君なんか求めてない。

ビーバー父さん

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大地の精霊王トライガ

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 車は快適?なのか、体を小さくしたと言うより、子供になったサリューとタラントが、ワクワクと言った感じでドライブを楽しんでいた。

「ライカ、大地の精霊が待ってる丘があるからまずはそこへ行こう!」

「え~っと近いのかな?」

 もししばらく走るんだったら、途中でご飯休憩をとか普通に考えていた自分に驚いた。
 人って、結構環境に慣れるもんなんだなぁ。

「ちょっと休憩して、ご飯にしましょうか。」

「おーいいねぇ!!
 今日は何を食べるんだ?」

 サリューが一番喜んだ。

「卵があるし、茶わん蒸しとまではいかないかもしれませんが、蒸し料理なんてどうですか?」

 前に山へ入る準備をしていた時に、調理器具を一通り揃えたけど、蒸し器は無かった。
 だから竹に似た素材で作られた目の細い籠を買っておいたんだ。

「なんか想像つかないけど、ライカが作る物はきっと美味しいと思うから、任せた!」

 タラントは体も子供になっているからか、随分幼く感じた。

「では、あの開けた辺りで火を熾しましょう」








 岩に近い石を利用して、簡易の焚火台を拵えてバッグから深鍋とそれに丁度サイズの合う蓋を出した。

 深鍋にお湯を沸かし、足を作るためにお湯より頭が出る石を四個入れて、その上に籠、その中に卵液を入れた器を入れて、濡れ布巾をかけ更に裏をした。
 お湯が沸いているので、3分ほどその強火状態で鍋をかけて、あとは遠火でじっくり蒸した。
 そして次は重い蓋を合わせた鍋で、ボアのスジ肉をしっかりトロトロになるまで煮て、醤油っぽい調味料で、角煮にした。
 香辛料が醤油じゃないから、肉じゃがの舌の俺には、これは駄目だった。
 だけど、醤油っぽい香辛料が入ったのは角煮には最高だった。
 
「いい感じに出来たよ。
 トロンってした触感がいいから、茶わん蒸しはスプーンでどうぞ」

 鶏肉を買うときに卵を買って良かった。
 俺はじいちゃんばぁちゃんの相手ばっかりだったから、田舎的な和食の方が体に合ってると言うか、そう言う口だったから肉じゃがとか、魚の煮つけとかが好きだった。
 こっちでは、醤油が見つからなかったから、本当の肉じゃがを作れないんだけど、似たような調味料を探すことにしていた。
 形は違えど、食材は似たような味が多いので、こっちとしてはそれほど難しくなかった。
 精霊王だからって霞を食べてるわけじゃないのか、単に食べてみたら旨かったって事なのか分からないけど、喜んでくれて口が合うなら俺が飯テロしてやろうじゃないの!

「んー、ビールがあればなぁ。」

「ビールって何?」

「お酒だよ、発泡した、シュワシュワしたのだよ。」

 流石に精霊王はお酒は無いかーと思っていたら、こんな奴?
 サリューが炭酸ワインの様なのを出してきた。
 スパークリングワインとかそっちに近いけど、炭酸は優しめな感じで疲れた体には優しい飲み物だった。

「あ!飲んじゃったよ!」 

「え、駄目なの?」

「飲酒運転はダメだよ。 
 ここで休んでお酒を抜かないと。」

「んー、ここならトライガも来れるかな?
 飲みながら待ってようか。」

 ターセルの提案に乗ることにした。

「トライガ?って大地の精霊王なの?」

「そう、すっごく、ライカに会いたくて、待ってる」

「トライガはね、私達と違って、余り動くのが得意じゃないから、仕方無いんだけどね」

 ターセルの表情が少し曇ったのが分かった。

「トライガはね、大地の一部だからあんまり動けないんだ。」

「サリューがいつも会いにいってるけど、私たちは、どうしても、頻繁には難しいんだ。」

 事情はまだ、イマイチ分かってないけど、足が不自由なのかな?
 大地と繋がってるとか?

「どんな方か分からないけど、この大地の為に有る方なんて、凄いですね~」

 元々強く無いお酒だけど、ほんの二口くらいで、酔いが回った様だった。

「ライカ、このお酒、本来は果実の汁で薄めたりするんだよ。」

「道理で、強い感じしたんですよ~」

 ヘラヘラと笑いが止まらなかった。
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