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手が使えないから、後ろに下がるのも出来ず、お義父さんがなんとなく、距離を詰めて来た。

「あ、あの、服着ないと風邪ひいちゃいます!」

「だから、あったかくしないとね。」

下のズボンを脱いで、腰に大判のバスタオルを巻き付けた姿に、見惚れてしまった。

ダメな俺!
だって、ガチゲイだもん。
仕方ないじゃん。
イケメンマッチョ、好きだもん。
綺麗なラインだった。
腰骨からお尻のラインピッタリに巻きついたタオルが、ものすごく、綺麗だった。

「キレイ」

と口に出してた。
バカバカ、俺!

「ありがとう。
 誰に言われるより、さとるに言われると嬉しいね」

「あ、ぃぇ、」

テレる。

「傷はキレイに治るからね
 さとるが、気にしてるの知ってるよ。
 そして、逃げようとしてるのもね。」

ベッドに、片膝を乗せた状態で、屈んで俺にキスして来た。

「んん、ぅん」

「さとる、口あけて」

そっと、触れたまま言われた。
小さく息を吐くように口を開いた。

痛くないように、しっかり引いた背中も、首も支えて、逃げられないように深く、口づけられた。 
キスじゃない、口づけ。

ゆっくりと、深くなる。
舌も、そっと、探るように徐々に深くなっていった。

「ぁぁ」

ため息を吐くように、声が出る。

俺が薄いガラスのような触り方が、優しくて、もどかしい。

「さとる、愛してる。
 どんな姿になっても、さとるが好きだよ。」

「ぅん、」

きっと、いま、凄い汚い顔なのに。

「少しだけ、さとるを頂戴」
 
「あ、ダメ
 だめ、まだ、ダメ」

なの?」
 
「だって、」
 
一志さんも侑士にも会ってない。
一生の誓いをしたのに、今ここにいない2人が悪い!
でも、俺も悪い。

ちゃんと会いたいって言ったら、お義父さんは会わせてくれたと思う。
 
「嫌いじゃない、好きだよ、だけど、進めないよ。
 2人がいなきゃ、進めないの。」

涙がポロポロ落ちる。

こんな姿でも、愛して欲しいのに、勇気が出ない。
会いたいのに、ガッカリされたり、目を背けられるのが怖くて、言えない。
 
「俺が、悪いの。
 お義父さんの事も好きだよ。
 だから、俺が悪いの。」

ずっと一緒にいてくれた。
悪夢を見なくなったのもお義父さんが、俺を抱きしめてくれてたから。

「2人に会いたいよ」

「さとる、偉いね。
 ちゃんと言えたね。」

お義父さんは新しい服を着ながら、電話をかけ始めた。

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