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「さて、ヴラド
 ジルとはどんな話をつけたのか教えてもらえるよね?」

腹が立つと笑えるもんなんだな。

「勝手に伴侶になったと言い始めたので、嶺緒が私の運命の片割れだと告げた。
 運命の片割れは、全ての種族が認めるところだからな。
 ジルがどんなに、伴侶だと虚言を広めようと意味がない。
 そして、嶺緒を取り替えた精霊がドライアドで、精霊女王のティターニアの子が嶺緒だ。
 残念ながら、取り替えられた人間の子は分からずじまいなんだ。
 どの精霊に落とされたのか、それすら分からない。」

「ルアンが、人間の子で俺の兄貴だよ」

「いや、違うだろ、こいつはシーオークだろ?」

「ね、ルアン?
 シーオークが養い親だってあれ、実は本当でしょう?」

ルアンが心臓を戻されて、胸をさすさすしているところに聞いた。

「え、あ、うん
 俺、いきなり現れたんだって。
 でも、人間か妖精か分からないみたいだ。」

「ヴラド、多分だけど
 取り替え子はどこか繋がりみたいなのが感じられる気がするんだ。
 さっき、ルアンが抱きしめてくれた時の感情が、嘘には思えないんだ。
 ドライアドなら、分かるんじゃないの?」

俺を、俺たちを取り替えた張本人なら、分かるはずだ。

「それに、取り替え子の話は誰から聞いたの?」

「ジル様から、聞いた。
 だから、嶺緒の真名を手に入れて、精霊王の力を欲しいって。
 嶺緒がティターニア様の子だって、ジル様は知っていたよ」

んん?

「ジルが知っていただと?
 私の国で取り替え子の話が出たのは嶺緒を連れて来てからだ。
 ジルは何と言っていた?」

ヴラドはルアンの方を睨みあげながら、厳しく追及した。

「嶺緒は来る予定じゃなかったけど、来たのなら利用するって
 だから、シーオークで養い子の俺が立候補したんだ。
 だって、じっちゃんや皆を苦しめたくないから、
 俺なら、どこの誰かもわからないし、失敗しても誰も悲しまないから!
 恩を返したかったんだ!」

「バカ!!
 ルアン!
 みんな悲しむよ!
 そこまで育てたってことは、みんなも大事にしてたんだよ!
 おじいさんだって、きっとルアンにそんな事させたくなかったよ!
 それに、俺が嫌だ!
 だって、俺の兄ちゃんだろ!」

ルアンをぎゅって抱きしめた。
やっぱり、ルアンは俺の何かが繋がってる。
それが分かる。

「まあ、ルアンの事も考えるが、嶺緒、先ずは服を着なさい。
 ルアンはどうやってここに来たんだ?
 世界を渡るのは無理だろ?」

言われて、自分がマッパだった事に気づいた。

「バスローブをちょうだい。」

ヴラドが、俺に掛けてくれて、そのまま浴槽から抱え上げた。

「ちょ!
 歩けるよ」

「ダメだ、嶺緒。
 ルアン、そうじしとけよ、血の一滴すらジルには強い力となるからな。
 こちらに、ジルと来たのであろう?
 ならば、この血を欲しがるやもしれん
 ただ、混ざり物故、意味はないと思うがな。」

俺の血が、力を与えるのなら、ヴラドに好きなだけ与えたい。

ルアンは真剣な表情で、もう、ジル様に支配されたくないと呟いた。

「ヴラディスラウス様、分かりました。
 しっかり流して、絶対に嶺緒の血を渡したりしない。
 嶺緒、本当にごめんな」

「ルアン、兄ちゃんって呼んでもいい?」

ヴラドに抱えられながら、どうしても呼んでみたかったんだ。

「いいのか?こんな俺で」

「うん、やっぱり、ルアンは俺の兄ちゃんだよ。
 だって、心が繋がってるの分かるもん」

認め合ったら、繋がりがはっきりした気がする。

「ヴラド、ルアンは俺の兄ちゃんだよ、
 はっきり分かる。
 取り替えられる時に繋がったんだよ」

だから、自分を信じて欲しかった

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