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その後1 我が子
しおりを挟む「シアン! 頑張って!!」
想像していたけど、こんな事をお母さんはやってのけたのかと思うと、尊敬しかなかった。
グランが手を握って励ましてくれるけど、励まされてもどうにもならんのよ。
「おぎゃー!!!」
元気な産声だった。
もう、クタクタだ。
ちょっと眠い。
もう無理。
「シアーン!! 見て見て、私と同じ金髪に碧の瞳で、顔はシアンにそっくりだよー!!」
「グランと同じなんだ、良かった」
神様は僕の不安を知ってくれてか、金髪碧眼の子だった。
「ありがとう、シアン……、こんなに可愛い子を産んでくれて」
僕こそ生まれてくれてありがとうって気持ちで胸に抱いた。
「ふふ、可愛い。
グランと同じだね」
ずっとグランが自分の子だと言ってくれたから、僕もこの子をグランの子だと胸を張って言えた。
「シアン、愛してる」
「僕も、グランを愛してるよ」
汗と涙でぐちゃぐちゃなのに、キスをしてくれる。
病室の外ではお母さんが結構大きな声で、早く教えてー!!って叫んでた。
「みんなに報告して来るね。
うちの子の可愛さを自慢してくるから、シアンはこの子とゆっくり休んでて」
そう言ってグランは軽くキスをして扉を開けた。
「ちょっと! どうだったの!?」
「お義母さん、落ち着いて」
シアンにそっくりな顔で詰め寄られると、フフッて笑ってしまう。
「笑ってないで、教えてちょうだい!」
「私と同じ金髪碧眼でシアンによく似た可愛い子です」
そう告げると、義母は号泣した。
「ありが、とう、ほんとうに、ありがとうございます。
あの子が今笑っていられるのは、殿下のお陰です」
「お義父さん、私はもう殿下ではなく、同じラキューなんですよ。
それに私はシアンの夫ですから、妻を守るのは当たり前です。
私も息子になったんですから、ね」
シアンがあんなに優しくて強くて可愛いのは、このご両親のお陰なんだって実感した。
父上と母上にお願いをして、急いで書類上の婚姻だけはすませてあるし、生まれて来る子は私の実子なのだから、誰にも何も言わせる気は無かった。
だからこそ、シアンの両親にとっても私は正真正銘の息子だった。
「殿、あ、ラグランジュ様、子供は」
「ラグランジュでお願いします。
グランはシアンだけが呼べる名ですし、息子に様はおかしいでしょ」
義父は呼びにくそうにしながらも、私をラグランジュと呼んでくれた。
「ラグランジュ、子供は、シアンの様な魔力があるのだろうか?」
そこは私も思っていた所だった。
シアンの魔力が遺伝と言うわけでは無いのも分かっていたけど、本来は遺伝する。
「私の方の魔力が遺伝するかもしれないですねぇ」
例えどんな魔力だろうと、子供もシアンも守ってみせる。
そして皇族という独特な世界で育った私は、本心を隠して良い人を演じ続けて見せるさ。
決してシアンにはこんな私を見せる事は無いけどね。
汚いものを排除したように、私たちの前に汚物があってはならないのだ。
「シアンと子供が帰ってきたら、みんなを呼んでお祝いしましょう!
お祝い事は沢山あった方が良いですからね」
これからは三人で幸せな家庭を築き、この先生まれて来る子供達の事も想像すると至福という快感だった。
ごめんね、シアン。
私は皇族の中で一番腹黒いから、綺麗なシアンを手放せないんだ。
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話の構成はとても面白かったです!!
でも、主語が行方不明な文章や、言い回しが??な文章が多く、少し読み難かったです。しかし、こういった点が改善されていけば、もっともっと良い作品になると思いますので、頑張ってください!!😊
花緑青の灯様
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