニュースでだったよ。
 伴の名前なんかは出なかったけど、加害者の奴、調べてもらったら本田一志ってのに簡単に行きついて、すぐ分かったよ
 本当にムカつく!
 色んなケガも、全部、そいつの所為じゃん!
 病院は見舞いもいけないし!
 会わせてもらえない理由も、今は教えてもくれないし!」

 
そっか、記憶失くしてた時は、一志さん以外会わないようにしてたんだ。


「や、めて。
 前はそんなんじゃなかったよ、どうして?」

「伴が、俺の前から居なくなったからだろ!!
 退院するの待ってたのに!
 本当ならこんなに時間をかける気なかったけど、海外と行ったり来たりじゃあね。
 時間がないし、伴を迎えに行ったらずっと一緒にいるためにね、自分で会社始めたよ
 だからもう、伴は外にでていかなくていいから」

なんで、みんなこんな風になっちゃうんだろう?

「探偵から聞いたよ、このこめかみのタトゥーの理由もさ。
 消してあげるからね。」

「調べてもらった探偵って」

アフィニティさんの名前を出すと、そうだって。

あー、だからか。
タトゥーの理由も、知られてたか。

とにかく時間を稼いで置けば、GPSで海江田さんたちが見つけてくれる!

「笠木はなんで?
 俺、不細工だし仕事で絡んだのだって、入社して1年くらいじゃん」

「1年だけじゃないよ、伴。
 大学だって一緒だったんだよ」

え?うそ。

「知らない。
 大学の時だって、話したことなんかないよね?」

「話したことないよ。 
 でも、ずっと見てた。
 だから入る会社も一緒のところにしたんだし」

「もしかしたら違うとこ行ってたかもしれないのに?」

「それは大丈夫。
 だって、代わりに断っておいたから」

おい!
何てことしてくれてんだよ?!

「お前に今まで散々振り回された結果がコレ!!!?
 俺さ、一志さんたちに出会ったから、まだ、捨てたもんじゃないって思ったけど、
 仕事の内容だって、最初は殆ど俺がやってたじゃん!!
 何なんだよ?!」

「だから、俺が代わりに表に出てれば、伴は誰にも見つからないじゃん?
 俺だけが伴の優秀さとか、可愛さを知ってればいいんだよ」

「俺の人生も、俺のプライドも、全部お前が砕いてきたんだな!!?
 許さない!
 絶対に許さない!」

「俺のものになる為の道のりだったんだよ。
 それに、ケガさせたりしたのだって、俺はそこまで頼んでないのに!
 佐代子の奴が俺に本気だとか言い出して、本当に参ったわ。
 ごめんな、あのバカ女が、嫉妬に狂ってくそみたいなやつ使ってさ。
 俺は、ただ、お前があの店にも、本田の家からも出て行かざる負えないようなことになればいいって言ったんだけどな。
 まぁ、佐代子も可愛い女だったな、最後まで警察に、俺の名前は出してなかったから助かったけどな。
 でも、こうやって考えたら、もっとどっか壊しておけば、一生俺のそばに置いておけたんだよな」


あの、事件の真相ってこれなの?
佐代子ってのは、嫉妬に狂っただけだったの?
それでも許される事じゃない!
一志さんも、侑士も、笙野のせいでどれだけ傷ついてきたか。

「笠木、何で笙野と繋がってるの?」

「会社起ち上げるのに、色んな物件見てたら、管理会社のビッチが笙野の家の親戚筋だったんだわ。
 町議会議員でも、会社起ち上げには大いに役立ったよ。
 あのビッチがうまく本田一志を誘惑して別れさせてればよかったのに。
 この顔とそれまでの実績のおかげでね」

こいつのせいで、俺は体も心も壊されそうになったんだ。
ぜったい許さない!


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