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しおりを挟む泥のハート
カラオケボックスの駐車場から出ずに、航に電話した。
スピーカーにしてみんなで聞く。
今時は、Bluetoothで車のオーディオに接続したら、電話がスピーカーになるんだ。
「いま、駐車場にいるんだけど」
『あと、5分くらいで着くけど、降りないでいて
もしかしたら、後を付けられてたら、やばいから、そこで見てて。
そんで、写真、スマホに送ったけん、そこにいる奴がいたら、注意して』
「わたるくん、危ないことはするなよ?
こっちもいま、人手の手配をしてるから」
「えーっと、初めまして、弟の侑士です。
このストーカーって警察に相談とかしたことある?」
『よろしくお願いします。航です。
当時、生きていた親父が恥になるって相談できてないです。
兄ちゃんに男がっていうのが許せんかった親父が、つらく当たってて・・・
母さんと姉さん、俺で対処してました。』
そうだったんだ・・・・カミングアウトしたころなんかなー?
どっちかっていうと、普通の反応だったし気にしてなかったけど、そこまで、恥だと思われてたんだな。
「まずは、警察に相談実績つくりに行こうか
一応、わたる君を付けてきてるってのもほしいな、
当時のストーカーの証拠って、どんなの?
まだ、ある?」
『はい、今、それ持って来てますけん。
行ったら見せます』
そんなだったんだ・・・母さんも姉さんも、航も、大変な迷惑かけて、それでもこんなに大事にしてもらってたんだ。
「ごめん、ごめんね、俺、全然知らんかった」
『泣くな!笑え!兄ちゃんが笑えば、みんな報われるけん、泣くな!』
「うん、うん、うん」
泣き笑いのブス顔で、感謝した。
「もう着くかな?
車の車種教えておいて」
『トヨタ ノアの黒です。
ナンバーは****』
「わかった、なんかあれば、こっちの人間も追えるようにしとくから」
電話を切って、数秒で車が入ってきた。
航の車だった。
侑士さん、凄い頼りになる。
なんなの、この人。
かずしさんは、どっかにメールして、なんか確認したあと、
航の車の車種やら、ナンバーやら、を入力?していた。
「手配できた。
ここで、1時間くらい時間を潰そう」
「兄貴の方の手配ができたんなら、
こっちはわたる君のを確認してから、やるかね」
航が車から降りてきた。
割と大きなデイバッグで、普通にカラオケに入っていった。
「兄貴、対向車線の車、写真その角度で撮れる?」
「いける」
スマホに望遠レンズがついてた。
「これは今日、物件を外から見るために持って来てたんだよ。
あとは、解を撮るためにな。
ちょっと楽しむためにも使おうかと思ってたけどな」
わざとニヤニヤ笑いをして見せてくれる。
「かずしさんならいいけどね」
俺も笑って見せる。
強くなんなきゃ、みんなが助けてくれてるんだから、負けたくない。
今までいっぱい逃げてきたから。
「あの車、こっちに入って来るぞ
二人とも頭下げてシートの下になるべく入って」
侑士は車を降りてスマホをいじって、電話をかけながら降りて行った。
俺たちは、どうしたらいいんだろう・・・。
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