君なんか求めてない。

ビーバー父さん

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祝福 ※ちょい?下の表現あり。

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 ライデンに抱きかかえられて、俺は多分精霊界に来たんだと思う。

 その姿は龍と言うより、ドラゴンに近い姿で俺を運んでくれた。
 あの竜の子太郎みたいな状態じゃ、ちょっとねぇ。

「どこに向かってるの?」

「儀式の場所だ。
 この世界の一番力が集まる場所
 本当のユグドラシルがその根を息づかせる場所だ。」

 眼下に広がる景色はすでにカシュクールや、あの丘で見た空とも違っていた。
 
「ここはもう違う世界?」

「精霊界へつながる、狭間の世界といった所かな。」

 狭間でも今までいた所より、空気なんかが全く違っていた。
 清浄と言うのが正しいか分からないけど、魔力とは違う力がある事だけは肌で感じた。

「ライカは気づいたみたいだな。
 ここにあるのは魔力ではなく精霊力だ。
 今までライカのいた世界は、魔力を引き換えに精霊がこの精霊力を使って魔法を貸し与えていたんだ。
 力を貸す精霊はここ、狭間にいる者らが殆どで、実際精霊界に住む精霊は人に交わる事が無い。
 たまに我ら精霊王が確認に行くがな。」

「精霊界には、精霊の中間管理職か支店長みたいな方がいて、役員の精霊王が好き勝手してるって事か。
 そんで、最近、ライデンが社長になったって事なんだね。」

 会社の役職に置き換えたら、なんとなく理解できた。

「ん?支店長?
 中間管理職?」

 ?マークをたくさん付けたライデンが眉を上げたけど、こっちの世界じゃなくて俺がいた世界だから気にしなくて良いよ、と笑って見せた。

「抜けるぞ、直ぐに儀式をしたらライカを私のモノにする。」

 そこであの丘での事を思い出して、俺はライデンにされた以上の事をしてしまったんだと告白した。

「俺、他の精霊王ともセックスしちゃったんだ。」

「え!?
 挿入されたのか?!」

「そうにゅう?」

「セックスしたんだろ!?」

 あの時も言ったけど、挿入って何?

「擦って出た精液を、入れるのはやってないけど」 

「はあ?
 それどんなプレイ?」

「あの、皆んながしたがって、でもあの時俺だけちょっと出した感じで皆んなは俺を欲しかったわけじゃ無かったから、あれ?
 しなかったのかな?」

 ライデンはすごく深~い溜息をついて、俺がアホだのと言った。
 
「ライカ、それは前戯だ。
 セックスは後でちゃんと教えてやる」

 え?あれがセックスじゃないの?
 頭が甘く痺れて、気持ちよくて、あれがセックスじゃないの?
 
「今まで良く喰われなかったなぁ。」

 この世界に魔獣がいるのは知ってるけど、人を簡単に襲うんだろうか?
 もしかしたら今までも危機的状況があったのかもしれないと思うと、少しだけ怖くなった。

「見ろ、すでに集まっておる。
 直ぐに儀式を始めるぞ」

 ライデンに言われた方向を見ると、確かにターセルやトライガ他の精霊王が集まっていて、その真ん中に魔法陣の様な模様が作られていた。
 何で作られているのか分からなかったけど、ライデンが下りたって俺を降ろしてくれたから近くで見ると、その模様に下草が折れ曲がったり絡まったりしながら複雑な図形を作っていた。
 これ、ミステリーサークルだよ!
 宇宙人説やイタズラ説なんかもあったけど、この世界ではちゃんと何かしらの力と意志によって出来上がっていた。

「ライカ…」

 声をかけて来たのが、タラントだった。
 他の人も物言いたげだったけど、代表してなのか単に黙っていることが出来なかったからなのか、いきなり謝罪をされた。

「すまなかった!」

「…」

 最初から許すつもりはないし、時間が解決してくれるだろうとは思うけど、謝ったらそれで終わりとか良いだろって言うのは何だか違う気がした。

「私達も、真の精霊王になりたくて、焦ったのだ。
 だから、ライカの気持ちや体のことも考えずに…」

「ライカ、許す事などない。」

 ライデンが腰を抱きながら謝罪をしようとしてるタラントに下がれと言った。

「ライカ!許して欲しい!
 そして、私にも名づけを!」

「俺がアホでセックスを知らないからって、途中で止めてくれたのは助かりましたけど、そうじゃないですよね?
 俺に愛情なんかなくて、名づけをしてもらう為の儀式の前哨戦ってとこだったんでしょ?」

