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小さな傷が出来ては治る舌で、俺はこの体に思っていた疑問を聞いてみた。

「ヴラド、俺の体おかしいんだ。
 多分、こっちに記憶を抜いて帰ってきてから、成長って言うか、歳を取らないみたいなんだ。」

「私が与えた加護、のせいか。
 怪我や病気を治し続ける、と言うか、元の状態より良い状態の時間帯へ戻してる。
 再生ではなく、巻き戻しをしてるんだ。」

「必要な部分だけが巻き戻ってる?」

「簡単に言うと巻き戻しだが、別に逆再生してるような状態ではないから厳密に言うと難しいな」

「えっと、それならさ、俺、ヴラドに体をちゃんと造り替えて貰えるのかな?」

だって、ずっと一緒に生きていきたいから。
今の人間のままだと、寿命とか色々考えると悲しくなる。

「嶺緒は私の花嫁にするんだから、私と同じヴァンパイアの力を得ることになるけど、それでもいい?
 もう、手放すなんて絶対できないよ?
 喧嘩したって、同じ時間を生きないといけないし」

「ねぇヴラド、俺ね、誰かと喧嘩したことってないんだ。
 いつも受け入れるだけで、由宇斗にあれだけ言い返せたのも初めてだったし。
 喧嘩するって多分それだけ相手に分かって欲しいからだと思うし、
 だったら、一杯、一杯、喧嘩しようよ!
 そして必ず仲直りしよ、ね?」

「では仲直りは、必ず、セックスをしよう」

口に出されると、恥ずかしいよ。

「このまま嶺緒を抱いてしまいたいが、けじめとしては式を挙げてからだ。
 初夜は、きっと私も緊張してしまうが、許してくれ。
 何しろ、初めての行為なのでな」

イケメンで年上なのに、俺と同じ童貞とか!!!
もう、魔法使いとか賢者を通り越して、神だよな。

それなりに俗世間の知識がある俺は、自分がけがれているような気さえした。
だって、けじめとかいいから抱いて欲しいって思ったから。

「愛してる、嶺緒」

「俺も、愛してるヴラド」








結局、あれからまた眠ってしまっていた。
ヴラドはどこかへ行ってるみたいで、広いベッドと部屋にポツンと一人だった。

目が覚めた時はもう夕日が緑の向こうに見えて、オレンジ色の世界が広がっていた。

吸血鬼って、俺たちの物語では太陽がダメだとか、ニンニクがダメだとか、十字架がとかって色々あるけど、ヴラドは平然と陽射しの中にいるし、人間と同じご飯食べるし、やっぱりお話はお話なんだな。
きっとどこかで世界が繋がってるから、おとぎ話って形で伝わってるんだろうな、なんて勝手に納得してた。

ルームランプの明るさだと心もとなくて、多分スウィートルームかなんかなのか、たくさんある部屋の電気を全部点けて回った。

全部の電気が点くと、なんとなく寂しい気持ちが少しだけ落ち着いた。
知らない場所で、一人で目が覚めるって結構キツイもんだなって。

こんな時は、お風呂タイムだ!
電気点けるのに見たけど、ジェットバスだった。
雑誌とかでしか見たことないし、一人なら堪能しておこうと思う。
アメニティはバブルバスとかなんとか書いてあるのは、自宅では絶対できない泡風呂では?!とちょっと、いや、かなり興奮してきた。

楽しいことを見つけた子供のように、ちょっとはしゃいでしまっている自分がいたけど、今は誰もいないし、迷惑かけるわけじゃないからお湯を入れながらバブルバスっていう小さい袋を切って中のトロっとした液体を入れた。
すると、お湯が勢いよく入って行くのに合わせて、泡がボコボコと立ち始めた。

これは入りながら実感しなくては!

いそいそと来ていた服を脱いで、そぉっと足を入れた。

むふふふ

このボタンはなんだろ?
押してみると、銀色の部分から物凄い空気がボボボボッと出て、みるみるうちに浴室が泡で埋もれた。

どうしよ、凄い楽しい!

そんなことをやっていて、誰かが入って来ていたことに気づかなかったんだ。




「へぇ、お前が俺の取り替え子かぁ」

「え?」

入口に立ってるのは、黒髪の少し年上に見える人が立っていた。

「お前が人間界で生きてたように、俺はドラクリヤの国で育てられて生きてきた、いわば双子の兄弟みたいなもんだ」

双子とは思えない。
全然似てないし、凄く嫌な感じしかしなかった。

「名前は?」

不躾に聞かれて、嫌な気持ちしかしなかったから、とっさに嘘を言ってしまった。

「カサイ、カサイ、嶺緒
 君は?」

「俺は、シーオークの養い子、ルアンだ。」

俺を上から下まで見下ろすようにされ、首の後ろがざわつくような嫌な感じしかしなかった。

「お前、ジル様のヴラディスラウス様を寝取ったんだって?
 そんなにいいような気はしねぇけどなぁ
 ジル様が、お前を殺せって言うし、シーオークはジル様の支配下だから逆らえんのよ。
 すまんね、死んでくれる?」

「い、嫌だ!
 ジルは、ヴラドの伴侶でもなんでもない!
 俺が殺される理由にはならないよ!」


う~ん、とルアンは首を傾けて、でもなぁと考えていた。







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