上 下
29 / 105

27

しおりを挟む


泥のハート







カラオケボックスの駐車場から出ずに、航に電話した。
スピーカーにしてみんなで聞く。

今時は、Bluetoothで車のオーディオに接続したら、電話がスピーカーになるんだ。


「いま、駐車場にいるんだけど」

『あと、5分くらいで着くけど、降りないでいて
 もしかしたら、後を付けられてたら、やばいから、そこで見てて。
 そんで、写真、スマホに送ったけん、そこにいる奴がいたら、注意して』

「わたるくん、危ないことはするなよ?
 こっちもいま、人手の手配をしてるから」

「えーっと、初めまして、弟の侑士です。
 このストーカーって警察に相談とかしたことある?」

『よろしくお願いします。航です。
 当時、生きていた親父が恥になるって相談できてないです。
 兄ちゃんに男がっていうのが許せんかった親父が、つらく当たってて・・・
 母さんと姉さん、俺で対処してました。』

そうだったんだ・・・・カミングアウトしたころなんかなー?
どっちかっていうと、普通の反応だったし気にしてなかったけど、そこまで、恥だと思われてたんだな。


「まずは、警察に相談実績つくりに行こうか
 一応、わたる君を付けてきてるってのもほしいな、
 当時のストーカーの証拠って、どんなの?
 まだ、ある?」

『はい、今、それ持って来てますけん。
 行ったら見せます』

そんなだったんだ・・・母さんも姉さんも、航も、大変な迷惑かけて、それでもこんなに大事にしてもらってたんだ。

「ごめん、ごめんね、俺、全然知らんかった」

『泣くな!笑え!兄ちゃんが笑えば、みんな報われるけん、泣くな!』

「うん、うん、うん」

泣き笑いのブス顔で、感謝した。

「もう着くかな?
 車の車種教えておいて」

『トヨタ ノアの黒です。
 ナンバーは****』

「わかった、なんかあれば、こっちの人間も追えるようにしとくから」


電話を切って、数秒で車が入ってきた。
航の車だった。


侑士さん、凄い頼りになる。
なんなの、この人。


かずしさんは、どっかにメールして、なんか確認したあと、
航の車の車種やら、ナンバーやら、を入力?していた。

「手配できた。
 ここで、1時間くらい時間を潰そう」

「兄貴の方の手配ができたんなら、
 こっちはわたる君のを確認してから、やるかね」


航が車から降りてきた。

割と大きなデイバッグで、普通にカラオケに入っていった。


「兄貴、対向車線の車、写真その角度で撮れる?」

「いける」

スマホに望遠レンズがついてた。

「これは今日、物件を外から見るために持って来てたんだよ。
 あとは、解を撮るためにな。
 ちょっと楽しむためにも使おうかと思ってたけどな」

わざとニヤニヤ笑いをして見せてくれる。

「かずしさんならいいけどね」

俺も笑って見せる。
強くなんなきゃ、みんなが助けてくれてるんだから、負けたくない。
今までいっぱい逃げてきたから。

「あの車、こっちに入って来るぞ
 二人とも頭下げてシートの下になるべく入って」

侑士は車を降りてスマホをいじって、電話をかけながら降りて行った。

俺たちは、どうしたらいいんだろう・・・。














しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

うちの鬼上司が僕だけに甘い理由(わけ)

みづき
BL
匠が勤める建築デザイン事務所には、洗練された見た目と完璧な仕事で社員誰もが憧れる一流デザイナーの克彦がいる。しかしとにかく仕事に厳しい姿に、陰で『鬼上司』と呼ばれていた。 そんな克彦が家に帰ると甘く変わることを知っているのは、同棲している恋人の匠だけだった。 けれどこの関係の始まりはお互いに惹かれ合って始めたものではない。 始めは甘やかされることが嬉しかったが、次第に自分の気持ちも克彦の気持ちも分からなくなり、この関係に不安を感じるようになる匠だが――

上司と俺のSM関係

雫@3日更新予定あり
BL
タイトルの通りです。

処理中です...