【本編完結】金色の魔法使い→続編あります

ビーバー父さん

文字の大きさ
上 下
1 / 19

転生ってこんなん?

しおりを挟む
 男が子供を産める世界になんて、漫画だけの世界だと思ってた。
 
 前の世界では男女の間に生まれる事が普通で、同性では生まれない世界だった。
 特殊な動物たちを除いて、性別が変わるなんてあり得なかった。

 




 ここは男女がちゃんと存在して、世界は少し特殊な力で回っている、そんなファンタジーな世界だった。
 生まれた瞬間の記憶も、その前の生きていた記憶そして死んだときの記憶がちゃんと残って僕は生まれて来た。
 なんでそんな事になってるのかさっぱり分からなかったけど、僕は前の人生で死んでしまった事は理解できた。
 乳飲み子の中身が三十を超えたおっさんって言うのもどうかと思うけど、魔法使いになったまま死んだ。
 そう、日本で噂されている『三十過ぎて童貞なら、魔法使いになる』ってあれだ。
 しかも前世は隠れ腐男子で、BL漫画や小説に結構のめり込んでいた。
 だから、所謂異世界転生って流行りの状況にちょっと心が躍ったのも確かだ。
 
「あうぁー、あーうぅ」(ここどこだよ)

 小説とか漫画で読んだアレコレが色々と思い出された。
 これは誰よりも先に動いて、アレだ、魔力を極限まで鍛えるとか、前世の知識を生かしてアレとか、ソレをやっちゃうやつだ。

 まずは天井を見ると、豪華とは言えない装飾に、まぁ、貧乏とは言えない作りの部屋の柵がある小さめなベッドに寝かされていた。

「あ、ううー、ぶー」(結構庶民な家に生まれたのか?)

 せめてチート的な何かを期待してみたけど、特に何か力があるとか何かが守ってくれてるとか、そんな事は全く無かった。

「うえぇ、ん」(なんてこった)

 これじゃ、幽霊見えますっていう中二病な奴になっちゃうじゃん。
 ただの前世持ち。
 じゃぁ、前世の知識でって思っても、この世界がどんな状況か分からないままでは、知識がどうのって言ってられない。
 大体、異世界イコール文明が遅れてるって感じの中世的な世界とは限らないだろ。

「ふにゃぁぁん、うえっぇぇん」(ひどいよー)

 乳飲み子は泣くのが仕事だ。
 この体はほんの一時間くらいでもう燃料切れを起こして、空腹とお尻の違和感で泣いていると、カチャッと言う音と共に誰かが入って来た気配がした。

「おっと、もうお腹がすいたのかい?
 そうそう、ちゃんとおっきな声で泣けて偉いねぇ」

 覗き込みながら僕を抱き上げてよしよしとあやしてくれた、人形のように綺麗な金髪碧眼の男性が、ベビーベッドではない広くてふかふかした所へ僕を下ろすと、屈辱としか言えないおむつ替えをされてしまった。
 赤ちゃんで大人の意識ってどんなプレイよ? 風俗でこういうプレイがあるって聞いて知ってはいたけど、それとは違うんだと言い聞かせて三十歳過ぎの赤ん坊と言う状況を忘れようと必死だった。

「こんなに小っちゃくても、子供ってすぐ大きくなってママより彼女がいいってなるんだよなぁ」

 ん? ん? ママ、ってどこ?


「ん、あっあー、うう」(言うならパパだろ)

「早くママって呼んでおくれ」

 え? えぇ? はぁ?

「おおあぁー、うぇ、うぇ、う、あぅぅっ、うわぁああん」(大分綺麗な人だけど、どう見たって男で、ママじゃないじゃん!!)



 あの時盛大に泣き喚いた赤ん坊も十五歳の今現在、僕はママって呼んでって言ってた男性が正真正銘のママだって分かってるし、大事にされて大好きな両親だけど、少し複雑な気持ちが残っていた。
 

 成長して後に知った事だけど、この世界は男女の性別に加えて妊娠因子を持った男性が子供を産めた。
 男女比率で言えば男:女:その他、みたいな感じで6:3:1って感じだった。
 男性が多すぎて存続の危機くらいだけど、神様の配慮なのか悪戯なのか男性の体にして、子供が産めると言う前世で読んだBLの設定の様な事が起こる世界だった。
 第三の性とか運命の番とかそう言うんじゃなくて、単純に男性ばっかりの群れの突然変異みたいに、そう言う因子を持って生まれるけど、遺伝ではなかったし、男女比がアレ過ぎて男同士のカップルなんかは当たり前だった。
 
 
 ここまで説明したらわかってもらえるとは思うけど、前世腐男子の僕としては、実践になるのか? とか考えなくもなかった。
 これがチートだと言えばそうなのかもしれないが、赤光色の髪に碧の瞳が僕的には有難い容姿で、それだけが救いだった。
 親のどちらに似ても、綺麗とかカッコいいとかになるはずなのに、微妙に二人のハズレを引いたような感じだった。
 母の方なら、人形の様な綺麗な容姿に金髪碧眼、父の方なら赤光色の髪に高い身長と精悍な体躯だったのに。
 
 割ともっさりした感の僕が、ボトムはさすがに頂けない。
 それに子供を産める因子も無かった。
 そういう意味では、少しだけ自然界は僕に厳しかった。
 



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです

チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》 歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。   ほのぼのです。よろしくお願いします。 ※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

かくして王子様は彼の手を取った

亜桜黄身
BL
麗しい顔が近づく。それが挨拶の距離感ではないと気づいたのは唇同士が触れたあとだった。 「男を簡単に捨ててしまえるだなどと、ゆめゆめ思わないように」 ── 目が覚めたら異世界転生してた外見美少女中身男前の受けが、計算高い腹黒婚約者の攻めに婚約破棄を申し出てすったもんだする話。 腹黒で策士で計算高い攻めなのに受けが鈍感越えて予想外の方面に突っ走るから受けの行動だけが読み切れず頭掻きむしるやつです。 受けが同性に性的な意味で襲われる描写があります。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

処理中です...