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クズはクズでもド屑
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親父がロンダン家で取り決めた話しは、ソリチュアが産んだヤーノの子を俺の子として認知する事、その代わり金色の魔法使い様に治癒を施してもらう為の費用や協力は惜しまない、と言うものだった。
腰から下が動かないだけで、それ以外の部分は完治していた事で車椅子が用意され、俺もシアンの代筆屋へと向かった。
こんな事ならシアンを捨てなきゃ良かったと、後悔している自分が情けないがあの気弱なシアンならきっとまだ俺の事が好きなはずだ。
あれだけ抱いてやったんだ、俺を想って体を持て余してるだろう。
最悪、治癒が中途半端になったとしても、ソリチュアは不貞の子を産んだとする訳にはいかないから、シアンを第二夫人として受け入れるしか無い。
俺の面倒はシアンが甲斐甲斐しくみてくれるし、そんなに悪く無いと思い始めた。
車椅子をうちの従者が押し、代筆屋の狭い玄関を通った所で、シアンの親父が怒鳴る声が聞こえた。
「シアンを危険に晒すはずないだろう!!
私たちは親だ!
子供の成長と幸せ、そして彼が間違った方向へ行かないように導く役目がある!
あなた方は、それでも人の親か!!」
代筆屋のクセに、御託だけは立派だな。
「ご無沙汰しています、おじさん達。
シアンにお願いした後は、俺が第二夫人として貰いますから、安心できるでしょう?」
「ベオク!
シアンなんぞこれが片付けば無用だ!
第二夫人などと馬鹿な事を言うな!」
「親父、ソリチュアは不貞をしたと明らかなんだ、そんな女でも子供は作るさ。
でもな、シアンは俺を一途に思う奴なんだから、側に置いてもし治癒が不完全でも面倒をみさせたら良いと思わないか?
保険だよ」
「ふざけるな!!
お前らは地獄を見るんだ!」
「その前におじさん達が痛い目にあうねー」
既に肩は外されてだらんと下がっていた。
「ベオクは変わってしまったんだね。
シアンとあんなに仲良かったのに」
「おばさん、今でもシアンを愛してるよ?
だけど女とは全然違う抱き心地だから、選べないだけだよ。
この体が治ったらシアンもちゃんと便器がわりにしてやるから、安心して~。
まあ、治ったら上官だった奴らを闇討ちが先か。
うまく嵌めて、危機を救った部下を演じ続けてたのに、バレちゃうし。
まあ、今回の負傷で名誉も守られたから、後は治癒をしてもらうだけだ」
シアンだって早く俺に会いたいだろうし、具合の良い穴を貪りたかった。
「クズに成り下がった奴が、うちの子の名前を気安く呼ぶんじゃねーよ!!
ド糞は親からその遺伝子を受け継ぐんだなぁ、あ? バカには何を言っても変わらねー」
綺麗な顔して、ロンダン家の護衛よりタチが悪そうだった。
「その辺でやめないと、一生息子には会えない所に行ってもら」
領主がその言葉を言い切らないうちに、奥の扉が跳ね飛んで、その風圧で俺らは目を塞ぐしかなかった。
------------------------------------------------------------
こちらにいるのが人形で、向こうにいるのが両親だと分かった時、車椅子を押されてベオクが入って来た。
今すぐにでも両親を助けに行きたいのに、ギルバルディが止めた。
「すまんが、もう少し奴らの言質が欲しい。
ベオクに関しては、軍法会議で処罰出来るだけの証拠を固めたいんだ。
堪えてくれ」
「室長、酷やで。
あれだけでも軍部とは関係無しに持ってけるで」
「いや、弱い。
親が子の為に暴走したとされれば、軍法会議では裁けない。
あくまで、親だけが処罰の対象になるだけだ」
我慢してアイツらの会話や、痛む肩に顔を歪める父親をみながら、血が出るほど唇を噛んだ。
「おばさん、今でもシアンを愛してるよ?
だけど女とは全然違う抱き心地だから、選べないだけだよ。
この体が治ったらシアンもちゃんと便器がわりにしてやるから、安心して~。
まあ、治ったら上官だった奴らを闇討ちが先か。
うまく嵌めて、危機を救った部下を演じ続けてたのに、バレちゃうし。
まあ、今回の負傷で名誉も守られたから、後は治癒をしてもらうだけだ」
お母さんが言うように、ド糞だ。
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