モテないゲイは、魔法使いを目指す！

ビーバー父さん

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最初の1か月は血が足りな過ぎて動けなかった。
退屈だとか、何とか考えるより、ただ、うとうとと覚醒と混濁を繰り返しているだけだった。
点滴に痛み止めとかいろいろ入ってたからかもしれなけど。

どこを縫って、どこを手術したのか、よくわからなかった。

全身痛くて、痛くないところってどこかあったかな？

あ、でもそうか、今回、足は無事だったんだ。

防御した腕と手が酷かった。
顔も腫れが酷かったけど、手はそれ以上に酷かった。

もしかしたら、細かい作業はできなくなるかもしれなかった。

もともと不器用だったけど、これ以上下手になるのか。

は、はは。

もっと役立たずになっちゃった。

集中治療室を出て、大部屋に行くはずが、
なんか豪華なVIPルームだった。

「お義父さん、これは？」

「私も一緒に、泊まるから、ベッドが無いと困るだろ？」

付き添いベッド、無いですけど？
まさかの？ベッドが一つ
しかも介護っぽい機能の付いたクイーンサイズなんですかね？
そもそも、病院はホテルじゃないデスヨ？

この部屋も、まぁ割と、いや、かなり豪華デスケドネ。

「それにね、さとるが悪夢で目を覚ましてるのを何度も見てるし
　最近は薬を処方されているよね。」
　

そうなんだ。

眠れない夜は薬をもらうようになった。

怖くて眠れない。
あの時の夢を見るんだ。

助けを呼んでも誰も来てくれない、
殴られて痛くて、逃げられない。

うなされると、お義父さんが起こしてくれる。
そして、お義父さんが頭を撫でてくれて、また安心して眠りに就く。
一緒のベッドだから、お義父さんは多分眠れてないはずなんだ。

このところ夢の中に、お義父さんが出てきて助けてくれるようになった。
寝てるときになんかお話してくれてるのかな？
たまに3枚のお札の話とごっちゃになるときがある。

徐々に、悪夢を見る回数が減っていった。

そんな繰り返しの日々で、生きてる現実感が希薄だったと思う。
生きる目的が、分からなくなっていた。

本当に毎日お義父さんが付き添いをしてくれてる。

「会社はいいんですか？」

「可愛い息子のために時間も割けないような会社作りはしてないよ。
　さとるは治すことだけでいいんだ。」

お義父さんは、最初から優しくて、慰めてくれたり安心する。

一志さんとそっくりな顔もダメだ。

お義父さんだってわかってても、によによしちゃう。

う～ん、どうしよ～

早く一志さんと侑士に会わないと、自分の気持ちが分からなくなりそうで・・・。

足は無事だから、管さえついてなければ、出ていけるのかな？

気持ちは焦るけど、治らなものは治らない。
このまま汚いままだったら？
今までだって、モテたことなんかなかったけど、
でも！でも、こんなひどい顔じゃなかった。

元に戻らなかったら？
ブスだったけど、せめて母さんが生んでくれた顔に戻りたい。

だんだん精神的に落ちることが多くなってきた。

「さとる、どうしたんだい？」

心配させちゃいけない。
こんなに、一緒にいてくれるのに。

「ううん、何でもない。
　いい加減お風呂入りたいなって」

「まだ清拭で我慢してね。
　足はシャワーを使えそうだし、待ってなさい
　聞いてこよう」

お湯に入ったりしなければ、という許可で足とか洗えることになった。
嬉しい。
気が滅入ってるときに、お湯が使えるのは本当に嬉しい。
身体も少しはさっぱりするし。

大判のバスタオルをお義父さんが何枚か用意してくれた。
お義父さんが買ってきたりするのかな？

VIPルームはシャワー室も完備していたので、点滴スタンドをゴロゴロ押すのを介助してもらいながら向かった。

人ってさ、特に、個室だとさ、ずるいことしちゃうんだよね。

足だけ洗うなんて済むわけないじゃん。
洗えるところは全部洗うもんね！

お風呂だ～！！！！
念願のおふろ～

シャワーだけどさ！

ただ、手が使えないから、これはお義父さんに手伝ってもらわないと行けないから。
ちょっともじもじしてます。

はい。

俺って、落ち込んだり、浮上したり、本当現金だな～

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