7 / 29
この世界の仕組み
しおりを挟む「一応、確認ね。
あの、精霊の力ってどうやって借りたらいいのかな?」
この世界の道理も常識も無いから、そう言った事を一から聞いて覚えて行かないとダメなんだ。
「普通にお願いすればいい。
さっき掃除の時にお願いしていたであろう?
そして最後に礼を言って貰えるのはすごく嬉しい事だからな。」
「それは、当たり前だろう?
掃除は本当に助かったし、こうやって風呂に入れるのも準備してくれた誰かのお陰なんだ。
それは怖い事じゃなくて、助けて貰った事だからお礼をしたいと思うし、お礼を言いたいと思うのも俺の中では当たり前だ。」
それが精霊たちから愛される理由だと言われて、なんだか照れ臭くなった。
「シイラさん、もし良ければまた、お話に来てください。
俺、友達とかいないし、寂しいから暇な時でいいから、話したり教えたりしてくれたら、凄く嬉しいんで。」
「シイラ、だ。
ふふふ、きっと他の精霊も来たがるし話したがる。
寂しいなんて思う暇もないくらい、ここは精霊で溢れているよ。
でも、そうだな。
私の名を呼べば、いつでも来てやろう。」
「本当?
なら、なんか美味しいもの用意して待ってるよ!」
この世界に来て初めて出来た友達だと思った。
「可愛いなぁ、ライカは懐くとこんなに可愛い顔を見せてくれるのだな」
「男なんで、可愛いはちょっと…
それに、親を知らないから、この顔が親に似てるかも分からないし、可愛いって言われてもあんまり嬉しくない」
この顔が俺だけのモノじゃなくて、俺を生んだ知らない人のモノかもしれないと思うと、それを可愛いと言われるのが何だか面白くなかった。
「可愛いのう。
ライカの顔だけじゃなく、その魂がと言っても難しいか。
この世界は獣人しかいないから、と言ったら納得するかい?」
「それもなんか違う気がする。」
シイラは笑いながら、そうだねって言いながらそろそろ失礼するよ、と言って消えてしまった。
なんだか、ポツンと一人になった気がして、寂しくなったと同時にここが風呂の中で裸だったことを思い出して真っ赤になった。
生活で精霊の力を借りることにも慣れた。
妖精と精霊は違うらしいけど、正直区別はつかなかった。
二人の騎士は暇を見つけては家に来るようになったから、カフェを開くことにした。
「ジョージもクインも、お仕事は大丈夫なんですか?
俺は二人のお陰で、カフェにしたら貴方たち目当てのお客が増えて助かってますけど。
殆ど毎日しかも昼間も来られるのはどうかと思いますよ?」
「私たちはやるべき事はやって来てますよ。
ライカは美味しい食事とお茶、夜はお酒を提供してくれてるじゃないですか
これは毎日、味わって当たり前なのですよ」
一緒に住むってのを諦めてくれたから、ここに来ることで今の所納得してくれているのを、態々藪を突く必要もないかと放っておいたんだが、それが仇となった。
騎士隊長と、救世主様、それに数人の騎士が店の方に現れて、例のごとくいきなり拘束された。
「貴様!
ジョージとクインを手玉に取って、貴族の仲間入りでもしようと企んでいるのか!!?」
クラン隊長はいきなり決めつけて来た。
この人脳筋なんだろうか?
「えっと、どういう事でしょうか?」
「サノヤマさんは酷いです!
ボクが救世主として頑張るためには、ジョージ様とクイン様の支えが必要なのに、貴方がお二人を良いように使っているから、その公務も出来ないと言われました。」
高校生の男が、ぐすぐす泣きやがって、何じゃそりゃ?って怒鳴りたいのをぐっと我慢した。
良いように使うってなんだよ、大体来るなって言ってるのはこっちだわ。
「俺は、二人がここに来るので、お仕事は大丈夫なのかって毎回聞いてましたよ。
それでも大丈夫だと、やる事はやって来てるって言いましたよ!」
店にいた常連さん達が、二人の騎士がウザイだの、俺が諭してもいう事を聞かないだの、上司としてどうなんだとか、救世主なのに支えが無いと何もできないのか、など、かなり言いたい放題に突っ込まれて、救世主であるユアが最後に、お前らなんか救ってやらねーからな!という言葉を吐いて、本当に救世主か?って言われて泣いて帰って行った。
そもそも、二人がいる時に来いよ。
意味分かんねー、二人に支えられないとってどんな仕事だよ?
「ライちゃん、騎士団つっても庶民あっての騎士団だっつーの!」
常連さんに助けられたけど、何かお咎めが無いといいなぁって思いながらビクビクしていたんだけど、特に何も無く数日が過ぎた。
その間、やっぱり二人の騎士は来たし、二人について他の騎士も来て、殆どの騎士が来てるんだじゃないかって思える程だった。
「ライちゃん、あの救世主様ってクラン隊長とか、王太子とか、まぁ、城中のいい男を侍らせて救世主としてのお仕事は中々進んでないんだって。」
「そうですかぁ。
でも魔力量もいっぱいで、救世様なのは間違いないんですから、きっとその内、凄い事が出来るんですよ。」
この所は、若い騎士たちの愚痴の場にもなっていて、救世主って何すれば良いんだろ?と気になっていた。
その時、良い質問をした常連客がいた。
「救世主様ってそもそも、何をするんだ?」
常連客の若いのが、年配の常連客に聞いてきた。
「今のこの世界じゃ、精霊の力を借りるのも、魔力が少なくなってきて、厳しいんだよ。
だから救世主様が代わって、魔力を対価に妖精から力を借りていただくのさ。」
「それ、どうやってよ?」
「教会の中に魔力を供給する器具があるから、そこで魔石とかに溜めて頂いて流通させるんだよ。
一番は水路に流してもらって、水の精霊の力を借りるのさ。
作物の為にも、生活の為にも、一番必要な力だからな。」
俺も聞いて、そうなんだ~って納得した。
皆が皆、魔力を沢山持ってる訳じゃないんだ。
魔力を持っていても、妖精から嫌われたら、直接力を借りることが出来ないから、教会のシステムを利用するしかないのか。
救世主の仕事って大変だなぁ、って呑気に思ってた。
13
お気に入りに追加
322
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
見捨てられ勇者はオーガに溺愛されて新妻になりました
おく
BL
目を覚ましたアーネストがいたのは自分たちパーティを壊滅に追い込んだ恐ろしいオーガの家だった。アーネストはなぜか白いエプロンに身を包んだオーガに朝食をふるまわれる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【短編】売られていくウサギさんを横取りしたのは誰ですか?<オメガバース>
cyan
BL
ウサギの獣人でΩであることから閉じ込められて育ったラフィー。
隣国の豚殿下と呼ばれる男に売られることが決まったが、その移送中にヒートを起こしてしまう。
単騎で駆けてきた正体不明のαにすれ違い様に攫われ、訳が分からないまま首筋を噛まれ番になってしまった。
口数は少ないけど優しいαに過保護に愛でられるお話。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる