【本編完結】金色の魔法使い→続編あります

ビーバー父さん

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転生ってこんなん?

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 男が子供を産める世界になんて、漫画だけの世界だと思ってた。
 
 前の世界では男女の間に生まれる事が普通で、同性では生まれない世界だった。
 特殊な動物たちを除いて、性別が変わるなんてあり得なかった。

 




 ここは男女がちゃんと存在して、世界は少し特殊な力で回っている、そんなファンタジーな世界だった。
 生まれた瞬間の記憶も、その前の生きていた記憶そして死んだときの記憶がちゃんと残って僕は生まれて来た。
 なんでそんな事になってるのかさっぱり分からなかったけど、僕は前の人生で死んでしまった事は理解できた。
 乳飲み子の中身が三十を超えたおっさんって言うのもどうかと思うけど、魔法使いになったまま死んだ。
 そう、日本で噂されている『三十過ぎて童貞なら、魔法使いになる』ってあれだ。
 しかも前世は隠れ腐男子で、BL漫画や小説に結構のめり込んでいた。
 だから、所謂異世界転生って流行りの状況にちょっと心が躍ったのも確かだ。
 
「あうぁー、あーうぅ」(ここどこだよ)

 小説とか漫画で読んだアレコレが色々と思い出された。
 これは誰よりも先に動いて、アレだ、魔力を極限まで鍛えるとか、前世の知識を生かしてアレとか、ソレをやっちゃうやつだ。

 まずは天井を見ると、豪華とは言えない装飾に、まぁ、貧乏とは言えない作りの部屋の柵がある小さめなベッドに寝かされていた。

「あ、ううー、ぶー」(結構庶民な家に生まれたのか?)

 せめてチート的な何かを期待してみたけど、特に何か力があるとか何かが守ってくれてるとか、そんな事は全く無かった。

「うえぇ、ん」(なんてこった)

 これじゃ、幽霊見えますっていう中二病な奴になっちゃうじゃん。
 ただの前世持ち。
 じゃぁ、前世の知識でって思っても、この世界がどんな状況か分からないままでは、知識がどうのって言ってられない。
 大体、異世界イコール文明が遅れてるって感じの中世的な世界とは限らないだろ。

「ふにゃぁぁん、うえっぇぇん」(ひどいよー)

 乳飲み子は泣くのが仕事だ。
 この体はほんの一時間くらいでもう燃料切れを起こして、空腹とお尻の違和感で泣いていると、カチャッと言う音と共に誰かが入って来た気配がした。

「おっと、もうお腹がすいたのかい?
 そうそう、ちゃんとおっきな声で泣けて偉いねぇ」

 覗き込みながら僕を抱き上げてよしよしとあやしてくれた、人形のように綺麗な金髪碧眼の男性が、ベビーベッドではない広くてふかふかした所へ僕を下ろすと、屈辱としか言えないおむつ替えをされてしまった。
 赤ちゃんで大人の意識ってどんなプレイよ? 風俗でこういうプレイがあるって聞いて知ってはいたけど、それとは違うんだと言い聞かせて三十歳過ぎの赤ん坊と言う状況を忘れようと必死だった。

「こんなに小っちゃくても、子供ってすぐ大きくなってママより彼女がいいってなるんだよなぁ」

 ん? ん? ママ、ってどこ?


「ん、あっあー、うう」(言うならパパだろ)

「早くママって呼んでおくれ」

 え? えぇ? はぁ?

「おおあぁー、うぇ、うぇ、う、あぅぅっ、うわぁああん」(大分綺麗な人だけど、どう見たって男で、ママじゃないじゃん!!)



 あの時盛大に泣き喚いた赤ん坊も十五歳の今現在、僕はママって呼んでって言ってた男性が正真正銘のママだって分かってるし、大事にされて大好きな両親だけど、少し複雑な気持ちが残っていた。
 

 成長して後に知った事だけど、この世界は男女の性別に加えて妊娠因子を持った男性が子供を産めた。
 男女比率で言えば男:女:その他、みたいな感じで6:3:1って感じだった。
 男性が多すぎて存続の危機くらいだけど、神様の配慮なのか悪戯なのか男性の体にして、子供が産めると言う前世で読んだBLの設定の様な事が起こる世界だった。
 第三の性とか運命の番とかそう言うんじゃなくて、単純に男性ばっかりの群れの突然変異みたいに、そう言う因子を持って生まれるけど、遺伝ではなかったし、男女比がアレ過ぎて男同士のカップルなんかは当たり前だった。
 
 
 ここまで説明したらわかってもらえるとは思うけど、前世腐男子の僕としては、実践になるのか? とか考えなくもなかった。
 これがチートだと言えばそうなのかもしれないが、赤光色の髪に碧の瞳が僕的には有難い容姿で、それだけが救いだった。
 親のどちらに似ても、綺麗とかカッコいいとかになるはずなのに、微妙に二人のハズレを引いたような感じだった。
 母の方なら、人形の様な綺麗な容姿に金髪碧眼、父の方なら赤光色の髪に高い身長と精悍な体躯だったのに。
 
 割ともっさりした感の僕が、ボトムはさすがに頂けない。
 それに子供を産める因子も無かった。
 そういう意味では、少しだけ自然界は僕に厳しかった。
 



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