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企み
しおりを挟む早い馬に乗せられて、夜の間中走り通した。
優しい女将さんがいた隣町で馬を乗り換えると、また、走り続けた。
「ルイ、もう少し我慢してくれ!」
もう、限界とかお尻が痛いとか、言おうと思えばいくらでも言えるけど、それどころじゃない事は良くわかっていた。
「平気です」
そう告げるだけで精一杯だった。
団長とヌガー、それにかなりの団員が一斉に移動する様は、かなり異様だったと思う。
移動を始めた時に聞かされたのは、陛下の安否が分からないこと、そして、誰がモンブラン公爵家に入り込んでいるのか、公爵自身はどうなっているのか、実際は何も情報がなく僕を囮にするしか無いと言うことだった。
でも確実に王室が、いや、王弟と王妃が絡んでいるという事だった。
「危険な目に合わす、断ってくれても構わない」
「断ったら、どうするつもりなんですか?」
二人は押し黙り、多分、このままカヌレ団全員で王弟と王妃を討に行くつもりなんだ、と簡単に想像が出来た。
「決めた事なので、行きます。
その代わり、僕が誰の子なのか、ちゃんと分かる様にしてください」
二人を少しでも安心させる様に微笑んだ。
「っ! もちろんだ、ありがとう……!」
陛下とルドヴィカの友達だと言う二人はにとって、今起きている事は心配で堪らないのだろう。
震えている指先が、それを表していた。
「ローレンツォは無事なのか?
ギモーブが」
「しっ!!」
思わず声に力が入ってしまった。
「我らが保護しています。
こちらへ移動していますが、公爵には今まで通りの態度でお願いします。
王弟と王妃の企みを詳にするためにも」
やはり、そうだったのか。
「ギモーブは、王弟殿下から紹介されて来た者で、私の行動は全て筒抜けだと思う」
「存じております。
我々も、団長より動ける者全て、こちらの公爵家に潜入させていただいてますから」
頼もしい味方が出来たと安堵した。
コンコンコン
「なんだ?」
「入っても宜しいですか?」
「あ、ああ、構わない」
話していた恐らく、カヌレの団員は私の答えを促がし、また音もなく消えた。
一体どんな魔法なんだ!
「旦那様、ローレンツォ様の状態ですが、こちらに来るまでに事故に遭われた様で、半死半生との事でございます」
「何!! どう言う事だ!!」
「詳しくは着いてからになりましょうが、神殿の神官を待機させますか?」
信用できる神官とは限らない。
考えていると、先程の者の小さな声が聞こえた。
<神官長、パパリーヌを指名して下さい。
以前フロランタンから紹介された、と>
「うむ、それなら神官長のパパリーヌ様にお願いしてくれ。
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「ではパパリーヌ神官長のご予定が合うか確認してもらい、お願いしてみます」
「ああ、急いで頼む。
フロランタン殿の名前を出せば必ず来て下さるよ」
「、畏まりました」
やはり治療と偽って殺すくらいの計画だったのかも知れない。
ギモーブが部屋を出てしばらく様子を伺った。
扉の外にいるのではないだろうか、と。
「行った様です」
「うぁ、どこにいたんだ?」
彼は無言で指を上に突き出した。
「天井? 空?」
「上に張り付いていました」
もはや、どうやってとか聞く気力もなかった。
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