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しおりを挟む「えーっと、誰?」
何となく、花に向かって喋りかけた。
すると、お伽話に出て来るような小さなお姫様が花の上に立っていた。
「レオって可愛いわ
それにまだまだ、子供ね
もっと成長しないと」
「うーん、多分もうこれ以上は大きくなれないと思うよ。
俺は、成人してるし、成長期でもないしね。」
「バカね、レオはもっと綺麗な子になるのに、人間は知らないのね」
男に綺麗はないんじゃないかなあ。
「ふふふ、ありがとう」
「レオが我が主に嫁ぐときには、祝福を与えようぞ」
「ん?」
よくわかんないけど、いつか、ここでちゃんと暮らせるようになったら嬉しいねってそう言って別れた。
やっぱり不思議の国だ。
親指姫は、何だか分からないキーワードを置いて行ったけど、なんだかちょっぴり自信?になった。
俺を好んでくれる人もいるんだって。
ここに居るために、俺は何が出来るんだろう。
そう考えると不安しかなかったけど、今は、まだ、ここの人たちの優しさに甘えているしかなかった。
「嶺緒様、お手伝いをお願いできますか?」
ロイスが俺にできそうな仕事を見つけてきてくれた。
俺は人間だから、そこを気づかなくて皆んなの手伝いがしたいって言っても無理だったんだ。
視野が狭いのをどうにかしないと。
手伝うどころじゃないじゃないか。
「ロイスさん、俺が人間だから仕事を作らせてしまってすみませんでした。」
「ほほう、嶺緒様はやはりいい子ですね。
自分しか見えない者は、与えられた仕事をより良くこなす事で、評価を得ようとします。
それも間違いではありませんが、今、人間だから与えられる仕事が限られていて、その仕事を作らせた、と考えに至れるのはなかなか出来るものではありません。
種族の違いにもきちんと敬意を持ってくださっていると感じました。」
「俺は、今までの事を客観的に見ても、本当に酷かったから。
自分の世界だけの価値観で周りを見ていたし、そんな自分を甘やかしてたんです。
言葉使いも全然で、これからは少しでも皆んなの役に立ちたい。
だから、学ばせてください。」
粗暴とかは無いと思うけど、誰かに甘えたくて言葉使いも大人としてちゃんとしていなかったって思う。
今だって恥ずかしいくらい、変な敬語の織り混ぜ具合だし。
「嶺緒様、では厳しく参りましょうか」
ニッコリと笑うロイスに、力強く宜しくお願いします!と応えた。
屋敷内の細かいお手伝いをさせてもらった。
どちらかと言うと、全体の把握をしてみんなにお願い事の伝言をして回る、繋ぎの役目みたいな感じだった。
「嶺緒くん、ロイスさんに肉が足りなくなったって伝えて」
「はい、何肉を何時までにですか?
代替品ならどんな肉でも良いですか?」
厨房の在庫を確認した料理長が、足りないものや、旦那様の体調とかで使うものを細かく指示して取り纏めて、ロイスへと伝える。
「れーおー!
屋敷の蔦を取るから、梯子押さえてくれー」
「あ、はーい!
じゃあ、ロイスさんに伝えておきますね」
庭から手伝いで呼ばれたから、そっちへ急いで向かう。
向かう途中でも、メイドさんが声を掛けてくれたり、この仕事は屋敷中の皆んなを知ることが出来た。
毎日が楽しかった。
皆んなとずっといられると思ってた。
庭で花柄摘みをしながら、あれ以来見かけない親指姫に、聞こえるかな?と思いながら話しかけていた。
「旦那様がね、ヴラドって呼ばないと返事をしてくれなくなっちゃって、おかしいんだ。
でもさ、ヴラドって呼べるのが特別感があって、ホントは好き。
でも、ここで働かせて貰ってる以上は、ちゃんと区別しないとね」
独り言のように、いや、実際独り言なんだけど、ブツブツと言っていたら手元が急に暗くなって、俺を覆うように影を落とした。
ん?と後ろの方を見上げると、大きな日傘をさした、真っ直ぐな長い黒髪の綺麗な女の子?男の子?がゴスロリのドレスで立っていた。
「こんにちは。」
「…」
返事は無くて、無表情に近い不機嫌な表情を浮かべた。
「?
お客様ですよね?
ご案内しますね」
一応、笑顔を浮かべて先に行こうとしたら、後ろから突き飛ばされた。
「ヴラドが拾った死体はお前か。
疾く往ね、人間ごときがヴラドの側にいるでない!」
「え、あの、死体じゃないですよ、ちゃんと生きてます。」
更に怖い顔になって、胸ぐらを掴まれたところで、ロイスが間に割って入って来てくれた。
「何をなさいます、ジル様!
嶺緒様は貴方が触れて良い方ではありません!!」
俺を背後に隠すように立ちはだかって、ジルと呼ばれたこの人形の様な人に向かって言った。
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