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偽りのハート





その2人の顔を俺は知らない。

航しか、知らないんだ。
さっきの資料には、あの酷い手紙の奴しかいなかった。

うちの周りで嫁さんに話を聞いた奴は、確かにあの気持ち悪いやつなんだろうけど。

あ!スマホに写真送られてるはず!

「侑士!戻ろう!
 航がスマホに写真送ってるって言ってた!
 俺のスマホ!
 一志さんが持ってる!
 アレだ!
 ロック解除は俺の誕生日だから送ってもらってもいいし!」

「そうだった!
 うかつだったよ。
 さとる君に言われるって、やばいな」

もうっ、それどころじゃないんだって!

急いで、一志さんに電話をしながら、戻るのは危ないから他の奴らの写真を送るように言ってた。

「どっかで確認しないといけないんだよな・・・」

侑士がつぶやいた。

とりあえず、車でこの場を移動することにした。

侑士のスマホに、写真が送られて来た。

「あ、これ、クラウドだから、会社の社長もこれにアクセスしてるよ。
 それと、セキュリティ関係もね。
 知ってる顔ある?」

侑士の持ってる手ごとスマホを覗き込んだ。

あ、これ、昨日の

「この人、昨日乗ったタクシーの運転手!」

ホテルも、何もかもバレてる。

「マジか、やばいな」

侑士が車を運転しながら、かずしさんに電話をかける。

今時の車って。スマホと連動してくれんのな。
スゲーってそこじゃない。

スピーカーで話す。

「かずしさん、このもう一人の奴、昨日のタクシーだよ!」

『くそっ!見てなかった!
 昨日たまたま、じゃなかったんだな』
『兄ちゃん、タクシー会社、どこの会社?
 領収書は?』

「かずしさんが払って、おつりを俺がもらったから、
 ホテルにある」

『ホテルか、わかった、バレてる以上ばらける必要もないな
 ホテルで合流しよう』
『侑士さん、兄ちゃんをくれぐれもお願いします』

『兄ちゃん、知らん人についてったらいけんよ?
 わかっとろうね?』

「俺そこまでバカじゃない!」

「顔バレ微妙なのは、俺だけか・・・」

一生懸命、昨日乗ったタクシーを思い出そうとした。
どんな色だった?

からし色?

いま通りを走るタクシーを色々見ながら、同じものがないか記憶を辿るけど、どれも同じにしか見えない。
同じような箱型の昔ながらのタクシーばっかりで、区別もつかない。

「もう、何でこんなに記憶力悪いんだ!
 どんなだったか思い出せない!
 帽子かぶってたし、余計に顔しかわかんないよー!!!」

イライラして、ジタバタしていた。

「そいつ、電車とかバスの車掌みたいな帽子かぶってたの?」

「うん、そう
 でもタクシーってみんなかぶってない?」

「今はほとんどない。
 むしろ、印象を良くするために、着用させない会社がほとんどだ!」


すぐにかずしさんに電話をかけた。














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