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目が覚めるともう、日差しは午前中も終わりを告げていた。

「ァ"、」

枯れて声も出せない。

一志さんと侑士に抱きしめられていて、すごく嬉しくて幸せだった。

昨日、俺は本田さとるになった。

一生、一緒にいられる約束。





寝起きの甘々タイムを一志さんと侑士と過ごして、夜の店の準備を始めた。

侑士は在宅勤務?らしいw

いいねー、次期社長は。

飲食部門の管理と言う名目なのか、店に侑士も立つ事になっている。

本当、365日、24時間一緒って事だ。

ちなみに、お義父さんは本社をこちらに移転したら、同居になる予定。

んー、なんか怖い予感も、なくはない。
でも、俺も新しい扉開いちゃったしなー。
今は、一志さんと甘々してるのが幸せだから。





夜20時、本格的にお店を開店させた。

マスターは、一志さん、バーテンは俺、マネージャーは侑士。
お店では、以前のカイを名乗るように言われ、一志さんはマスターじゃなくて、名前呼びをしろって言い張って、カズに落ち着いた。
侑士はあなた呼びを強要したが、却下。
侑士はユウで。
これで、公平だな。

そんな立ち位置的になっている。
店内のチェックをして、このお店はそこそこ広いから、大型モニターをいれてスポーツ観戦が出来るようにした。

普段は俺のゲームモニターになるんだけどね。
今は、好きなアーティストのPVとか音を絞って流してる。

看板に灯りをいれに行くと、昨日お祝いに来てくれた常連さん達が、明日帰るからとまた、寄ってくれた。

「カイ君、綺麗になったよな。
 あの、魔法使いになるって言ってた頃と比べ物にならないよ。」

照れる

「カイは、前から可愛かったんだよ。
 皆んなからの好みから外れてたのと、ださださ眼鏡がかっこいいと思ってる残念な子だったからな。」

なに、それ!
今でもインテリ眼鏡はアレだと思ってるよ、俺!

できる奴っぽいじゃん。

「インテリには必須アイテムでしょー!」

ゲラゲラと常連さんが笑い、前のお店のようだった。
いいね、普通に何にも無いって!
あの頃は、一人で生きていくとか、嫌なことからは逃げる一択が、今は守り守られて、誰かに愛される事が幸せだと知ったから。

「しかし、カイ君がこんなに綺麗な可愛い子だって知ってたら、全力で俺も口説いたわ。
 ずるいよなー、マスターもユウさんもさ。
 しかも入籍って、囲い込み早いわw」

「こんな奴がいるからに決まってんでしょ。
 カイは最初から、俺が狙ってたんだから。」

一志さんがはっきり言ってくれるのが嬉しくって、照れる。

「あー、ご馳走様ですよ。
 もう、俺も特定のパートナー欲しいわ」

「カイは俺の嫁でもあるからね。」

侑士も入ってくると、夜だし、酔っ払いだし、下ネタ行くよねー!

「こんなちっせーケツに入るんか?」

いやいや、それは3人の秘密でしょ!

「カズ!
 ユウ!」

わかってるよな?

ギッと睨んだ。


カラン♪

いらっしゃいませー

今日オープンだから、初めてのお客さんしかいないんだけど、女性連れだった。

うーん、残念。

「ユウ、満席だ」

「ごめんなさい、今夜はもういっぱいで。」

東京でもあった反応。

食い下がりです!

「何時頃なら入れますか?」

「これから団体さんが入ってるし、うちは余程じゃないと、お時間で出す店じゃ無いので、何時ごろと言うのは、難しいですね。」

「なら、予約します!」

連れの女、めんどくせーな。

「カイ、行ってこい」
「はぁい」

カウンターから出て、侑士と代わる。

「お客様、大変申し訳ありませんが、どなたかのご紹介でしょうか?」

「昨日、ここでウェディングをやっていたのを見たんです!
 私たちもここでやりたいんです!」

「そうでしたか。
 大変嬉しい事ではございますが、ご紹介が無いとお受けできないんです。」

「オーナーとお話しするわ
 あなたでは、お話にならないもの。」

いや、田舎の女って強い、そんで図々しい。

ふぅ、ため息。

「オーナーは私です。
 貴方の態度はまるでなってない。
 お恥ずかしく無いですか?」

睨みつけられてもねー

「この店最低!」

「ええ、理解力の無い女性はお断りのお店ですからね」

「!」

にっこりと笑って、暴露。

女って、女だってだけで許されるとか思ってる奴多いよなー。

「あ、ちなみに、戸籍、男性じゃないと無理ですから。
 あと、お連れ様も男性に限ります。
 お気を悪くされないように、満席と言ったんですが、ご理解頂けないようなので。」

むしろ、男性に向かって可哀想にね、こんなのと結婚して幸せ?
な顔してやった。

口コミ書かれようが、痛くも痒くもないな。
だって、男性客だけでいいし、むしろ書いて!
ガチゲイは安心して来てくれるから!

こう言う女は叩きのめす。

「あ、すみません、失礼しました。」

尻に敷かれてんじゃねーよ!

「ひゅーひゅー!
 カイ君が怒ったーw
 相変わらず怒った時の丁寧語が怖いわw」

「ユウ、今ぐらいの断り方しろ
 食い下がられるのは面倒だ」

俺のスキルも役に立つ時あるんだねー
だてに派遣やってたんじゃねーんだよ。

根無草は生きるのに色んな事をその場で判断して生きないといけないからね。




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