モテないゲイは、魔法使いを目指す！

64

一度、心臓が止まったらしい。
その時だな、父さんに怒られたのは。

たくさんの管と機械が繋がってる身体が情けない。

顔も多分前以上にひどいんだろう。
もう一生、鏡無くてもいいかなｗ

どうせ、モテないゲイだったんだし、
童貞って意味では、まだ、童貞だし。

魔法使いとして一人で生きていった方が平和なのかも。
巻き込まれすぎでしょ、これ


毎日、母さんも姉さんも、航も、
大丈夫だから、普通に生活して。

「父さんに怒られたから、当分行けないみたいだから。」

泣き笑いされてしまった。




そして、お義父さんが、本社の移転が終わったとかで、
今はこっちにいる。
それを差し引いても、毎日、多分、ずっと居てくれてみたいで、目が覚めると必ず声をかけてくれる。

「さとる、一日一日、綺麗に治っていきますからね、
　安心しなさい。
　私がついてます」

お義父さん、若いんだよね。
57歳なのに、40代くらいにしか見えないの。
そんで、一志さんそっくりなんだよ。
カッコイイの。

でもさ、えっと、何で？
一志さんも侑士さんも来てくれないの？

「あの、お義父さん？
　一志さんと侑士は？」

「あのバカどもは、さとるのご家族に制裁を加えて頂きました。
　が、私の怒りは納まりませんので、罰を与えています。
　さとるの怪我が完治するまでにストーカーを突き止めることを条件にしています。
　これが出来なければ、去勢します。
　それと、さとるが怪我を気にしてはいけませんので、腫れなどが引くまでは面会謝絶です。
　笙野の家は、援助も仕事も全て取り上げて破産に追い込みましたから、時間の問題です。
　あと、海江田はさとる専属として私が個人雇用しました。
　まだ、ストーカー問題は解決していませんからね。」

「海江田さん、会社を辞めたんですか？」

「ええ、クビです。
　さとるから離れた事は許せません。
　失態にも程があります。
　ただ、腕は確かなので、絶対にさとるから離れず、代わりに殺される覚悟があるなら、と言う条件で個人雇用しました。」

確かに、誰もいないのはどうかと思ったな。
うん。
実際死にかけたし。

「あの、笙野の家はヤクザかなにかだったのですか？」

「いいえ、ただの町議会程度の人間ですよ。
　まぁ、裏ではそんなもんですね。
　私もさとると同じ地域出身ですから、ね。
　さとるの事も小さい頃からよく知っていました。
　評判の可愛い子でしたから、見に行きました。
　何度連れて行こうとして失敗したことか。」

「ええ？」

いま、サラッと怖い事言ったよね？
ヤバくない？

「あ、いえ、連れて行かれそうになったのを、失敗に終わらせた事か、ですね。
　何度か助けたんですよ。」

うそだ、さっきの本気臭い。

「お義父さん、こっちの出身だったんですか？
　本社、東京ですよね？」

「うちの先代、父の見栄で本社を東京にして移住したんですよ。
　侑士の事があったので、田舎で口さがないことを言われて傷つく前にとか
　そんなタイミングもありました。
　仕事などどこでも出来るんですけどね。
　侑士が不憫でしたから、その選択をしたまでです。」

そうか、2、30年くらい前ならそう言う考えなのかなー。
お義父さん、ちゃんと侑士の事を愛してるんだな。
侑士が気遣いなのは、こんな環境だったからなんだな。

俺だって、東京の方が仕事多いって思うし、憧れの土地だしな。

「大人しく、援助で黙っておけばいいものを。
　ちゃんと潰しますから、さとるは安心して身体を治しなさい。
　やっと、うちの子にできたのに、失うところでした。」

最後、なんか、怖いような気がするのは気のせいかな～？