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いま、ここに居る俺たち3人以外には知らない話だよ、一志さん。

なんとか涙を止めようと、息をつめた。

ぎゅうぎゅうと締め付けられて、むしろ息ができないって!

タップして緩めて貰いながら、泣き顔を侑士に確認されて、また抱きしめられた。



「まあ、まあ、
 あんたたちも言い過ぎだ。
 口は禍の元だろ?」

海江田さんが、その場を収めるように話してくれた。

「知らないわよ!
 そんな話!
 知ってたら、」
オネェが言い掛けて、海江田さんと須藤さんがん?と言う顔をした。

「知ってたら?」

「あ、えっと
 聞いてた話と全然違うから!」

やっばり誰かから頼まれてたんだ。

「どんなふうに、誰から?
 聞いた話はどんな?」 

海江田さんが肉食獣の様な鋭い眼光で、オネェ達を睨みつけた。

「あ、あたし達は、ビッチがいい男を手玉に取って、好き勝手してる、とか
 オーナーに取り行って、ビルを貰ったとか、弱みを握られてマスターたちはビッチに縛りつけられてるって。
 だから、追い出してやろうって言われたのよ!」

話がかなり酷い盛られからしてるな。

「ほう、誰に?」

「え、あ、」

「誰に言われて、営業妨害しに来たんだ?」

「聞いた、だけだから!」

普通、聞いただけなら見に来るかもしれないが、わざわざこんな風にしない。
一志さん達がかっこいいから、ではここまでの攻撃的な事は言えない。
なら、誰かが指示しているとしか思えない。

「行動に移したら、お前らが犯罪者になってるんだが、理解できてるか?」

「犯罪者なんて、
 悪いことなんかしてないわよ」

「意図してこの方を排除する為に来た、と言いましたよ。
 録音と録画があります。
 業務妨害にあたりますね。
 オーナーはカイさんですから。」

須藤さんたち、それでオネェ連中に張り付いてたのか。
なんか、俺がいなくなればとか、この傷のせいでとかグルグルしてたけど、冷静になれば悪いのはどっかのストーカーで、俺じゃない!

ぎゅうって、2人を抱きしめ返して、笑ってみせた。

「逃げないよ。
 この傷が2人の枷になってるんじゃないかって、ずっと思ってた。
 けど、やっぱり2人と居たいんだ。
 愛してるから。」 

「当たり前だ!
 どれだけお前を捕まえておくのが大変だと思ってんだ!
 居なくなったら、俺は生きていけない!」

「俺もだよ。
 さとるが居なければ、意味がないんだから。」

「愛してる」
「愛してるよ」

「うん、俺も愛してる」

お店にいた、お客様には閉めませんから、お時間が許すなら、と謝罪をした。
有難い事に誰も帰るとは言わずに、いてくれた。

オネェたちは、奥のバックヤード的な個室に移動させ、侑士と海江田さんが話を聞く事になった。

お客様1人1人に謝罪し、シャンパンを一杯ずつサービスをしていると、たくさんの人から慰められた。

「カイくんは頑張り屋さんだよ
 みんなちゃんと知ってるから、ね
 負けちゃダメだよ。」

「そうそう、マスターたちのあの過保護を見に来てる様なもんなんだからさw」

「さっきのカウンターを飛び越えたのはカッコよかったよなーw
 カイ君の泣き顔は超絶エロいし!」

あ、一志さんが睨んでますよーw

「ありがとうございます。」

そうか、あれは一種のショーになってたか。
まさか、それで?
いやないない!
単に、自分たちがしたいだけだ、あれは!

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