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しおりを挟む三日後の満月に式をすることが決まった。
それからは、本当に忙しかった。
お母様は礼服って言ったけど、どう聞いても、どう見ても、これ、ドレスだよね?っていうデザイン画だった。
「ロシュ、俺、ドレス着るの?」
「きっと似合うし、綺麗だぞ」
そう言う問題じゃなくて、俺、男だよ!
「キモチワルイ女装した人じゃんか」
「まぁ、レオ!
こんなに可愛い子が気持ち悪いわけないでしょ!」
お母様…。
採寸されて、なんかメイドさんたちは凄い張り切ってるし、フラウは招待客の確認だとか会場の準備だとか言って走り回ってるし。
ロシュは結局、筆頭執事みたいな状態で、執務に走り回っていた。
結局、ぐったりした中で軽食をもらいながら、次から次へと着せ替え状態だった。
その後は、動線やら配置やら色々確認したり、怒涛の二日間だった。
その間日中はロシュと全然会えなくて、廊下ですれ違う事すらなかった。
その代わり、フラウが絶対一緒に行動してくれてて、きっとジル一派からの攻撃を懸念しての事だった。
一番の安心はロシュがいてくれることなんだけど、それは叶わなくてこの二日は一人寝だった。
ロシュは、聖獣だから眷属としてお仕えする神様の所へ、ご挨拶と言うか番を持ったことの報告に行ってるから、夜はいなかった。
昼間は筆頭執事になってるし!
ワガママだけど、ロシュにいてほしかった。
ロシュといる温かさを知ってしまったら、一人でいる寂しさは耐え難いものだった。
何で神様の所に二日続けて行くんだろうとか、聞きたいことがいっぱいあったのに。
式当日は、朝からメイドさん達に磨き上げられて、やっぱり、白いレースのドレスだろ!ってデザインのスーツを着せられた。
裾が長くて、マーメイドラインの燕尾の様な上着がふんわりしたシフォンで作られていて、形はチューリップの花を逆さにしたような感じだった。
「レオ様!!
素敵です!!
可愛さと綺麗さを兼ね備えてますよ!!
自信をもって!!」
「レオ様、お綺麗です。
ロイスさんが待ってますよ。
祭壇の前へお越しください」
フラウが俺を迎えに来てくれた。
でも、なんだか足が動かなかった。
何かに操られてるとかじゃなくて、単にフラッシュバックしてしまっただけなんだけど。
あの時、フラウが部屋に入って来てジルとの誓いの儀式を窓から見せられた。
トラウマになっていたんだ。
笑ってみんなが祝福してくれているのに、もしかして、また、違う誰かがロシュの横に立っていたら?
既に伴侶の誓いを済ませていても、断ち切れない誓いじゃない。
「レオ様?」
「ごめん、フラウ、動けない
怖くて、動けない」
俺の言葉を聞いたフラウは、はっと気づいた顔をした。
「こんなに、貴方を傷つけていたんですね。
いつも、誰かの為に動く貴方が、みんな当たり前のように思っていた。
私は、今ここであなたに忠誠を誓います。
少しだけ、我慢してくださいね。
あとで如何様にも処罰してくださって構いませんから」
そう言うと俺を抱き上げて、外を見ないように自分の胸に顔を埋めるようにした。
「フラウ!
何するの?」
「私がロイスさんの所へ連れて行くだけです。
安心してください。
貴方に忠誠を誓い、貴方を護ると誓った。」
まるで騎士のように俺を大事に揺れることなく運んだ。
「ありがとう
ごめんね、ヘタレで」
「いえ、私たちはそれだけのことをしました。
あの体を貫かれた貴方を忘れていいはずがないのです。
無理やり取り替えられたり、誰かの犠牲になったり、貴方の運命をめちゃくちゃにした責任を、私が言うのもなんですが
必ず取らせます。」
会場の入り口で、フラウに抱かれてる俺を見て、どよめきが上がった。
「ロイシェード様
レイオニード様をお連れしました。」
「フラウロイド、ご苦労だった
嶺緒を私に」
俺はフラウから、ロシュに抱いたまま渡された。
「ごめん、ロシュ
俺怖くて歩けなくなって」
「そうか、私も配慮が足りなかった」
そう言うと祭壇までの花道を抱いたまま歩いて、周りからは歓声やら嬌声やらが上がった。
「むしろ、この方が良かったと思うぞ」
「ロシュ、あのね、フラウが忠誠を誓ってくれたんだ」
「そうか」
祭壇までくると、そうっと降ろされた。
「ロイシェード、そのままでも良かったと思うがな」
そう言った人は少し年配の穏やかなオジサンだった。
よく漫画や絵本に出てくる天使の様な服装で、ギリシャ神話の様な飾りのサークレットをしていた。
「神よ、私もそれでいいと思いますが、せっかくこんなに綺麗なんですから見せびらかしたいじゃないですか」
「まさか、お前の様な堅物がそのような言葉を吐くとはな」
「いいから先に進めてください」
祭壇にいたのはロシュが仕える神様だった!!!
「神様って、神様なんですか?」
盛大に驚いた。
「後で紹介する」
「あ、はい」
「では、改めて。」
皆が注目する俺たちの前に、神様がいると、何人が知っているんだろう。
「ロイシェード・アス・バロン並びにその伴侶レイオニード・アス・バロン
汝らを神スーリャの名において、番いと認め、その子を次代の聖獣として、我に仕える者とする
太陽神の加護と永遠の祝福を与えるものなり」
ワッと歓声が上がった。
「これでお前達は、神の眷属だ。
その子は聖獣として、私に仕える者だ。
また、随分綺麗な子が生まれるようだな。
楽しみにしているぞ
ロイシェード、レオ」
そう言うと神様は光と共に消えてしまった。
祭壇を背に、みんなに向き直るとロシュが良く通る声で、神の加護と祝福、そして俺が神の眷属になった事を告げた。
「ロシュ、神様が来るなんて聞いてないよ」
「この二日、神にお伺いを立てに行ってたから、話す暇が無くて悪かった。」
「そっか」
仕える神様に加護の根回しをしてたんだな、きっと。
壇上での挨拶が済むと、そこ彼処の国?とか種族とかの誰某さんたちが取り巻き、ロシュと離れてしまった。
俺は俺で、精霊たちが優雅に挨拶やら祝辞を述べてくれるのを、一つ一つにお礼をしていた。
中にはお腹にいる子がわかる人もいて、こっそり、真っ白な可愛い子だと告げていった。
性別は言わないところが、いいな、とも思いながら。
「レオ様、お体は大丈夫ですか?」
「フラウ、心細かったから嬉しい」
「ほんと、貴方の旦那はここ一番てときに側にいないんですから、困ったもんです。」
「仕方ないよ
この世界でヴラドより、力がある一人だもの。
皆、此処ぞとばかりに知り合いになりたいのさ。」
「それだけでは無いようですよ。
まあ、雌犬から雌猫、あらら女狐まで
笑っちゃいますねー
あの方々、みんな一度食べたことありますよ
バカボンジル派は、やっぱりバカですねー」
「そうなんだ、やたらボディタッチが激しいねー
ロシュも避ければいいのに」
「外交として、お付き合いしてるのですから、仕方ないでしょうが、バカボンジル派を相手にする必要はないですよね。」
フラウも同じ様に、冷たい視線を送っていた
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