 怒りもあったけど、今回は呆れた。

「俺の気持ちは無視しても、名づけて欲しかったって事なのかな…
 俺はあの時、俺じゃなかったんだって思った。
 必要とされ、愛されて、家族になるんだって、それが嬉しくて求められてるならそれが一番だって思いこもうとしたけど…
 確かに、俺、家族が分からないから余計に期待したり、勝手な理想を押し付けたかもしれないけど、それ以上に俺は求められたかった。
 だから、俺じゃ無理って気持ちが払拭できないんだ」

 それに、ライデンを欲しいと思う気持ちと、皆とでは全く違う事にも気づいてしまったから、もう、同じことは出来ない。

「そうか、すまなかった。
 ライカが無垢すぎて、私たちは酷い過ちを犯していることに気づいてしまったが、それを口に出す勇気もなかった。」

 ターセルが変わって謝罪するけど、俺は、それを拒否した。

「時間が解決すると思う。 
 だから、謝らないで欲しい。
 今謝られたら、俺は無条件で許さないといけない気がする。
 それは絶対にしたくないんだ」

「もう、分かったであろう?
 ライカを娶る儀式を始める。
 いずれ、其方たちを許し真の精霊王へと導いてくれるであろう?」

 それはどうかな、と思ったけどライデンが言うに任せておいた。
 せっかく下草が魔法陣を作って待っていてくれて、その周りを今までいた精霊より少し大きい子たちが笑いながら手を繋いでいた。

 ―ライカ、やっとお嫁さん。 
  ライデン王は私たちに自分で見つけた魂を、吟味させたんだよ―

「おい、バラすな」

 意外にも顔を赤くして精霊たちに怒った振りをするライデンが可愛くて、俺は最初からこの人が好きだった事を再認識した。
 
「ふふ、ライデン、大好き」

「私もだ。
 ライカ、幸せにする」

 ―ライデン王とライカの魂を分かち合い、精霊王の秘玉として認めるものなり―

 精霊たちの祝福を受けると体があらゆる色の光に包まれた。
 俺の体が創り変わるのが分かった。
 オパールの様な色んな光を合わせ持つ、不思議な光の玉になってそこから俺の形になった。
 前にライデンが俺の額に付けた印の所に、オパールの様な石が埋め込まれて出来上がった。
 
「ほぅ、ライカの魂はやはり素晴らしい。
 その輝く石がライカの魂の本質だ」

 額に手を当てて、くっついてる石を触ってみた。

「自分じゃ分からないけど、石が生えてる」

「ぶふっ!
 石が生えてるか!
 ライカらしい。
 見よ、綺麗な髪色に瞳だ。」

 水鏡を作って見せてくれた俺の姿は、黒髪が金とも銀とも果てはピンクともつかないようなグラデーションの長髪に、赤い瞳になっていた。
 しかも!虹彩が細く猫のようになっていた。
 
「私と同じ瞳を持ったな。」

 ―ライカ様、秘玉としてこれから私達に安寧をお願いいたします―

 精霊たちはその手を放して、それぞれ散って行った。

「これがライカの魂…
 私たちは、愚かな精霊王になるところだった」

 口々に俺を見て過大な評価を貰ったけど、俺は中身は俺のままだし何も変わっていなかった。

「ライカ様、貴方へ永劫の忠誠を
 その輝きのを曇らせる憂いを掃うと誓います」

 膝を折る精霊王たちに、どう答えて良いのか分からずライデンを見ると、静かに頷いて好きなようにしていい、と言われた。

「忠誠なんかいりません。
 だって、俺は家族になりたいって思ってたんだから。
 だから、これからは家族として、俺の側にいて、ください」

 許さないとか言っておきながら、家族になってなんて図々しいかもしれないけど忠誠とかよりよっぽどマシだった。

「ライカ様」

「許さないって気持ちも強かったけど、皆の顔を見たら怒り続けるの、無理みたい。
 だから、ライカでいいよ」

 へにょってちょっとだけ泣きそうになった顔を笑って見せたからきっと変顔になってると思ったけど、嫌な顔はもう出来なかったんだ。

「ライカは綺麗な子だろ?」

「はい、真王よ」

 ライデンは俺をお姫様抱っこで、籠るからよろしくと告げてどっかの空間に入り込んだ。
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