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しおりを挟む「さとる、さとる、お家だよ」
「ん、わかってる
動けないんよ」
ぐったり疲れた感じで、抱っこ気持ち良くて楽だー
侑士にすりすりしてしまう。
「あ、可愛い、可愛いけど、みんな見てるよ?」
苦笑いを皆んなが浮かべてた。
うわっ!もう恥ずかしくて顔上げられない!
「うん、猫だな!」
海江田さん、なぜ、猫!
「そうですね、長毛種の白猫って感じですね」
須藤さんも、納得しないでー!
「むぅ、」
お店のソファーに降ろしてもらって、座った。
ただし、一志さんの安楽座椅子付きだったから、やっぱりすりすりしてしまった。
ダメじゃん!俺!
みんなに、笑われてるし。
海江田さんも、なんか笑ってるし。
もー!
お店に盗聴器は無かったって。
住居にも無い。
他のテナントもない。
ビル全体は問題なかった。
まだ、ここは無事だった。
そこにいたら幸せにしてあげられない、のそこってどこを指してるんだろうか。
明日から、海江田さん、須藤さん、あと、セキュリティーをセットしたりしてた、他の4人がお店に入る事になった。
海江田さんは、店員として須藤さんは客として他の4人と組み合わせを変える事になった。
海江田さんは一志さんの親友だけあって、阿吽の呼吸でこなして行く。
俺は、カウンターとホールの辺りをウロウロしてるだけの役立たずみたいになった。
今まで、どうやってたっけ?
なんか急に、立ち位置が分からなくなった。
疎外感、なのかな。
かまってちゃんだから、かな。
警護の人たちは、余り気負わずに、動かなくていいって言うし。
海江田さんが代わりにやってくれるし。
あれ?
おかしい。
「くすくす、とうとう、お払い箱かしらねー
あの人もカッコイイわよね、
燻銀になるわよー」
オネェたち、また来てたんだ。
よく来れるな。
「大丈夫かい?」
急に声を掛けられてビクッとした。
アフィニティの人だった。
「あ、いらっしゃいませ。
どうぞ、カウンターは満席なのですが、
ソファー席でもいいですか?」
笑って見せる。
「カイくん、我慢する必要ないんだよ。
マスター、ひどい人だね。」
「え?」
「浮気かい?」
「違います!
違いますよー
やだなー
怖い事言わないでくださいよー」
ダメだ、一志さんの評判を落とさせたりしたら、俺は価値のない奴になる。
「何にいたしましょう?」
「カイくんも飲んでくれるなら、一杯だけ、一緒にいてくれないかな?」
慰めてくれてるのかな?
「わかりました。
一杯、御馳走になりますね。」
「なら、オリンピックイヤーだし、俺にはオリンピックを。
カイくんは?」
「では、カーディナルをいただいてもいいですか?」
カウンターの一志さんに、オリンピックとカーディナルを頼んだ。
アフィニティさんのテーブルに、クリームチーズにワサビと甘口の刺身醤油を出した。
アボカドを添えて。
海江田さんが、オリンピックとカーディナルを運んで来た。
侑士は他のソファー席の人に捕まり、須藤さんとペアの人はカウンターのオネェたちを見張り、海江田さんは運んで来たけどカウンターで呼ばれて戻って行った。
あ、おしぼり出してない!
お箸も、何やってるんだ俺。
おしぼりとお箸を取りに行き、アフィニティさんのテーブルに戻った。
「すみません、忘れちゃって、なんか今日は空回ってしまってて、ダメですねー」
侑士が見てたらブスって言う笑いを作っていたかもしれない。
乾杯をさせてもらって、飲むと、ノンアルコールジュースだし。
もう!
一志さんたら。
「ふふふ」
「どうしたんですか?」
「いえ、ちょっと、やきもち焼いちゃったんだなーって。」
「悔しいな、そんなにマスターが好き?」
「えぇ、大好きです」
目元が染まってると分かるけど、恥ずかしいけど、言わずにはいられなかった。
「カイ!」
侑士が飛んできた、と思ったら、一志さんまでが、カウンターを乗り越えてきた。
2人にしっかり抱きしめられて、おれの掻き上げたこめかみにキスをした。
一志さんから、キスをされ、侑士からもキスをされ、ダメだと怒られた。
「逃げようとしてないかい?」
「ダメだ、逃がさない」
声が出せなかった。
「今日は閉めよう。」
閉めると宣言した一志に、オネェたちはまたもや大ブーイングを起こした。
「さっきからさ、何にも仕事してないじゃない?
こんなブスと別れたらいいのよ!」
「そうよ、コメカミなんかにタトゥーなんか入れちゃって似合ってなんかないわよ!」
その瞬間、ドゴン!っと鈍く響く音にシーンとなった。
一志も、侑士も壁を殴っていた。
あー、あ、また、もう。
「俺たちも入ってんだわ、タトゥー
これはな、カイが俺を命がけで守ったからこそ、入れたタトゥーなんだわ。
こんな綺麗で可愛い子にブスとかさ、本当にそんな事言う奴、誰が相手にするんだよ?
なあ、見た目もブスなら性格はもっとブスだな、お前ら。」
侑士が本気で怒ったのを初めて見た。
「お前らの中で、突きつけられたナイフから体を張って盾になれる奴がいるのか教えてくれねぇか?」
侑士、そんな風に思ってくれてたんだ。
「俺の不始末のために、頭にビール瓶を振り下ろされて殺されそうになっても、記憶をなくしても、俺を守ろうとしてくれる奴がいるとは思えないな。」
泣きたくない、笑ってたいのに、涙が止まらなくて、一志さんにしがみついていた。
この傷を引目に感じたくなくて、タトゥーにした。
気にしてないよって言いたかったから。
でも、本当は気にしてたんだ。
「ごめ、」やっぱり声が出せなかった。
一志さんは、俺を隠すように抱きしめてくれた。
調子づいてたんだ。
やっぱり。
この傷が枷で、2人を縛ってたんだ。
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