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あの若頭風の人に、足繁く通われている。

何でだ?

本当に好かれる要素がないんだけど。

それに夫持ちだって言ったよね?

これ、何の嫌がらせだ?
昔の賭けの時の感じに似てる。
一番いやな空気。
人をだますことに何のためらいもない人種。


「兄貴さん。、こんばんは。
 今日は何にいたしますか?」

「カイ君をオーダーしたいな~」

「大変申し訳ございません。
 生憎メニューにはございません。」

「あと兄貴さんってやめてよ。
 俺、笙野しょうのって名前だからさ。」

「畏まりました、笙野様
 で?」

「うわ~、冷たい!
 本当、猫みたいだな~」

「いえいえ、お客様は有難いことですから。
 では、インペリアル・フィズを」

カウンターでシェイカーを振る一志さんに、インペリアル・フィズをお願いした。

「インペリアル・フィズ、楽しい会話という言葉を持つカクテルでございます。」

「ふ~ん、面白いね」
ギラリと目の色が変わった気がする。

「はい、花言葉のように、カクテルにもカクテル言葉がございます。」

にっこり微笑んで、一志さんを振り返った。

「そんなに、旦那が好き?」

「はい」

つい、素で照れてはにかんでしまった。

「カイ!」

2人から同時に呼ばれる。

一志さんから、内緒話のお耳はむはむで、言われる。

「エロい顔してる、どうした?」
「え?やだ、旦那がそんなに好きかって聞かれたから」

そう答えると、一志さんはものすごくうれしそうな顔をして抱きしめてこめかみを掻き上げて、タトゥーが入った傷跡にキスをした。

侑士がカウンターに来て同じように、こめかみにキスをした。
同じ内容を侑士にも教えた。

「エロい奥さん、ダメだよそんな顔したら」
「ぅん、ごめん。」

ぽんぽんて背中を叩いて離れてフロアーに戻った。

「いや、凄いね
 旦那たちの守りって、こんなすごいの?」

「今まで、私のせいで色々ありましたから
 なので、誰かが入る隙間はないんですよ」

多分、目元が赤く染まってたんだと思う。

「カイ君は綺麗で、とても可愛いんだね」

「そんなことないですよ。
 前はブスってよく言われてましたから。
 ね、ユウ?w」

「そーそー、カイはさ、我慢ばっかりしていつもぶっさいくな顔して笑ってたからね」

茶化すように侑士が答えてくれる。
助かる。
多分俺だったら、前の事を思い出して、きっとブスな顔して笑ってたと思うから。


でも油断ならない男だ。

何が目的なんだろう?
絶対俺が好きとはない、それは確かだ。

狂気じみたストーカーの好意も、一志さんのような甘やかすような愛情も、侑士がからかいながら心を軽くしてくれるような愛情も、好意という意味では同じ目をしてる。

でも、笙野は違う。



足元から蛇が這いあがる様な気持ち悪さだった。








 
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