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しおりを挟むお店に入れたのは、間違いなくこの内装を変えたせいだ。
もしあのままなら、多分、もう2度とこの場所には帰れなかった。
床をコルク材にして暖かみを持たせて、壁は自然石のようなゴツゴツ感を出した石タイルで重厚さがあった。
これ、俺が転けても、怪我しないようにコルク材にしたんだと。
そんなドジっ子属性はありませんから!
みんなが、声を上げて笑う。
「あの、ね
俺、ここに帰ってこれて良かった。
みんなと、笑えることがで、きて
すごく、すご、く
しあ、わ、せ、だよ」
コルク材の床が、所々、色を濃くし始めた。
何回泣いたか分からないけど、嬉しいって実感で涙が止まらなかった。
だから、一志さんを抱きしめた。
一志さんに、やっと自分から抱きしめに行けた。
おでことおでこをすり合わせて、目を見つめると、自然とキスをした。
舌を絡め合えるキスが、幸せのバロメーターだったから。
侑士が相変わらず、俺も俺もって言う。
「もちろん、侑士もだよ、ありがとう」
ぎゅうって抱きしめて、俺の顎を掴んで深くキスをした。
噛みつくように、全部を飲み干すように吸い上げられた。
体が火照る。
お義父さんが自分の口に人差し指を当てて、ニヤっと笑う。
一志さんをスマートにした仕草が、年季を感じる。
「お義父さん!
好き!」
少し屈んで手を広げてくれるから、そこに飛び込んだ。
高い、高いをするみたいに、抱き上げてくるけど、幼児じゃないし。
身長は、中学生並かもしれないけどさ。
お義父さんは、長くゆっくりくちづけた。
確実に性感帯を捕らえる所が、スケベ紳士なんだろうな。
海江田さんには、ほっぺにチュウをした。
「はっはっは!
子猫のチュウだな!」
子猫じゃないけどね!
円陣を組むみたいに、みんなからぎゅうってされて、幸せだった。
「みんな、ごめんなさい。
色々心配かけて。
死んだお父さんからも、怒られちゃったから。
人の痛みがわかる人間になります。」
お義父さんは抱きしめて、大丈夫っていっぱいキスしてくれた。
一志さんと侑士、海江田さんは真っ青になってた。
「聞いてないけど?
死んだお父さんに怒られたって、どうゆう事?」
「え?
心臓が止まったらしくて、その時、お父さんから、来るなって。」
三途の川って言うけど、川無かったよ?
「さとる!?
死にかけたのは聞いてたけど、
心臓、止まったの聞いてない」
「だから、死にかけたんじゃないの?」
生きてるんだし。
お店はをすぐにでも始めたいと思ったけど、準備が足りないって言われて、もう少しあとになるようだった。
また、エレベーターに乗って居住階に行かなきゃ行けないんだけど、やっぱりエレベーターはダメで今度も侑士に抱っこされた。
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