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しおりを挟む往きと同じく、ヴラドの空間移動で屋敷へと戻った。
既に屋敷中で婚儀の準備が進められていて、屋敷の周りがお母様とドライアド、そしてその眷属たちで形を変えていた。
最初から綺麗に刈り込まれていた灌木や常緑樹が、大きく腕を広げるようにそれぞれの木が絡み合い、緑のドームを形成していた。
木漏れ日が丁度よく差し込み、神秘的な空間に祭壇が設けられて人間界で見る結婚式の様だった。
「旦那様!!!
どうでし、たか…
…えっ??!
まさか、嶺緒、様ですか?」
ロイスが俺の姿を見て、信じられないと呟いたのが聞こえた。
「ロイスさん、へへ、
お母様に祝福をもらったら、こうなっちゃいました。」
「なん、と、なんと素晴らしい!!
お美しゅう御座います、嶺緒様!
そして、この度の婚儀、誠におめでとうございます。
やはり、精霊王ティターニア様の御子様だったのですね
こちらの木々や花々がこのようになった時に、そうであろうとは思いましたが。
このお姿を拝見して、感無量でございます。」
白い手袋をした手を胸に当て、腰を折るロイスが続けざまにルアンの事を聞いた。
「あ…
あの、」
「執事殿、もう一人の子、ルアンはジルのせいで身も心も傷つき
その魂を眠らせる事しか出来なかったのだ。
いつか、その魂を持って生まれ直す日が来るだろう。
我々にとってはそう遠くない日であろう?
その時は、私も抱きしめて迎えるとしよう」
若々しい姿のドライアドが、お母様の手を取るようにエスコートをしながら、俺たちの横に立ち並び、そして、答えに詰まる俺の代わりにお母様から、ルアンがアルプに食われて一部だけだったこととかを伏せて、息子としてその死をロイスに伝えてくれた。
「精霊王ティターニア様、
大変、失礼いたしました。
兄上様は身罷られたのでございますね。
この婚儀が今である事が全てであると、理解いたしました。」
繋がるキーワードはジル、それだけでロイスは理解してくれた。
「では、旦那様もご準備がございますが、
嶺緒様はもっと綺麗にしてもらいましょう」
ロイスが手を叩くと、3人のメイドがいきなり現れた。
ここにいる使用人の人たちは皆、身体能力が高いのは知ってたけど、まるで戦闘員の様な動きだった。
「さぁ、嶺緒様!
もぉっと、美しくなりましょうね!
旦那様、ティターニア様、私たちで腕によりをかけて
嶺緒様を磨き上げますからね!」
そう言うと、メイドさん達の一人にお姫様抱っこで連れて行かれた。
「え、あ、ちょっと!!」
「口を閉じてないと舌を噛みますわよ」
いやいや、それなんか違う!
女性にお姫様抱っこなんて!!
もう、恥ずかしくて恥ずかしくて!
物凄いスピードで浴室についたと思ったら、今度は男性に寄ってたかって服を剥かれて、体中を洗われた。
そりゃ、女性よりはマシだけど、みんな凄いマッチョで簡易な貫頭衣みたいな布の上からでも筋肉の盛り上がりが分かって、自分のひょろい体が恥ずかしかった。
どこもかしこも、ふにゃって感じで筋肉が無い。
何回もオイルとか塗り込まれて、なんだっけ?料理店の話みたいに、食べられるために自分で自分に調味料やらを塗ってく話、あれみたいな気分になった。
エステなのか下ごしらえ分からない状態で浴室を出ると、さっきのメイドさんたちがふわふわのタオルを構えて、四方から体を拭かれてあれよあれよと言う間に、華やかな薄い緑のスワローテールを着せられた。
大分、かなり、テールが長いけど。
着付けが済んで、控室の様な部屋で座っていると、さっきの3人とは違うメイドがノックをして入って来た。
「レオ様、ティターニア様とドライアド様が祝福をと申されております。
来ていただけますか?」
見たことのないメイドさんで、新しく来た人なのかと思ったけど、祝福なら既にもらっている。
「俺が嶺緒だってよく分かったね?
この姿では初めてだと思うんだけど」
「旦那様の伴侶となられるのは、レオ様と伺っております。」
「で、君はジルの眷属?」
「何をおっしゃっているのか分かりませんが
お式の前に祝福をと、」
笑顔を絶やさないまま、俺を連れ出そうとしているのが分かる。
だって、お母様はもう、俺に祝福をくれたから。
「ね、君は、だぁれ?」
もう一度問い掛けると、メイドの姿から背の高いシルクハットを被った、狐のような男へと変貌した。
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